モチベーションに頼らない設計とは、やる気を高める方法を探すことではなく、やる気が低い日にも実行できていた条件を自分の過去の実績から取り出し、それを予定の側に固定する作業である。 波そのものは操作の対象にしない。この記事では、2週間の記録から「やる気が低いのに実行できた日」を抜き出し、その日に共通していた条件を1つだけ予定へ移すまでの手順を扱う。記録は1日10秒、分析は30分で終わる。
調子のいい週は毎日できて、翌週は1行も書いていない
やると決めた週は気持ちよく進む。3日目までは書けるし、書くと気分もいい。ところが次の週に入ると、同じことが急に重くなる。1週間まるごと空白のまま過ぎ、月末に見返すと、できた週とできなかった週が交互に並んでいる。
やり方を変えたわけではないのに、結果だけが週ごとに違う。 そこで「やる気が続かない自分」という説明が出てくる。やる気を上げる方法を探し、動機づけの記事を読み、決意を書き直す。それでまた数日は進み、また止まる。
この往復が長く続いている人もいる。ただ、波の存在そのものは前提として動かせないものと扱ったほうが、打てる手は増える。
上げようとすると、やる気が実行の前提条件になる
やる気を上げる方向の対策には副作用がある。「やる気が出たらやる」という順番が固定されてしまうことだ。 この順番で運用すると、やる気が低い日は自動的に実行しない日になる。波の谷が、そのまま空白の期間として記録に残る。
一方で、多くの人の記録を本人が並べ直すと、やる気が低いのに実行できている日が何日か混ざっていることがある。もしその日が1日でもあるなら、実行はやる気だけで決まっていないことになる。その日に何が違ったのかは、気持ちではなく状況の側に書いてあることが多い。
だから、やる気の高さを操作するかわりに、やる気が低い日でも実行が起きた状況を特定して、それを再現しやすい形に置き直す。以下はその特定の手順である。
なお、周期そのものが自分の生活に合っていない場合は、条件の特定より先に頻度を見直したほうが早い。三日坊主の直し方。頻度を下げるという選択肢に、中断が入る間隔から周期を逆算する手順がある。1回あたりの作業が重すぎる場合は習慣化できないのは記録が重いからを参照してほしい。本記事はやる気と実行の関係を実測して条件を1つ取り出す工程だけを扱う。
手順: 低い日の実行条件を取り出す(記録2週間+分析30分)
1. 2週間、1日1行だけ記録する(1日10秒)
紙でもメモアプリでもよい。1日の終わりに、その日の数字を2つだけ書く。
9/14 やる気3 実行○
9/15 やる気4 実行×
やる気は1から5の5段階で、基準は自分の中だけで一貫していればよい。他人と比べる数字ではない。実行は、その日にやると決めていた行動をやったかどうかの○×だけで、量や出来は書かない。
理由や言い訳は一切書かないこと。 書き始めると1日10秒では終わらなくなり、記録そのものが止まる。
2. 2週間後、○の日と×の日の数字を並べる(10分)
14行を、実行○のグループと×のグループに分けて書き写す。それぞれのやる気の数字を並べるだけでよい。
○の日:4 3 5 4 2 3
×の日:4 2 3 1 2 3 2 1
ここで見るのは平均ではなく重なりの有無である。○の中に低い数字があり、×の中に高い数字があるなら、やる気と実行は一致していない。完全に分かれていれば、この手順は当たっていない可能性が高いので、前述の頻度や重さの手順へ移ってよい。
3. 「やる気が低いのに○だった日」の条件を書く(15分)
○のグループのうち、数字が低いほうの日を2〜3日選ぶ。その日について、気持ちではなく状況を3項目だけ書く。
9/14(やる気2・○) 時間帯:朝7時台/場所:台所の机/直前の行動:コーヒーを淹れた
9/20(やる気3・○) 時間帯:朝8時前/場所:台所の机/直前の行動:洗濯機を回した
時間帯・場所・直前の行動の3つに限定する。「気分が乗った」「余裕があった」は状況ではないので書かない。思い出せない項目は空欄でよい。
4. 共通する条件を1つだけ、予定に書き写す(5分)
2〜3日分を見比べて、共通している項目を1つ選ぶ。 上の例なら「台所の机」または「朝の時間帯」である。2つ以上見つかっても、固定するのは1つだけにする。
選んだ条件を、次の2週間の予定表に実物として入れる。場所なら「台所の机で」と予定名に書き込み、直前の行動なら既存の行動の直後に予定を置く。
出力物は次の1行になる。
やる気2でも実行できた日の共通点は「朝、台所の机」。次の2週間はそこに固定する。
実際にやると、ここでつまずく
筆者が試したときの2週間は、○が6日・×が8日だった。○の中にやる気2の日が2日あり、どちらも朝で、どちらも同じ机だった。夜にやろうとした日は、やる気が4でも3日中2日は実行できていない。自分では「夜のほうが集中できる」と思い込んでいたので、この結果は予想と逆だった。
つまずいたのは手順1のほうである。最初の4日は寝る前にまとめて書こうとして、3日目に前日ぶんを思い出せなくなった。思い出して書いた数字は、実行できた日を高めに、できなかった日を低めに寄せてしまう。後から書くと、結果に合わせて数字が動く。 4日目から、歯磨きの直後に書く形へ移してからは崩れなくなった。
もう1つ、手順3で最初に書いた直前の行動が「なんとなく手が空いた」だった。これは状況ではなく感想なので、2日分を見比べても共通点が出てこない。直前の行動は、他人が見ても分かる動作の名前で書く必要がある。 コーヒー、洗濯機、通勤の電車を降りた、のように物か場所が入る言葉にすると比較できるようになった。
この手順の続けにくい点と、LifeOSがそこをどう扱うか
条件を1つ固定しても、その条件のほうが生活の変化で消えることがある。引っ越し、勤務時間の変更、同居する人の予定。条件が消えたことに気づかないまま実行だけが止まると、また「やる気が続かない」という説明に戻ってしまう。定期的に条件を測り直す必要があるが、その測り直し自体がやる気の高い日にしか起きない、という循環がある。
また、この手順は実行の有無しか見ていない。やった内容が自分にとって意味があったかどうかは、別の材料が要る。
LifeOSは、AIとの対話で自分の価値観を言葉にし、週1回の振り返りでそれを更新していくサービスである。週1回という周期が最初から決まっていて、その回に何を聞かれるかもサービス側から提示されるため、やる気の高い日に予定を組み直す作業が発生しにくい。条件が消えたときも、次の週の対話が来た時点で気づける形になっている。登録前に約3分の対話を試せるので、週1回の間隔が自分の波と合うかを確かめる材料にはなる。
頻度・分量・保存場所まで含めて形式全体を点検したい場合は、振り返りが続かないのは意志の問題ではないに6項目の手順がある。
FAQ
やる気を上げる方法は意味がないということですか?
そうは言えない。やる気が上がれば実行しやすくなる場面はある。この手順が扱っているのは、やる気が上がらなかった日をどうするかのほうで、上げる工夫と併用して問題ない。ただし上げる工夫だけに頼ると、谷の期間が空白のまま残りやすい。
2週間の記録自体が続きませんでした。
記録の置き場所が生活の動線から外れていることが多い。既存の行動の直後に書く形へ移すと続きやすくなる。それでも続かない場合は、記録の単位をさらに削る手順が習慣化できないのは記録が重いからにある。なお、2週間に届かず10日でも、○の中に低い数字があれば手順3へ進んでよい。
条件を固定したのに、実行できない日が続きます。
条件が合っていない可能性のほか、周期が短すぎる、1回が重すぎる、といった別の原因も考えられる。実行できない理由は1つに絞れないので、順に試すことになる。なお、これは意欲や体調の状態を判定する手順ではない。やる気の低い状態が長く続いて気になる場合は、話せる相手や専門の相談窓口を頼ってほしい。 この記事も記事内のサービスも、診断・治療・カウンセリングを目的としたものではない。
