AIに渡す振り返りの材料。効く書き方と効かない書き方

2026-09-20 | blog

目次

振り返りの材料とは、その週に何があったかの説明ではない。いつ・自分が何をしたかが、1行で外から分かる記録のことである。 説明は読めば分かるように整っているぶん、書いた本人の動作が抜け落ちやすい。AIに渡したときに返ってくる質問の質は、質問の仕方よりも先に、この1行の形で決まっていることがある。

この記事では、すでに手元にある記録10行を3つの判定にかけて、×が付いた行だけを決まった形へ書き直す手順を書く。所要は20分で、以降は書く時点の基準としてそのまま使える。AIへの頼み方そのものはAI振り返りのプロンプト集にある。この記事が扱うのは、プロンプトの前に貼りつける側、つまり材料の1行の書式という一点である。

週の記録を貼っても、一般論が返ってくる

日曜の夜に、その週のメモをまとめてAIに貼る。「今週を振り返って、気づいたことを教えてください」と書く。返ってくるのは、忙しかった週のようですね、優先順位を見直してはどうでしょう、といった文である。

間違ってはいない。ただ、それは貼る前から言えることでもある。もう少し具体的に、と追記すると、今度はAIのほうから「どの業務にどれくらい時間がかかりましたか」と聞かれる。答えようとして、そもそも自分のメモにそれが書かれていないことに気づく。

メモにはこう書いてある。

月 打ち合わせ多くて大変だった
火 資料づくり
水 なんとなく調子が出ない
木 A社の件、進捗あり

貼っているのはこの4行である。この4行から個別の話が出てくることは、ほぼない。

一般論が返るのは、材料が「状態」で書かれているから

上の4行に共通しているのは、自分が何をしたかではなく、どんな状態だったかが書いてあるという点である。「大変だった」「調子が出ない」「進捗あり」は、いずれも評価や状態で、動作ではない。

AIが具体的な問いを作るには、比べられるものが要る。動作は比べられる。1時間かけたのか3時間かけたのかは違う話になるし、自分から連絡したのか返事を待ったのかも違う話になる。一方で状態は比べにくい。「大変だった」の隣に置ける「大変だった」は、同じ言葉で並ぶだけである。

つまり、返ってくる文を変えたいときに触るところは2か所ある。頼み方と、材料である。頼み方を何度書き直しても変わらない場合は、材料の側が状態で埋まっていることが多い。 材料の書き方は、記録を増やさなくても、いま書いてある行を直すだけで変えられる。

手順(20分・1回だけ)

1. 直近1週間の記録から10行を抜く(3分)

きれいな行を選ばない。手を加えずに、上から順に10行を別の場所へ写す。少なければ7行でもよい。ここで選り好みをすると、直す対象がいちばん軽い行だけになる。

2. 各行に3つの判定を○×で付ける(7分)

1行につき3つ、次の判定を付ける。考え込まず、1行10秒で進める。

(a) 日付か曜日が入っているか
(b) 述語が自分の動作か(「〜した」「〜やめた」「〜聞いた」)
(c) 評価語が入っていないか(よかった・微妙・大変・頑張った・進捗)

3つとも○の行は、そのまま使える材料である。1つでも×があれば、次で直す。最初は×だらけになるのが普通で、10行中8行が×ということもある。

3. ×の項目ごとに、決まった直し方で書き直す(7分)

判定ごとに直し方は1つに決めておく。迷う時間をなくすためである。

(a)が×: 行の先頭に日付を足す。思い出せなければその行は捨てる
(b)が×: 「その週の自分の動作」を1つ足す。名詞だけの行は動詞を付ける
(c)が×: 評価語を消し、消したあとに残った事実だけにする

先ほどの4行は、これを通すとこうなる。

9/8 打ち合わせ4件、うち2件は自分から日程を出した
9/9 資料を3時間、うち2時間は構成を書き直した
9/10 午後から手を付けず、夕方にメールだけ返した
9/11 A社へ見積もりを送り、返事は待ちの状態

行数は増えていない。増えたのは、あとから数えられる部分である。

4. 直した3行だけをAIに渡して、返る質問の数を数える(3分)

全部を渡さない。直した行のうち3行だけを貼り、「この3行について、事実を確かめる質問を3つ書いてください。助言は書かないでください」と頼む。

返ってきた質問が、その3行の中の語を使っていれば材料は効いている。3行のどこにも書いていない話(「体調はどうでしたか」など)が返ってきたら、その行はまだ状態が残っている。

5. 以降は、書く時点でこの3判定を満たす形だけ書く

書き直しの工程は1回で終わる。次の週からは、記録する時点で日付・動作・評価語なしの3点だけを守る。判定表を記録アプリの先頭に3行で貼っておくと、迷いにくい。

実際にやると、ここでつまずく

評価語を消すと、行が薄く感じて手が止まる。 「大変だった」を消したあとの「打ち合わせ4件」は、書いた本人には物足りない。ただし、あとで読み返して判断できるのは後者である。感想は消すのではなく、行末に括弧で付け足して、材料の行とは分けておくとよい。

気持ちの行を、無理に動作へ変換しようとする。 「気が重かった」は動作に直せない。この場合は直さず、別のファイルへ移す。材料として渡すのは動作の行だけにして、気持ちの行は自分用に残す、という分け方でよい。

10行を選ぶところで、書き直しではなく書き足しを始めてしまう。 足すと20分では終わらない。この手順は増やす手順ではなく、いま書いてある行の形だけを変える手順である。

日付が思い出せない行が半分を超える。 その場合は手順1に戻り、対象を直近3日に狭める。範囲を狭めるほうが、思い出しながら書くより速い。

この手順の限界

材料の形が整っても、何を材料にするかの選択は自分に残る。仕事の記録だけを渡し続ければ、返ってくる問いも仕事の範囲から出ない。この手順は1行の書式を変えるもので、記録の対象を広げる手順ではない。

もう1つ、直した行を続けて書けるかは別の問題である。判定を3つ通す書き方は、最初の数日は手間が増える。3日で元の書き方に戻ることがあるのは、意志の問題というより、記録を書く時点で判定表が視界にないためのことが多い。記録が続かない側の話は記録が続かないときに見直す点にまとめてある。

そして、材料が溜まっても、週をまたいで同じ話が出ているかどうかは、貼るたびに人が見比べる必要がある。1回ごとの対話は成立しても、前の週に何を確認したかは毎回こちらが持ち込むことになる。

LifeOSはこの部分をどう扱うか

LifeOSは、週1回の振り返りをAIとの対話で進めるサービスである。材料を毎回貼り直す前提ではなく、本人が確認した内容だけが次回以降の前提として残る点が、この記事の手順の弱いところと重なる。AIが返すのは断定ではなく仮説で、採るか採らないかは項目ごとに本人が決める。

記録を自動で集めてくれるサービスを探している場合には向かない。文章の添削もしない。書いた材料を毎週の対話へつなげたい場合に使い道があることがある。登録なしで3分ほど試せる。

LifeOSを試す

AIを振り返りに使うときの全体像はAIジャーナリングとはにまとめてある。

FAQ

材料は長く書いたほうが、AIの回答はよくなりますか?

長さと回答の具体性は必ずしも比例しない。同じ1,000字でも、状態の説明で埋まっていれば返るのは一般論になり、日付と動作が並んでいれば個別の質問が返りやすい。増やす前に、いまある行を手順2の3判定にかけるほうが早いことが多い。

手書きのメモでも同じ手順でできますか?

できる。手順2の判定は紙の余白に○×を書けば足り、手順4で貼るのは直した3行だけなので、その3行を打ち込めばよい。紙のほうが判定は速く進むことが多い一方、手順5の判定表を毎回見る場所が決まりにくいので、表紙の裏など置き場所を先に決めておくとよい。

自分の記録を読み直すと気分が落ち込みます。続けたほうがよいですか?

無理に続けなくてよい。この手順は記録の書式を変えるためのもので、気持ちを整理することを目的にしていない。読み返すのがつらいときは、対象を直近3日に狭めるか、いったん止めてよい。なお、この記事もLifeOSも、心身の状態を診断・治療・カウンセリングするものではない。気分の落ち込みが続く場合は、記録を続けるより先に、話せる相手や医療機関・公的な相談窓口を頼るほうが適していることがある。