音声入力の振り返りとは、書く代わりに話して記録を作り、話し終えてから削って形にする方法である。 話す作業と削る作業は別の工程で、後者を予定に入れていないと、読み返せない長文だけが毎週たまっていく。
3,000字の書き起こしを、開かないまま次の週が来る
音声入力は速い。10分話せば、キーボードでは30分かかる量が残る。最初の週はそれが嬉しい。問題は次の週に起きる。先週のぶんを読み返そうとして開くと、話し言葉のまま延々と続く文章が出てきて、どこに何が書いてあるか分からない。読むのに5分かかると分かった時点で、開かなくなる。
そのまま同じやり方で3週続けると、長い記録が3本たまる。振り返りのために作ったはずの材料が、振り返りを重くする側に回る。ChatGPTなどのAIに貼って要約させると読める形にはなるが、今度は「要約は読んだが自分では何も判断していない」状態になりやすい。
音声入力には「消しながら書く」動作がない
キーボードで書くとき、人は書きながら消している。言い直し、脱線、言い訳めいた前置きは、文字になる前か直後に消える。最終的に残るのは、消した後の文章である。
音声入力にはこの工程がない。話した内容がそのまま全部文字になる。「えーと」も、途中でやめた言い回しも、同じ話の二周目も、等しく記録される。つまり音声入力で増えるのは情報量ではなく、消されなかった部分の量であることが多い。
だとすれば、足りないのは削る工程のほうである。話す時間を短くするより、話した後に削る時間をあらかじめ確保するほうが、形としては安定しやすい。以下は、話す9分と削る4分を最初から分けて置く手順である。
手順: 話す前に枠を決め、話した後に削る(毎週15分)
1. 話す前に、枠を3つ声に出して録音の先頭に置く(1分)
録音や音声入力を開始したら、最初に枠の名前だけを読み上げる。枠は毎週同じにする。例として次の3つを使う。
1つ目、今週やったことで時間を多く使ったもの。2つ目、うまく運ばなかった場面。3つ目、来週も同じやり方でいくかどうか。
先に読み上げておくと、書き起こしの先頭に見出しの役割をする行が残る。これが後で削るときの目印になる。枠は自分の言葉に変えてよいが、毎週変えない。変えると週どうしの比較ができなくなる。
2. 1枠3分、タイマーで区切って話す(9分)
枠ごとにタイマーを3分にして話す。3分経ったら、文の途中でも次の枠へ移る。途中で止まっても言い直さず、「次」と言って進む。
話す内容は、できごとの事実から始める。「月曜に資料を作り直した」のように、日付と行動が入る言い方にすると、後で残す行を選びやすい。感想から入ると、削る段階で全部が同じ濃さに見えて選べなくなる。
3. 書き起こしを開き、残す行だけに印を付ける(3分)
書き起こし全文を上から読み、次の3つに当てはまる文にだけ印を付ける。
- 日付か曜日が入っている文
- 「やめた」「変えた」「決めた」のいずれかが入っている文
- 来週の予定に直接つながる文
印が付かない文は、この時点では消さずに残しておく。印を付ける作業と消す作業を同時にやると、手が止まりやすい。
4. 印の付いた文を上に移し、5行以内に切る(1分)
印を付けた文だけを、書き起こしの一番上にコピーして並べる。並べた結果が6行以上になったら、来週の予定につながらない行から落として5行にする。上の5行が今週の記録で、下の全文は材料である。次の週に開くのは上の5行だけでよい。
5. AIに渡すなら、削った後の5行だけを渡す(任意・2分)
ChatGPTなどのAIに何か聞く場合は、書き起こし全文ではなく、上の5行だけを貼る。聞くことは1回につき1つに絞る。例えば「この5行のうち、来週も続ける前提で書かれているのはどれか」と聞く。全文を貼ると、AIの返答は全体の要約になり、どの行を自分が選んだのかが消える。
実際にやると、ここでつまずく
削る段階で惜しくなる。 話しているときは全部が必要に思えるので、印を5行に切る作業で手が止まる。対処は、落とす行を消さないことである。5行に入らなかった行は下の全文の中にそのまま残っている。「消す」ではなく「上に上げない」と考えると進みやすい。
固有名詞が変換で崩れる。 社名や人名、社内の略語は、音声入力ではほぼ別の語になる。毎週同じ語が崩れるので、崩れた形のまま放置して構わない。読むのは自分だけである。直す作業を入れると、15分では終わらなくなる。
無音の3分が気まずい。 2つ目の枠で何も出てこない週がある。その場合は「今週は出てこない」と声に出して次へ進む。書き起こしにその1行が残るので、あとで同じ枠が何週続けて空だったかを数えられる。3週続けて空なら、その枠は自分に合っていない可能性がある。
周囲に人がいると使えない。 音声入力は場所を選ぶ。移動中や自宅でしか使えないなら、使える曜日のほうに振り返りの予定を寄せる。場所の制約は工夫で消えないので、先に予定のほうを合わせるほうが早い。
LifeOSでの扱い
LifeOSは、AIとの対話で自分の価値観を言葉にし、週1回の振り返りでそれを更新していく日本語のサービスである。対話の記録が週ごとに残るため、上の手順でいう「上の5行」に当たる部分が、自動的に週の単位で区切られた状態になる。音声入力そのものは端末側の機能を使うことになるが、話して作った文を貼る先として使うことはできる。
LifeOSは診断や治療、カウンセリングを提供するサービスではない。書くことでつらさが増すときは、手順を続けるより中断するほうを選んでよい。
AIを振り返りに使う全体像はAIジャーナリングとはに、キーボード入力を前提にした週次振り返りの全体手順はChatGPTで週次振り返りをする手順とプロンプト例にまとめてある。15分に収める時間配分の作り方は週次レビューの方法を15分で終える形にする手順を参照できる。
よくある質問
音声入力の書き起こしは、消さずに全部残しておくべきですか
残すかどうかは容量と検索性の問題なので、どちらでも手順は成立する。残す場合は、上の5行と全文を同じファイルに入れて、5行を上に置く。消す場合は、5行を別の場所へ移してから消す。判断がつかないうちは残す側にしておくと、後から消すことはいつでもできる。
AIとのやりとりが長くなって、どこで区切ればいいか分からなくなります
この記事は、1回ぶんの発話を削って材料にするところまでを扱っている。AIとの往復が何度も続いて話が散る場合は、区切り方そのものを決める必要があるため、別の手順になる。まずは渡す材料を5行に固定し、1回の送信につき質問を1つにするところから試すと、往復の回数自体が減ることが多い。
話すより書くほうが向いている人もいますか
向き不向きというより、条件の違いで決まることが多い。手を動かしながら考えが進む人、静かな場所を確保しにくい人は、書くほうが最後まで終わりやすい。逆に、書き始めの1行で止まる時間が長い人は、話すほうが最初の材料が出やすい。2週ずつ両方を試し、上の5行まで到達できた回数が多いほうを選ぶとよい。
