AIと一緒に自分史を書く手順。過去を並べて傾向を見る

2026-09-11 | blog

目次

AIと書く自分史とは、自分の過去を物語としてまとめてもらうことではなく、自分が書き出した場面を並べ、繰り返し出てくる語をAIに指摘させる作業である。目的は読み物を作ることではなく、自分の中で何度も起きている状況の型を1つ見つけることにある。所要は90分、書くのは自分、AIの担当は1つだけである。

現在の状況を領域ごとに整理したい場合は人生の棚卸しのやり方のほうが近い。この記事は過去の並びから傾向を読む側を扱う。

年表を用意した時点で、手が止まる

自分史を書こうと思い、年を縦に並べた表を作る。小学校、中学校、高校、大学、就職。そこまでは埋まる。

次に「そのとき何があったか」の欄に移ると、書けない年が続く。2019年に何があったか思い出せない。2021年は在宅勤務だったことしか出てこない。埋まらない欄を見ているうちに、自分の人生には書くことがないような気がしてくる。

結局、卒業と転職と引っ越しだけが並んだ表ができあがる。それは経歴であって、自分史として見返したときに何も出てこない。

出てこないのは、年から入っているから

記憶は年の単位では格納されていない。思い出せるのは場面である。「上司にこう言われて、会議室を出たあとに階段で少し立ち止まった」のような、絵として残っている単位でなら出てくる。

年表は、その場面を後から置く器としては便利だが、空の器を先に作ると、埋めること自体が作業になって手が止まる。

手順としては、順序を入れ替えるだけでよい。

入り口 起きること
年から埋める 何もなかった年が並び、経歴の表になる
場面から書く 順不同で出てくる。年は後から付けられる

もう1つ、AIの使い方も先に決めておく。AIに自分史を書かせると、自然と物語の形に整えてくる。転機があり、乗り越え、成長した、という構成である。読み物としてはまとまるが、自分の傾向を見るという目的からは遠ざかる。AIには整形ではなく、語の重なりを数える役だけを渡す。

手順: 90分で場面から傾向を取り出す

書く場所は1つのメモにまとめる。AIとは最後の工程でだけやり取りする。

工程1. 覚えている場面を12個書き出す(40分)

年代も順序も気にせず、思い出せる場面を12個書く。1つ2〜3行でよい。書くのは次の3点である。

  • どこで、誰と、何が起きたか
  • そのとき自分が取った行動
  • そのとき考えたこと(感情語ではなく、頭に浮かんだ文)

例として1つ挙げる。

前職の会議室。3人の案から1つ選ぶ場になり、自分の案が有力だと分かった時点で、自分から別の案を推した。頭に浮かんでいたのは「今ここで通すと、後で説明を全部自分が背負う」だった。

良い場面・悪い場面のどちらでもよく、人に話せる内容である必要もない。12個そろわなければ8個でも進める。数より、行動と、そのとき頭に浮かんだ文が書けているかのほうが効く。

工程2. 各場面に、おおよその年を付ける(10分)

書き終えてから、各場面の横におおよその年を書く。「2019年ごろ」で十分である。そのうえで古い順に並べ替える。ここで初めて年表の形になるが、空欄は生まれない。

工程3. AIには語の重なりだけを指摘させる(10分)

並べ替えた12個をそのまま貼り、次の依頼を付ける。

以下は私が書いた過去の場面です。あなたの役割は次の2つだけです。
1. 複数の場面に共通して現れる語や言い回しを、5つまで挙げる
2. その語が出てきた場面の番号を併記する

物語としてまとめること、評価すること、意味づけすること、
今後の助言をすることは、いずれも書かないでください。

返ってくるのは「説明」「後で」「自分が引き受ける」といった語の一覧と、それが出た場面の番号である。解釈は入っていないので、読んでも感動しない。それでよい。

工程4. 重なった語を、状況の型に書き直す(20分)

挙がった語のうち、3つ以上の場面に出ているものを1つ選ぶ。そして、その語が出る場面に共通する条件を、自分の言葉で1文にする。

「自分が引き受ける」は5場面。共通条件は、決める場に自分がいて、決めた後の説明役が決まっていないとき。

この1文が、この手順で取り出したいものである。性格の診断ではなく、特定の条件がそろうと自分が同じ動きをする、という観察として書く。断定しにくければ「〜のとき、そうしていることが多い」で構わない。

工程5. 直近1週間に同じ条件が来たかを確認する(10分)

最後に、今週その条件がそろった場面があったかを1行書く。無ければ「今週は無かった」と書く。

過去から取り出した型は、今週の出来事に当てはめて初めて使える形になる。ここを飛ばすと、自分史は読み返さない文書になる。

実際にやると、ここでつまずく

いちばん多いのは、工程1で「そのとき考えたこと」の欄に感情語だけが並ぶことである。「悔しかった」「嬉しかった」で止まると、工程3で拾える語がなくなる。感情の裏にあった文(「これ以上は説明できない」「次も同じことを聞かれる」)まで書けると、重なりが見えるようになる。

次に、工程3でAIが依頼を超えて解釈を書いてくることがある。「この方に共通するのは責任感の強さで…」といった要約が付いてくる形である。その部分は読まずに、語と場面番号の一覧だけを使う。気になる場合は依頼文の末尾に「一覧以外の文章を書かないでください」と1行足す。

3つ目は、つらい場面を書き出したときに、作業が進まなくなることである。12個のうち何個かは書かずに飛ばしてよく、書かないと決めた場面があること自体は、この手順の成立に影響しない。気分が重くなった時点で中断してよい。自分史づくりは、体調や安全にかかわる問題を扱う手順ではない。

この手順の続けにくい点

この作業は一度やると満足するが、取り出した型は数か月で合わなくなることがある。仕事の役割が変わると、同じ条件がそろわなくなるためである。

かといって90分の作業を毎月は繰り返せない。結果として、半年前に書いた1文だけが残り、更新されないまま置かれる。更新されない型は、当たっているかどうかを確かめる機会もないまま、なんとなく自分の説明として使われるようになる。これがこの手順のいちばん弱いところである。

LifeOSはこの部分をどう扱うか

LifeOSは、週1回の振り返りを重ねて、自分の価値観や傾向を自分の言葉にしていくサービスである。上の手順で言えば、工程5の「今週その条件がそろったか」を毎週の形で置き、確認できた内容だけを自分の言葉として残していく。過去を90分かけて掘り直す代わりに、今週分を積み上げて型のほうを更新していくという順序になる。

一方で、工程1で場面を書き出す作業そのものは、どの道具を使っても自分の側に残る。過去の記憶を差し出すかどうかは、いつでも自分で決めてよい。

AIを振り返りに使う範囲の全体像はAIジャーナリングとはに、取り出した型を価値観の言葉へつなげる手順は自分の価値観の見つけ方にまとめてある。

LifeOSを試す

FAQ

自分史と人生の棚卸しはどう違いますか

扱う時間と出力物が違う。棚卸しは現在の状況を領域ごとに広げて整理し、いま動かす場所を決める作業である。自分史は過去の場面を時系列に並べ、繰り返す条件を1つ取り出す作業になる。先にやるなら棚卸しのほうが取りかかりやすい。

12個の場面が思い出せません

数がそろわなくても進められる。8個でも、3つ以上の場面に重なる語は見つかることが多い。それでも出てこない場合は、直近3年に範囲を絞って場面を書き出すと出やすい。古い記憶ほど、思い出せる数は少なくなるのが普通である。

AIに書かせた自分史をそのまま使ってもよいですか

読み物として楽しむなら構わないが、この手順の目的には向かない。AIが生成した文章は、自分が書いていない語で構成されているため、工程4で「自分の言葉の1文」を作るときの材料にならない。指摘された語の一覧を材料にして、1文は自分で書く。