人間関係の棚卸しとは、付き合う人を選別する作業ではなく、いま関わっている人を「会う頻度」と「担っている役割」の2つだけで並べ、自分の時間がどこに向いているかを見る作業である。 人を良し悪しで並べる形にすると手が止まるため、この手順では評価の欄を作らない。
書き始めた瞬間に、書いていいのか分からなくなる
人生の棚卸しを一通りやったあと、人間関係も整理しようと思って紙を出す。1人目の名前を書いた時点で手が止まる。次に何を書くのかが決まっていないからである。
思いつくのは「大事か/そうでないか」「合うか/合わないか」といった欄だが、名前の隣にそれを書くのは気が重い。結果、名前を5人ほど並べたところで紙を閉じる、ということが起きる。また、書いた紙を家族や同居人に見られたらどう説明するのか、という心配が先に来て着手できない人もいる。
止まるのは、評価の欄を作ってしまうから
人に対する評価は、その日の出来事で動く。前日に気まずいやり取りがあった相手は低く書かれ、たまたま助けてもらった相手は高く書かれる。同じ紙を1週間後に書けば順番が入れ替わるので、書いても使えない。
ここで起きているのは冷たさや優しさの問題ではなく、動く値を軸にすると一覧が安定しないという形式の問題である。一方、「この3か月で何回会ったか」と「自分がその関係で何をしているか」は、比較的動きにくい。動きにくい軸だけで並べると、紙を閉じずに最後まで書ける。
なお、この手順は関係を切るかどうかを決めるものではない。出てきた紙を見て何をするかは別の判断で、この記事では扱わない。相手にどう関わるかを変えたいときは、専門の相談先や当事者との話し合いが必要になる場面もある。
手順: 頻度と役割の2列だけで書く(50分・紙1枚)
書く前に1つ決める。フルネームを書かず、頭文字かあだ名にする。 紙を他人に見られる可能性があるかぎり、名前を伏せておくほうが最後まで書ける。
1. 直近3か月に、実際にやり取りした人を思い出した順に書く(15分)
期間を3か月に固定する。長く取ると昔の関係が混ざり、今の時間の使い方が見えなくなる。連絡先の一覧やメッセージアプリの履歴を見ながら書いてよい。この段階では人数を絞らない。
2. 各行に、3か月の接触回数を数字で書く(10分)
会った回数と、電話やメッセージで長めのやり取りをした回数を合計する。数えられない場合は「週1」「月1」「1回だけ」の3段階でよい。正確さは求めない。
3. 各行に、自分がその関係で担っている役割を1語で書く(15分)
相手がどんな人かではなく、自分が何をしているかを書く。候補は次のような語である。
聞く/相談する/教える/教わる/段取りする/一緒に動く/様子を見るだけ
2つ以上当てはまる場合は、直近で多かったほうを1つだけ書く。相手との関係の名前(友人、同僚、親族など)は書かなくてよい。役割の語が思いつかない行は空欄にして進む。
4. 役割の語で並べ替える(10分)
書き終えた紙を、役割の語ごとにまとめて眺める。ここで見るのは次の2点だけである。
- 同じ役割の語が何行あるか(例: 「聞く」が9行、「教わる」が0行)
- 接触回数が多い行に、どの役割が付いているか
「聞く」ばかりが並ぶ、「一緒に動く」が0行、といった偏りが見えることがある。見えたことをそのまま1行で紙の下に書く。「この3か月は聞く側が多かった」で十分である。判断や対策はここでは書かない。
この手順の続けにくいところ
一番つまずくのは、手順3の役割の語を選ぶところである。相手ごとに関係の内容が違うので、1語に収めるのが乱暴に思えて止まる。実際にやると、20行のうち5〜6行は空欄のまま残る。空欄を埋めようとして考え込むと1人で10分使うことになるので、空欄は空欄で置くと決めておく必要がある。
もう1つは、書いた紙の扱いに困ることである。人の名前(頭文字でも)が入った紙は、捨てるのも残すのも気が引ける。写真に撮ってから紙を処分する、あるいは保存するなら置き場所を決めておく、といった段取りを書く前に決めておくほうがよい。
そして、この棚卸しは頻度が上げにくい。人間関係は数か月では動かないことが多く、毎週やると同じ紙が出てくる。半年から1年に1回が現実的な間隔になる。
LifeOSでは、人ではなく自分の側の記述を残す
役割の語が1語に収まらないのは、その場面ごとに自分のしていることが違うからである。LifeOSでは週1回の振り返りで「今週は誰とどう関わったか」ではなく「今週の自分がどう動いたか」を書く形になるため、人を並べずに自分の役割の偏りが積み上がっていく。
数週間分たまると、「聞く側が続いている」「段取りばかりしている」といった傾向が、人の名前を出さずに見える。人間関係の棚卸しを紙でやるときに一番重い「名前を書く」工程が発生しないのが違いである。効果を保証するものではなく、診断やカウンセリングを提供するサービスでもない。
まずはLifeOSで3分ほど対話を試して、自分の言葉が残る形が合うか確かめてみてほしい。
関わり方を変える前に自分の基準を先に出したい場合は、自分の価値観の見つけ方と大事にしたいことの見つけ方のほうが順番として先になることもある。人生全体の棚卸しをまだやっていない場合は、人生の棚卸しのやり方を通してからのほうが人の行が書きやすい。
よくある質問
人間関係の棚卸しで、付き合いをやめる人を決めるべきですか
この手順では決めない。頻度と役割を並べるところまでで止めるのが前提である。紙を見て何かを変えたくなった場合も、その判断は棚卸しとは別の工程になる。人との関係は相手の事情も関わるため、紙1枚で決められる範囲は限られている。
家族や同居人も書いていいですか
書いてよいが、接触回数が極端に多くなるので他の行と並べても比較にならない。家族・同居人は紙の下に別枠でまとめ、役割の語だけを書く形にすると読みやすい。介護や看病などが関わる行は、この手順の対象から外し、必要なら自治体の窓口や専門の相談先で確認してほしい。
職場の人だけで棚卸しをしてもいいですか
できる。期間を3か月に固定する点と、評価の欄を作らない点は同じである。ただし職場は接触回数が業務の都合で決まるため、頻度の列から分かることは少なくなる。その場合は役割の列だけを見て、「教わる」が0行になっていないかを確認する使い方になる。
