AIの自己分析をやり直すとは、同じ質問をもう一度投げることではなく、前回の回答から結論を外し、材料と1行の仮説だけを入力に残して再実行することである。 前回の回答をまるごと貼ると、AIはそれを前提として扱う。前提として扱われた結論は、別の言い方で戻ってくる。やり直しの目的が「別の答えが出るか確かめること」なら、入力から結論を抜く工程が必要になる。この記事はその加工作業だけを扱う。所要は25分、必要なのは対話型AI1つと前回の回答1本である。
半年前と同じ結論が、違う言葉で返ってきた
3月にChatGPTで自己分析をして、「安定より変化を選ぶ傾向がある」という結論が出た。9月に状況が変わったのでやり直そうと思い、前回のやりとりをコピーして貼り、「これを踏まえて、もう一度分析してください」と打った。
返ってきたのは、「変化を志向する傾向は現在も維持されていると考えられます」という文だった。前回と同じ内容で、根拠として挙がっているのも前回自分が書いた材料である。半年ぶんの新しい出来事は、ほとんど触れられていない。
これを読んで「やっぱり当たっていた」と受け取ってしまうところが、やり直しの落とし穴である。
同じ結論が戻るのは、結論を入力に入れたから
対話型AIは、渡された文章の中にある主張と矛盾しない形で答えを組む性質がある。前回の回答をそのまま貼ると、その中の結論文が「すでに確定した事実」として入力に混ざる。すると新しい材料は、結論を覆す材料ではなく結論を補う材料として読まれる。
つまり、やり直したのに前回と同じ答えが出たのは、精度が高いからではなく、入力が前回の答えを含んでいたからである。これは自分の側の意志や読解力の問題ではなく、何を貼ったかという形式の問題である。
やり直しと似ているが別の作業として、前回の話を引き継ぐ運用がある。こちらは会話が変わっても前提を保つための工程で、引き継ぎメモを毎回貼る形になる(ChatGPTに前回の話を覚えさせる方法と、その限界)。やり直しは逆に、前回の結論を意図的に落とす作業なので、同じ材料を使っても貼り方が反対になる。
手順: 結論を外して再実行する(25分)
1. やり直す理由を1行で書き、3種に分ける(3分)
紙かメモに、やり直したい理由を1行書く。そのうえで、次の3つのどれかに寄せる。
- A: 状況が変わった(転職、引っ越し、家族構成の変化など)
- B: 結論に納得していない(当たっている気がしない、他人事に読める)
- C: 前回の材料が雑だった(思い出せる範囲で適当に書いた)
この3つで、持ち込むものが変わる。Aは材料を足す作業が中心になる。Bは仮説の書き方が中心になる。Cは前回の回答を使わず、最初からやるほうが早い。Cを選んだ人は以下の手順ではなく、ChatGPTで自己分析するプロンプトと、結果の扱い方の注意から始めたほうが手数が少ない。
2. 前回の回答から、自分が書いた材料だけを抜く(7分)
前回のやりとりを開き、自分が打った文だけを別の場所へコピーする。AIが書いた文は1文字も持ち込まない。抜くのは、たとえば「前職を2年で辞めた」「休日は人と会わない週のほうが多い」といった事実の記述である。
抜いた結果が5行未満だった場合は、前回の材料が薄かったということなので、理由Cに寄せ直す。5行以上あれば、その5〜10行が今回の材料になる。
3. 前回の結論を1行に縮め、「反証してほしい仮説」として書く(5分)
前回の結論を、自分の言葉で1行に縮める。長い回答でも、たいてい1行になる。
例: 「安定より変化を選ぶ傾向がある」
この1行を、次の書式で渡す。
以下は半年前に立てた仮説です。この仮説を支持する材料ではなく、この仮説と合わない材料を先に指摘してください。 仮説: 安定より変化を選ぶ傾向がある
結論をそのまま貼るのと、この書式で貼るのとの違いは、AIに与える役割である。前者では結論の説明役になり、後者では反証役になる。仮説は1つだけにする。2つ以上渡すと、どちらも部分的に支持する答えが返ってきて、判定できなくなる。
4. 前回以降の材料を3つだけ足す(5分)
手順2の材料に、前回以降に起きたことを3つ足す。3つに絞るのは、数を増やすと前回の材料に埋もれるからである。選ぶ基準は「自分の判断が要った場面」にする。
- 断った依頼や誘いを1つ
- 引き受けたが後悔したことを1つ
- 予定より長く時間を使ったことを1つ
出来事の大きさは基準にしない。大きな出来事は年に数回しかなく、材料として足りない。
5. 手順2〜4を1回のメッセージで投げる(3分)
貼る順番は、材料(手順2)→ 新しい材料(手順4)→ 仮説と依頼(手順3)である。仮説を最後に置く。先頭に置くと、材料を読む前に仮説が前提として効いてしまう。
6. 返ってきた回答を、1点だけ突き合わせて判定する(2分)
読むのは「仮説と合わない材料」として挙がった箇所だけにする。そこに、手順4で足した3つのうち少なくとも1つが使われているかを確認する。使われていれば、新しい材料が読まれている。3つとも無視されていれば、前回の材料に引っ張られているので、手順2の材料を半分に減らしてもう一度投げる。
前回と今回を並べて変化の量を見る作業は、この判定とは別である。数か月ぶんを並べる話は扱わないので、そこまで進みたい場合は別の手順になる。
実際にやると、ここでつまずく
手順2で、自分が書いた文とAIが書いた文の区別がつかない。 長い会話では、AIの表現を自分が引用して打ち返していることがある。「たしかに、変化を好むところはあります」のような文は、自分が打っていてもAIの語彙である。対処は、抜いた材料を読み返して形容詞と傾向の語を全部消すことである。残るのは行動と回数だけになり、それが材料として使える部分である。
手順3の依頼を出しても、反証ではなく「一部当てはまらない可能性もあります」という保険の文が返る。 これは頻繁に起きる。対処は、返ってきた文に対して「可能性ではなく、渡した材料のどの行が仮説と合わないかを、行を引用して指摘してください」ともう一度投げることである。行の引用を求めると、材料に当たらざるを得なくなる。
反証を求めた結果が自分に否定的に読めて、続けるのがつらくなる。 仮説を否定する材料だけを並べさせているので、読み方によっては欠点の列挙に見える。対処は、手順6の判定を終えたらその場で閉じ、回答そのものを保存しないことである。残すのは「新しい材料が読まれたかどうか」の1行だけでよい。つらく感じる状態が続くようなら、この作業自体を止めて構わない。ここで扱っているのは分析の形式の話で、自分を評価するための手順ではない。
この手順の続けにくい点と、LifeOSがそこをどう扱うか
正直に書くと、この25分は1回ならやれるが、やり直しの間隔を自分で決めて覚えておく部分が続かない。半年前の会話を探すところから始まるので、探す手間の時点で止まる。さらに、前回の結論を1行に縮めた文がどこにも残っていないと、次のやり直しでまた長い回答から縮め直すことになる。縮めた1行を毎回作り直すのが、この手順のいちばん重い部分である。
LifeOSは、対話を通じて自分の価値観を言葉にし、週1回の振り返りで更新していく日本語のサービスである。上の手順との関係でいうと、前回までに自分が確認した内容が1行の形で残り、次の週の前提として扱われる。AIが返すのは断定ではなく仮説で、採るか採らないかは項目ごとに本人が決める。そのため、半年分の会話を探して結論を縮め直す工程は要らなくなる。一方で、反証を求める使い方を代行するサービスではなく、扱う範囲も自分の価値観と週の振り返りに絞られている。3分ほどの対話を1回試すと、合うかどうかの判断がつきやすい。
AIを振り返りに使うときの全体像はAIジャーナリングとはにまとめてある。
よくある質問
やり直す間隔はどれくらいが適切ですか?
手順1で選んだ理由によって変わる。Aの「状況が変わった」なら、変化が起きた時点でやる意味がある。Bの「納得していない」なら、間隔を空けても材料が増えないので、1〜2週間で材料を足してから再実行するほうが動きが出る。定期的にやること自体を目的にすると、材料が増えていない状態で回すことになり、同じ答えが返る確率が上がる。
前回の回答を消してしまった場合はどうすればよいですか?
手順2で抜くのは自分が書いた材料なので、前回の回答がなくても手順は成立する。前回の結論だけは記憶から1行に書き出す。記憶で書いた1行は正確ではないが、この手順では仮説として反証にかけるだけなので、正確さは要らない。
新しいAIに乗り換えれば、前回と違う答えが出ますか?
出ることもあるが、入力が同じなら大きくは変わらないことが多い。この記事で扱っているのは入力の加工であって、道具の違いではない。乗り換えを検討する前に、手順2と手順3を1回試すほうが確かめる順番としては早い。
