棚卸しシートとは、人生の全範囲を記入するための用紙ではない。自分が実際に書ける項目だけを残した、5〜7行の一覧のことである。 配布されているシートの多くは、誰が使っても空欄が出ないよう項目を広く取ってある。広いぶん、1人が1回で埋めるには多すぎることがある。
この記事では、すでに手元にある既成シートの項目を4つの判定で削り、自分用のシートを1枚作る手順を書く。所要は30分で、出力物は項目5〜7個のシート1枚である。棚卸しそのものの進め方(半日でやる版と週次でやる版)は人生の棚卸しのやり方にある。この記事が扱うのは、その前に用紙の側を決める工程という一点である。
ダウンロードしたシートが、3行目で止まっている
「人生 棚卸し シート」で出てきたテンプレートを印刷した。項目が18ある。仕事・お金・健康・家族・友人・趣味・学び・住まい・これからやりたいこと、といった並びである。
上から埋めていく。仕事は書けた。お金も、数字を入れるだけなら書けた。3つ目の「健康」で止まる。何を書けばよいのか分からない。とくに悪いところはないが、良いとも書きにくい。そのまま飛ばして次へ進み、5つ目あたりで手が止まる。
翌週、もう1つ別のシートを探してダウンロードする。項目は22に増えている。埋まらないシートが2枚に増えただけ、という状態になることがある。
止まるのは項目が足りないからではなく、多いから
18項目のシートは、18人ぶんの事情を1枚に収めた結果である。全員に当てはまるように作ってあるので、1人の手元では必ず空欄が出るように出来ている。空欄が出ること自体は設計どおりで、書く側の問題ではない。
ところが、紙の上に空欄があると、書き終えていない感じが残る。残ると、翌週に開かなくなる。これは意志ではなく、用紙の作りに由来する部分が大きい。
もう1つ、項目が多いと1項目あたりの記入量が減る。18項目を1時間で埋めれば、1項目3分である。3分で書けるのは、その項目の要約だけになる。要約を18個並べても、あとから読み返して使えるものにはなりにくい。項目を減らすと、1項目に書ける量が増える。 減らす作業は、内容を捨てる作業ではなく、書ける分量を確保する作業である。
手順(30分・1回だけ)
1. 既成シートから、項目名だけを写す(5分)
内容は書かない。項目名だけを、1行1項目で縦に並べる。手元にシートが2枚あるなら、両方から写して重複を1つにまとめる。15〜25行になることが多い。
出典はどこでもよい。この手順は、どのシートが優れているかを比べるものではない。
2. 各項目に、直近1年で動きがあったかを○×で付ける(7分)
1項目ずつ、「この1年で、書けるだけの出来事が実際にあったか」を判定する。あれば○、なければ×を付ける。
仕事 ○ お金 ○ 健康 × 家族 ○
友人 × 趣味 × 学び ○ 住まい ×
×は消す。大事かどうかで判定しない。 大事だが1年動いていない項目は、いま書いても去年と同じ内容になる。消しても、来年動いたときに足せばよい。ここで半分近くが消える。
3. 残った項目を、「1行で答えられるか」で見る(5分)
残った項目に、答えの形を1行だけ書いてみる。書けない項目は、範囲が広すぎる。
広すぎる項目は、分割しない。質問文に置き換える。 「お金」なら「この1年で、支出を自分の判断で変えたのはどれか」に替える。項目名のままでは書けなくても、質問の形なら書ける、ということがよくある。
4. 同じ出来事が2つに書けるなら、片方を消す(5分)
残った項目を上から2つずつ突き合わせ、同じ出来事を両方に書けてしまう組を探す。「仕事」と「学び」は重なりやすい。重なったら、自分が書きたいほうを残して片方を消す。
この判定で5〜7項目まで落ちる。7を超える場合は、重なりの判定をもう1周する。
5. 直近3か月だけで試し書きして、空欄が出た項目を消す(5分)
完成したシートに、1年ではなく直近3か月ぶんだけを書き込んでみる。3か月で1行も書けない項目は、1年でも埋まりにくい。ここで消しておく。
3か月に絞るのは、思い出す負荷を下げるためである。この段階の目的は棚卸しではなく、用紙の検品である。
6. 日付を入れて保存する(3分)
完成したシートの先頭に作成日を入れ、1か所に保存する。項目は今後も変わるので、上書きせず日付違いで残す。次に棚卸しをするときは、このシートから始める。
実際にやると、ここでつまずく
消すのが怖くて、×を付けられない。 消した項目は別ファイルの「保留」欄へ移す、と決めておくと手が動く。捨てているわけではないと分かれば、手順2は速く進む。
「健康」「お金」のような大項目を分割してしまう。 分割すると項目数が増え、元の18項目に戻る。手順3のとおり、分割ではなく質問文への置き換えで処理する。
手順1で、よいシートを探し直しに行ってしまう。 探すほど項目は増える。手元の1〜2枚で始めてよい。項目の出所は、この手順の結果にほとんど影響しない。
手順5で、空欄の項目を埋めようとして時間を使う。 ここは書く工程ではなく、消す工程である。書けなかった事実のほうが情報なので、埋めずに消す。
この手順の限界
項目を減らすと、当然ながら網羅性は落ちる。5項目のシートは、人生の5面しか写さない。見落としがあることを前提に使う用紙であり、これ1枚で自分の全体が分かるものではない。半年ほど使ってから手順2をもう一度回すと、動きの出た項目が入れ替わっていることがある。
もう1つ、シートができても、書いた内容を突き合わせる相手はいない。自作した5項目は自分の見立てで選んだものなので、自分が見ようとしていない面は最初から項目に入っていない。ここは1人で作業する限り埋まりにくい部分である。
そして、棚卸しは1回やると間が空く。次に開くのは半年後や1年後で、そのころには前回何を書いたかを忘れている。年1回の棚卸しと、週単位の記録が別々に置かれたままになりやすい。
LifeOSはこの部分をどう扱うか
LifeOSは、週1回の振り返りをAIとの対話で進めるサービスである。棚卸しシートを作る機能はないが、週ごとの内容が1か所に積み上がり、次回の対話がその前提から始まる点が、この記事の手順の弱いところと重なる。AIが返すのは断定ではなく仮説で、採るか採らないかは項目ごとに本人が決める。本人が確認したものだけが、次回以降の前提として残る。
記入用のテンプレートを配布しているサービスではない。診断や適性の判定もしない。年1回の棚卸しと、週単位の記録を同じ場所に置きたい場合に使い道があることがある。登録なしで3分ほど試せる。
項目を減らしたあとに何を軸として見るかは自分の価値観の見つけ方に、週の記録から強みを拾う手順は自分の強みの見つけ方にまとめてある。
FAQ
既成のシートをそのまま使ってはいけませんか?
使ってよい。最後まで埋められるなら、削る必要はない。この手順が向くのは、途中で止まった経験が2回以上ある場合である。1枚目が埋まる人は、項目の多さが障害になっていない。
項目は何個が適切ですか?
この手順では5〜7個に落ちることが多いが、決まった正解はない。目安として、1回の作業時間を項目数で割って、1項目に10分以上取れるかで判断するとよい。60分で作業するなら6項目までとなる。
棚卸しをすると、過去の選択を後悔してつらくなります。
その場合は範囲を狭めてよい。手順5のとおり、直近3か月だけを対象にしても用紙は作れるし、そこで止めても問題はない。なお、この記事もLifeOSも、心身の状態を診断・治療・カウンセリングするものではない。過去を振り返るとつらさが続く状態になる場合は、作業を進めるより先に、話せる相手や医療機関・公的な相談窓口を頼るほうが適していることがある。
