会話ログの整理とは、会話を読み返せる状態にすることではない。ログの中から自分が打った文だけを抜き出して、別の場所に並べることである。 ログの分量の大半はAIの出力で、自分の発言は全体の1割ほどしかないことが多い。読み返す形のままだと、その1割を探すために9割を読むことになる。
この記事では、開くスレッドを機械的に絞り、疑問符で終わらない自分の発言だけを抜いて日付順に並べる手順を書く。初回40分、以降は月1回10分で、出力物は自分の発言だけが並んだファイル1つである。次の会話へ何を渡すかを決める手順はChatGPTに前回の話を覚えさせる方法と、その限界にある。この記事が扱うのは、すでに終わった会話から過去の自分の文を回収するという逆方向の一点である。AIが書いた文は1行も残さない。
スレッドが100本を超えて、前に何を考えていたか探せない
半年ほど使っていると、スレッドの一覧が縦に長くなる。題名は自動で付いたものが多く、「〜について」「〜の相談」が並ぶ。
先月そこそこ整理できた気がする話をもう一度したくて、探しにいく。検索窓にキーワードを入れると、10本以上がヒットする。開くと、どれもAIの長い箇条書きが並んでいて、その中のどこかに自分が打った3行がある。スクロールして探しているうちに、最初に何を探していたかを見失う。
検索が当たるのはAIが使った語である。 自分は「うまく回っていない」と書いたのに、AIが「非効率」と返している。検索に「非効率」と入れると当たり、「うまく回っていない」では当たらない、ということが起きる。
探せないのは量のせいではなく、自分の文が他人の文に埋もれているから
ログは会話の形で保存されている。会話の形は、その場で読むには適しているが、あとから一方の発言だけを取り出すのには向いていない。往復が増えるほど、自分の文の密度は下がる。
ここで全部を要約すると、自分の文はさらに消える。要約は分量の多いほうに引っ張られるので、AIの出力が要約され、自分の言い回しは「ユーザーは〜と述べた」という三人称の一文に畳まれてしまう。自分の言葉を残したいのに、要約すると必ず言い換えられる。
必要なのは、要約ではなく抜き出しである。そして、抜き出すときには「どれを抜くか」を毎回考えないで済む基準を先に決めておく。考えながら抜くと、100本のスレッドは終わらない。
手順(初回40分+月1回10分)
1. 対象期間を1か月に区切る(1分)
全期間をやろうとしない。直近1か月か、気になっている月を1つ選ぶ。初回は直近1か月でよい。
2. 開くスレッドを、2つの条件で絞る(5分)
一覧を上から見て、次のどちらかに当てはまるものだけに印を付ける。当てはまらないものは開かない。
条件1: 自分で題名を付け直したもの
条件2: 往復が5回以上続いているもの
自動で題名が付いたまま、往復が2〜3回で終わっているスレッドは、その場の調べもので終わっていることが多い。1か月分でも、条件に当てはまるのは数本から十数本に収まるのが普通である。
3. 疑問符で終わらない自分の発言だけをコピーする(25分)
印を付けたスレッドを順に開き、自分の発言だけを見る。そのうち、疑問符で終わらない文だけをコピーする。
質問文を捨てるのは、質問が状況の説明や依頼であることが多く、自分の考えが入っていないためである。「〜について教えて」「どうすればいい?」は、抜いても手元の情報は増えない。一方、「今のやり方だと月末に必ず崩れる」のような言い切りの文には、自分の判断が入っている。
抜く: 今のやり方だと月末に必ず崩れる
抜かない: どうすれば崩れなくなりますか?
4. 1スレッド3行までにする(手順3に含む)
3行を超えるときは、後半から取る。会話の後半ほど言い直しが進んでいて、前半より短く言えていることが多い。前半の長い説明は、後半の1行で置き換わっていることが多い。
5. 抜いた行を1ファイルに日付順で並べる(5分)
新しいファイルを1つ作り、日付と行だけを並べる。スレッドの題名もAIの返答も入れない。
8/22 今のやり方だと月末に必ず崩れる
8/29 相談する相手を決めてから動くほうが早い
9/3 締切より先に、誰が見るかを決めたい
6. AIには「まとめる」だけを頼む(3分)
並べ終えたファイルを貼り、次の1つだけを頼む。言い換えを断るのがここでの要点である。
以下は私が過去に書いた文です。要約・言い換え・添削はしないでください。
同じ意味の行どうしをまとめて、グループごとに番号を振ってください。原文は1文字も変えないでください。
返ってきたものに新しい言い回しが混ざっていたら、それはAIが書いた文なので削る。残すのは、自分が打った文だけである。
7. 3回以上出てくる言い回しを、先頭に3行だけ置く(1分)
グループの中で、似た言い回しが3回以上出ているものを探し、その中の1行を選んで、ファイルの先頭に置く。3つまでにする。これが、その月に自分が繰り返し書いていた文である。
8. 月1回10分、前月分だけ同じ手順で足す(月10分)
2回目以降は対象が1か月分なので、手順2から手順7までで10分ほどで終わる。過去にさかのぼるのは、余裕のある月だけでよい。
実際にやると、ここでつまずく
手順2を無視して全部開いてしまう。 一覧を見ていると、どれも中身がありそうに見える。条件を満たさないスレッドを1本開くと、そこで10分使う。条件は機械的に適用する。
手順3で、AIの返答のほうが的確に見えて、そちらをコピーしてしまう。 的確なのは当然で、整った文が返るように作られているためである。ただし、整った文は自分が次に書けるとは限らない。この手順の目的は、いまの自分が実際に使える言い回しを集めることである。
自分の発言が質問ばかりで、抜ける行が1つもない月がある。 これは失敗ではなく、その月はAIを調べものに使っていたという結果である。ファイルにはその月を空行のまま残しておくと、あとで使い方の変化が見える。
長い発言を途中で切るのをためらう。 切ってよい。文意が通らなくても、あとで読むのは自分である。全文を貼ると、ファイルがまたAIの入力欄のようになっていく。
この手順の続けにくい点
抜いた行からは文脈が落ちる。「月末に必ず崩れる」の「何が」は、元のスレッドを開かないと分からない。日付を手がかりに遡ることはできるが、遡る作業は毎回発生する。
サービス側の仕様にも左右される。ログの一括出力ができる環境なら手順3は速く終わるが、画面上でコピーしていく場合は、1か月分でも25分では収まらないことがある。その場合は対象を2週間に縮める。
そして、この手順は過去のログがあることが前提である。会話を消している場合や、記憶機能で内容が要約されて保持されている場合、抜き出す元の文が残っていないことがある。残っているのは要約であって、自分が打った文ではない。
LifeOSはこの部分をどう扱うか
LifeOSは、週1回の振り返りをAIとの対話で進めるサービスである。会話ログを整理する機能はないが、本人が答えた内容がそのまま同じ場所に積み上がるので、この記事でやっているような抜き出し作業が後から要らない形になっている。AIが返すのは断定ではなく仮説で、採るか採らないかは項目ごとに本人が決める。本人が確認したものだけが、次回以降の前提として残る。
既存のChatGPTのログを取り込んだり整理したりするサービスではないので、過去ログの管理を探している場合には向かない。これから書く分について、自分の文が探せる状態で残ってほしい場合に使い道があることがある。登録なしで3分ほど試せる。
AIを振り返りに使うときの全体像はAIジャーナリングとはに、そもそも何を書かないかを決める基準はAIに日記を書くときのプライバシーにまとめてある。
FAQ
AIに「これまでの会話をまとめて」と頼めば済みませんか?
まとめ自体は返ってくる。ただし、まとめられた文はAIの言い回しになり、自分がどう書いていたかは残らない。また、まとめの対象は保持されている範囲に限られるため、古いスレッドが含まれないことがある。自分の言い回しを残したい場合は、抜き出しと要約を分けて、抜き出しを先にやるほうが確実である。
疑問符で終わる文の中にも、大事なものがあるのでは?
ある。「本当にそれでいいのか?」のように、自分に向けた問いが混ざることがある。判定を厳しくしすぎると取りこぼすので、相手への依頼ではない疑問文は抜いてよいという例外を1つだけ足すとよい。例外を2つ以上にすると、毎行で判断が必要になり、手が止まる。
過去ログを読み返すのが気が重いときはどうしますか?
対象を1か月ではなく1週間に縮めるか、条件1(自分で題名を付け直したもの)だけに絞ると、開く本数が減る。無理に全部を見る必要はない。なお、この記事もLifeOSも、心身の状態を診断・治療・カウンセリングするものではない。過去に書いたものを見ることがつらい状態が続く場合は、整理を進めるより先に、話せる相手や医療機関・公的な相談窓口を頼るほうが適していることがある。
