ここで書く「丸投げしない使い方」とは、目標の文そのものは自分で書き、ChatGPTには判定できない語の指摘・必要な準備の列挙・未達に終わる経路の列挙という3つの点検作業だけを発注する使い方である。 目標案を生成させる使い方とは、出てくる文の持ち主が違う。この記事では、3つのプロンプトと自分の作業を交互に置いた手順を書く。所要は40分、使うのはAIチャット1つと、目標文を置いておく場所1つである。
AIが出した目標は、整っているのに他人事に見える
「今年の目標を立てたいので案を5つください」と打ち込む。返ってくるのは、期限も数値も入った整った目標が5つ並んだリストで、読むと悪くない。1つ選んでメモに貼り、1週間後に読み返すと、なぜその数値だったのかが思い出せない。
型に当てはめようとして SMART やら OKR やらを調べ、フレームの解説を30分読んだところで力尽き、目標欄は空のまま——こういう経験がある人もいる。
続かないのは、点検すべき場所と生成すべき場所を分けていないから
目標設定の作業は、性質の違う2つの部分が混ざっている。どこへ向かうかを決める部分と、その文が判定可能かどうかを点検する部分である。前者は本人の事情(使える時間、避けたい状況、すでに持っている資源)を知っている人にしか決められない。後者は、文の形だけを見れば機械的にできる。
AIに「目標を作って」と頼むと、この2つをまとめて渡すことになる。返ってくる文は点検済みで整っているが、向かう先の根拠が自分の中にない。だから読み返したときに他人事に見える。分け方を先に決めておけば、この問題は形式の側で避けられる。以下は、その分け方を手順にしたものである。
手順: 自分の作業3つ + プロンプト3つ
工程0. AIを開く前に、目標を1文で書く(10分)
紙かメモに、目標を1文だけ書く。この時点では雑でよく、「英語をもう少しできるようにする」でも構わない。数値も期限も入れない。入れないまま次へ進むのがこの手順の前提である。整えるのは工程2の自分の作業でやる。
工程1. プロンプト1: 判定できない語を指摘させる(5分)
書いた1文を、次の形で貼る。
次の目標文のうち、達成したかどうかを他人が判定できない語を列挙してください。条件: (1) 語だけを箇条書きで出す (2) 書き直し案は出さない (3) 各語に、なぜ判定できないかを1行だけ添える。目標文:「(工程0の1文)」
出てくるのは「もう少し」「できるようにする」といった語である。(2)の書き直し禁止を必ず入れる。これを外すと、次の工程の答えが先に出てしまう。
工程2. 自分で書き直す(10分)
指摘された語を、自分の事情で置き換える。置き換えるときの条件は1つだけで、7日後に「やった/やらなかった」を自分で判定できる形にする。「英語をもう少し」なら、「毎週日曜に英語の記事を1本読み、分からなかった語を3つ書く」のようになる。年単位の到達点ではなく、1週間で判定できる粒度まで落とすのが要点である。
数値を入れる場合は、根拠を1行だけ余白に書く。「3つ」なら「前に試したとき5つは続かなかったから」でよい。根拠が書けない数値は、外して構わない。
工程3. プロンプト2: 必要な準備を列挙させる(5分)
次の目標を今週1回実行するために、事前に用意しておく必要があるものを10個列挙してください。条件: (1) 優先順位を付けない (2) 精神論を含めない (3) 各1行。目標:「(工程2の文)」
優先順位を付けさせないのが要点である。順位を付けさせると、そのうち上位3つだけを見て終わり、自分では気づけなかった項目——たいてい下のほうにある——を読み飛ばす。10個を全部読んで、自分に足りていないものを3つ選ぶのは自分の作業である。
工程4. プロンプト3: 未達で終わる経路を列挙させる(5分)
次の目標が達成されないまま終わる典型的な経路を5つ挙げてください。条件: (1) 私の個別事情は考慮せず、一般的な形で書く (2) 励ましや対処法は書かない (3) 各1〜2行。目標:「(工程2の文)」
「個別事情は考慮せず」を入れるのは、入れないとAIが本人の状況を推測して励ましを混ぜてくるためである。ここで欲しいのは応援ではなく、起こりうる崩れ方の一覧である。
工程5. 1つだけ選んで、回避を1行書く(5分)
5つのうち、自分に起きる確率が高いと思うものを1つだけ選び、それを避ける具体的な動作を1行書く。5つ全部に対策を書かない。全部書くと、目標より対策のほうが長くなり、翌週読み返さなくなる。
工程6. 週1回の確認文を作り、AIには渡さない(5分)
最後に、毎週自分に投げる質問を1文だけ作る。「今週、日曜に記事を1本読んだか」のように、はい/いいえで答えられる形にする。この文はAIに整えさせない。自分の言葉のままにしておくと、翌週読んだときに自分が書いたものとして読める。
週次の振り返りそのものをChatGPTで回す手順はChatGPTで週次振り返りをする手順とプロンプト例、AIに記録へ問いを返させる形式の全体像はAIジャーナリングとは。できること・できないこと・始め方にまとめている。
実際にやるとつまずく点
工程1で書き直し禁止を外したときの結果が分かりやすかった。試しに「指摘と一緒に修正案もください」と頼むと、返ってきたのは期限も数値も入った完成形の目標文で、読むと明らかに自分が書いたものより整っている。そのまま採用したところ、翌週に読み返して最初に浮かんだのは「なぜ週3回なのか」だった。数値の根拠が自分の中にないため、達成できなかったときに、目標が高すぎたのか自分が動かなかったのかを切り分けられない。整った文をもらうことと、判定できる文を持つことは別だったというのが、この手順で一番効いた発見である。
もう1つは工程3で、優先順位を付けさせないと10個のリストが読みにくい、という当たり前の抵抗が来る。それでも順位を頼まないほうがよい。実際に自分に足りなかった項目(読む記事を探す時間を別枠で取っていない、という一行)は、リストの8番目にあった。
目標の数そのものを減らす手順は目標を立てても続かないときの、目標を減らす手順で扱っている。
この手順の、続けにくい点
40分かけると、判定できる目標文と週1回の確認文が手元に残る。崩れるのはその先で、確認文を毎週読み返す場所が決まっていないと、2週目か3週目で行方不明になる。メモアプリの中で下へ流れ、次に思い出したときには2か月が過ぎている、という形になりやすい。
そしてこの手順は、目標が変わったときに全部やり直しになる。事情が変われば目標も変わるのが普通だが、40分の工程をもう一度回すのは重く、結果として古い目標文がそのまま残ることになる。1回の作業は難しくないのに、更新が続かない——難所はほぼここにある。
LifeOSがこの部分をどう扱うか
LifeOS は、週1回・5〜10分の振り返りに特化した日本語のサービスである。決まった項目に短く入力するとAIが「今週の整理」を仮説として返し、記録として残すかどうかは本人が決める。確認済みの記録はつながって残るため、上の工程6で作った確認文を毎週どこで読むか、という置き場所の問題を、週1回の入力の側へ寄せられる形になる。目標を生成したり達成を判定したりするサービスではなく、本人が確認した記録だけが残る。
なお、LifeOSは効果を保証するものではなく、診断・治療・カウンセリングを提供するサービスでもない。
よくある質問
SMARTやOKRの型は使ったほうがいいですか?
使ってもよいが、この手順では型の名前を先に覚える必要はない。工程1と工程2でやっているのは、結果的に「判定可能にする」という型の中心部分である。型を先に学ぶと、枠を埋めること自体が目的になり、工程0の1文を書く前に時間を使い切ることがある。型が必要になるのは、目標を他人と共有して進捗を合わせる場面が出てきてからでも遅くない。
最初からAIに目標案を作らせるのは、なぜよくないのですか?
作らせること自体が誤りというより、翌週以降の判定に使えないことが問題になる。達成できなかったときに原因を切り分けるには、その数値や期限を自分がなぜ選んだかを覚えている必要がある。生成された案をそのまま採用すると、その根拠が最初から存在しない。案を参考にする場合も、数値と期限だけは自分で置き直しておくと扱いやすい。
目標はいくつまで設定していいですか?
数の正解はないが、この手順は1つの目標に40分かかる。同時に3つ回すと2時間になり、週1回の確認文も3本に増える。まず1つで4週回してから増やすほうが、確認文が残りやすい。目標の数が多くて動けない状態そのものについては目標を立てても続かないときの、目標を減らす手順で扱っている。
