仕事の振り返りにChatGPTを使うとは、自分の働き方を採点させることではなく、1週間に起きた事実を並べ替えて「時間がどこへ行ったか」を見える形にする作業である。 評価をAIに求めると、当たりさわりのない褒め言葉か、根拠の薄い改善提案が返ってくる。この記事では、AIの担当を「分類だけ」に限定して、20分で1週間分を整理する手順を扱う。使うのはカレンダー(またはタスク管理ツール)と、対話型AI1つである。
なお、提出先のある週報を書きたい場合はChatGPTで週報を10分で書く手順のほうが工程が合う。この記事は提出しない、自分のための仕事の振り返りを扱う。
金曜の夕方に「今週なにしてたっけ」で止まる
金曜の18時。今週を振り返ろうと画面を開く。カレンダーには会議が並んでいる。タスクツールには完了済みのチェックが並んでいる。それなのに、何をしていたか一言で言えない。
書き始めると、たいてい2行目でこうなる。「A社の対応に時間を取られた。もっと早く巻き取るべきだった」。事実を1行書いた直後に、評価が1行くっついてくる。3行目からは、できなかったことの列挙になる。最後は「来週はもっと計画的に」で終わる。翌週の金曜、同じ文が書かれる。
この繰り返しに疲れて振り返り自体をやめる人もいれば、続けてはいるが読み返さなくなる人もいる。
反省会になるのは、事実と評価を同じ行で書いているから
意志が弱いからではなく、書式の問題である場合が多い。事実(何をしたか)と評価(それがよかったか)を同じ行に書くと、脳は評価のほうを先に処理する。すると事実は「反省の材料」としてしか見えなくなり、材料の総量が見えないまま結論に飛ぶ。
もう一つの理由は、材料が最初から少ないことである。記憶だけで書き出すと、印象の強い出来事(トラブル、叱られたこと、うまくいった1件)が優先的に出てくる。淡々と進んだ8割の時間は書かれない。結果として「今週はトラブル対応の週だった」という、実態より偏った像が残る。
ここでAIに向いているのは、評価でも助言でもなく、大量の事実を決められた枠へ振り分ける作業である。これは人間がやると単調で、途中で評価を混ぜたくなる工程でもある。
手順: 事実を出し、AIに分類だけさせる(20分)
工程1. 材料を機械的に集める(5分)
記憶から書かない。カレンダーの月曜から金曜までを開き、予定のタイトルをそのまま書き写す。タスク管理ツールを使っているなら、今週クローズした項目のタイトルも足す。使っていない場合は、送信済みメールやチャットの自分の発言を上から眺めて、作業名を拾う。
このとき守ることが1つある。タイトルだけを写し、感想を書かない。 「A社定例(長引いた)」ではなく「A社定例」と書く。15〜30項目くらいになるのが普通である。
工程2. 社外に出せない情報を置き換える(3分)
書き写した一覧を上から見て、固有名詞と数字を伏せる。取引先名は「A社」「B社」、社内の人名は「同僚1」、金額や件数は「金額」「件数」に置き換える。プロジェクトのコードネームも社外秘の場合がある。判断に迷うものは、消してしまってよい。分類の精度は多少落ちるが、この手順の目的は正確な記録ではなく偏りの発見なので、数項目欠けても結論は変わらない。
工程3. AIには分類だけを頼む(5分)
置き換え済みの一覧を貼り、次のように依頼する。
以下は私の今週の作業一覧です。次の4分類に振り分け、分類ごとに項目名を並べてください。評価・助言・感想は書かないでください。
(1) 決める作業(判断・意思決定を含むもの)
(2) 進める作業(手を動かして前に出すもの)
(3) つなぐ作業(共有・調整・確認)
(4) 反応する作業(差し込み対応、来たものへの返答)
判断がつかない項目は「不明」に置いてください。
返ってきたら、内容の当否は考えず、分類ごとの項目数だけを見る。数が多い分類が、今週の時間が実際に流れた先である。
工程4. 評価は自分が1行だけ書く(5分)
ここで初めて評価に入る。ただし全体は評価しない。項目数が最も多かった分類を1つ選び、それについてだけ1行書く。
今週は「反応する作業」が最多だった。これは(想定どおり/想定より多い)。
「想定どおり」なら、それで終わってよい。仕事には反応が多い週がある。「想定より多い」場合だけ、来週その分類の項目を1つ減らす方法を1つ書く。1つでよい。
工程5. 翌週の頭に前週の一覧を1分見る(1分・翌週)
月曜に、前週の分類結果だけを開いて閉じる。読み返す前提がないと、この作業は記録のための記録になる。
実際にやると、ここでつまずく
3週間ほど続けると、たいていの人が同じ場所で止まる。工程1で感想を書いてしまうのである。「A社定例」と書けばいいところに、つい「A社定例(先方の要望が二転三転)」と書く。書いた瞬間、その後の一覧全体が愚痴の書き出しに変わり、工程3の分類結果を見ても「そうは言っても大変だった」という感想が先に立つ。
対策は単純で、工程1をカレンダーからのコピー&ペーストだけで済ませ、キーボードで文字を打たないようにすることである。打てなければ感想は混ざらない。
もう一つのつまずきは、工程3でAIが助言を返してくる場合である。「反応する作業が多いので、時間をブロックすることをおすすめします」といった一文がつく。これは無視してよい。分類の依頼文に「評価・助言・感想は書かないでください」を毎回入れていても、返ってくることはある。返答の質を上げようとして依頼文を練り込むより、返ってきた助言の行を読まないと決めるほうが早い。AIとのやりとり全般の役割分担はAIジャーナリングとはに整理してある。
続けにくいのは、20分の枠と材料が毎週ゼロから必要だから
この手順の弱点は2つある。1つは、毎週金曜に20分が空いている前提であること。忙しい週ほど振り返る価値があるのに、忙しい週ほど20分が取れない。もう1つは、工程1の材料集めが毎回ゼロから始まることである。カレンダーが実態を反映していない働き方では、材料が集まらない。
週次の振り返り全体の設計(所要時間の削り方、やらない週の扱い)は週1回の振り返りのやり方にまとめてある。
LifeOSはこの部分をどう扱うか
LifeOSは、対話を通じて自分の価値観を言葉にし、週1回の振り返りで更新していく日本語のサービスである。上の手順との関係でいうと、毎週ゼロから材料を集める工程と、前週の内容を自分で持ち込む工程がサービス側に残る形になっている。分類の枠を毎回自分で決め直す必要もない。
仕事の時間配分そのものを最適化するツールではないため、そこを期待すると合わない。合うかどうかは、3分ほどの対話を1回試すと判断がつきやすい。
よくある質問
会社の情報をAIに入力しても大丈夫ですか
勤務先の規程によって扱いが異なるため、まず自社のルールを確認する必要がある。この記事の工程2は、規程を確認したうえでなお安全側に寄せるための手順であり、規程の代わりにはならない。生成AIの業務利用が禁止されている場合、この手順は使えない。その場合は工程1と工程4だけを紙で行っても、時間配分の偏りは見える。
分類の4つは変えてもいいですか
変えてよい。職種によっては「決める/進める/つなぐ/反応する」が合わないことがある。ただし分類は4つ以内にとどめ、一度決めたら数週間は変えないほうがよい。毎週枠を変えると、週ごとの比較ができなくなる。
人事評価や査定の材料に使えますか
この手順は評価のための資料を作るものではない。工程3で評価を排除しているのは、評価を含めると事実の網羅性が落ちるためである。査定用の資料が必要な場合は、この手順の一覧を材料として、別途自分の言葉で書くことになる。AIに評価文そのものを書かせると、根拠のない一般論が混ざりやすい。
