ここでいう強みとは、同じ作業を同じ結果まで持っていくときに、自分のほうが時間か消耗が少ない作業のことである。 性格の長所でも、診断結果に出る資質名でもない。作業の単位で書くと、記録から拾えて、翌週に試して検証できる形になる。この記事では、1日1分のメモを5日分ためて、週末の20分で強みの候補を1つ取り出す手順を書く。使うのは3列の表が書ける紙かメモアプリ1つだけである。
「あなたの強みは何ですか」で毎回同じ答えになる
面接や1on1で強みを聞かれ、「コミュニケーション力です」と答える。言い終わった直後に、自分でも中身がないと分かる。相手も「具体的には?」と聞き返してくるが、そこで出てくるのは「相手の立場に立って考えることを心がけています」といった、誰にでも言える文になる。
強み診断のツールを試して、資質名が5つ並んだ結果を受け取る。読めば当たっている気もするが、明日の仕事で何をどう変えればいいのかは書かれていない。結果の画面を閉じて、それきりになる。こういう経験がある人もいる。
出てこないのは、強みを形容詞で言おうとしているから
「粘り強い」「柔軟」「几帳面」といった形容詞は、比較の基準を含んでいない。誰と比べて、どの場面で、どの程度なのかが入っていないため、本人にも検証できず、聞いた相手にも像が結ばれない。だから何度書き直しても、同じような文に落ち着く。
対して、「作業」の単位に落とすと基準が入る。どの作業を、どれだけの時間で、どれだけの消耗で終えたかは、記録があれば比べられる。しかもその記録は、特別なワークをしなくても平日の仕事や生活の中に毎日発生している。以下は、その記録を拾って強みの候補を1つ作るまでの手順である。
手順: 平日1日1分 × 5日 + 週末20分
平日の記録(1日1分)
紙かメモアプリに3列の表を作り、1日の終わりではなく作業が終わった直後に1行書く。列は次の3つでよい。
- 日付
- 作業(動詞+目的語)
- 早かった / 消耗しなかった
1日に拾うのは、次の2種類のうち各1件までである。
- 思ったより早く終わった作業
- 終わったあと疲れが残らなかった作業
作業名は「資料作成」ではなく「相手が知らない語を洗い出した」のように、動詞と目的語で書く。1行書くのに20秒ほどしかかからない。該当なしの日は空欄でよい。
週末の20分
1. 5日分を並べ、同じ動詞が2回以上出ているものに丸をつける(5分)
回数が多い動詞ではなく、2回以上出ている動詞すべてに丸をつける。1回だけのものは今週は使わない。
2. 丸のついた作業の中で、自分が実際にやっていた細かい動作を3つ書く(10分)
ここが手順の中心である。たとえば「資料を作った」に丸がついたなら、その作業の中で実際に手を動かしていた動作を3つに割る。
- 相手が知らないであろう語を洗い出した
- 説明の順番を入れ替えた
- 具体例を1つ足した
作業名のままでは強みにならない。強みは、作業の中のどの動作を毎回やっているかに宿るためである。
3. 他の人がやらなくても自分は毎回やっている動作を1つ選ぶ(3分)
3つのうち、他の人の成果物を見たときにそれが入っていないことが多い動作を1つ選ぶ。判断がつかない場合は、「やらずに提出したことがあるか」を思い出す。一度もやらずに出したことがない動作が候補になる。
4. 形容詞を使わずに1文にする(2分)
「説明の順番を入れ替えることを、頼まれなくても毎回やっている」のように書く。形容詞(丁寧・几帳面・論理的)を1語も使わないのが条件である。
翌週の検証(1行)
翌週、候補の動作を意図的に1回だけ多く使い、結果が変わったかを1行で記録する。変化が観測できなければ候補を差し替える。強みの候補を「言い切って終わり」にせず、翌週の材料に戻すのがこの手順の眼目である。
実際にやるとつまずく点
最初に落ちるのは平日のメモである。終業時にまとめて思い出そうとすると、その日の後半の作業しか出てこない。1日1分でも「思い出す作業」が入ると重くなるため、作業が終わった直後に書く場所を先に決めておく(付箋1枚、メモアプリの固定メモ1つ)ほうが続きやすい。
もう1つ、実際に運用して分かりにくかったのは、「早く終わった作業」を拾うと、単に簡単な作業を拾ってしまうことである。難易度の差が補正されていないためで、対処としては、他の人が同じ作業にどれくらいかけているかを知っている作業だけを「早かった」側に入れ、それ以外は「消耗しなかった」側で拾う、と分けるとよい。比べようがない作業を無理に比べないための線引きである。
観察して規則性を取り出す作業そのものについては自己理解を深める方法。書いて分かる形式のやり方、週1回の振り返りの全体像は週1回の振り返りのやり方。準備・質問・所要時間の完全ガイドにまとめている。
この手順の、続けにくい点
1週間分では、2回以上出る動詞が1つも見つからない週がある。出張や繁忙で作業の種類が偏った週は特にそうなる。強みの候補が確からしくなるのは、複数週にまたがって同じ動作が出てきたときだが、そこまで到達するには数週間の記録が要る。
そして先に落ちるのは、たいてい平日1分のメモのほうである。3週目にメモが途切れ、次に思い立ったときには最初の週の記録が手元にない、という繰り返しになりやすい。1回ごとの負荷は小さいのに、積み上げになると難しい——強みを言葉にする作業の難所は、ほぼここに集約される。
LifeOSがこの部分をどう扱うか
LifeOS は、週1回・5〜10分の振り返りに特化したサービスである。決まった項目に短く入力するとAIが「今週の整理」を仮説として返し、記録として残すかどうかは本人が決める。確認済みの記録はつながって残るため、複数の週にまたがって同じ動作が繰り返し出ているかどうかを、後から見返せる。上の手順のうち、積み上げと見返しの部分を引き受ける形になる。
強みを判定して提示するサービスではなく、本人が確認した記録だけが残る。価値観として言葉にする流れは自分の価値観の見つけ方。1人でできる手順の全体像にまとめている。なお、LifeOSは医療・カウンセリングを提供するサービスではない。
よくある質問
強み診断ツールの結果は使えますか?
出発点としては使える。資質名を眺めたうえで、「その資質が実際に現れた作業は今週どれか」を探す入口にすると、この記事の手順とつながる。結果をそのまま自己紹介の文に転記すると、形容詞で答える状態に戻りやすい。
短所を直すのと強みを伸ばすのは、どちらを先にすべきですか?
一概には言えないが、この手順に限れば強み側から始めるほうが記録が続きやすい。「早く終わった」「消耗しなかった」は書くのに抵抗が少ないためである。短所側から書き始めると、記録そのものが気重になり、平日1分のメモが最初に止まりやすい。
職務経歴書に書ける強みはどう作りますか?
この手順で出た1文(動作)に、その動作が効いた場面と結果を1つ添えると、検証可能な形になる。「説明の順番を入れ替える」だけでは伝わらないが、「相手が初見の資料で、質問が出た箇所を先に説明する順に入れ替えた」まで書けば、面接で具体的に聞かれても答えられる。資質名を並べるより、動作1つと場面1つのほうが扱いやすい。
