時間の棚卸しとは、1日を分単位で記録して無駄を探す作業ではなく、すでに過ぎた1週間を大きなコマに割り、それぞれのコマが「自分で決めて使った時間」「先に決まっていた時間」「思い出せない時間」のどれだったかを塗り分ける作業である。 見るのは1コマの中身ではなく、3種類の面積の比である。
この記事で扱うのは、過去7日ぶんを1枚に落として塗り分け、最後に1文を書くまでの45分である。必要なのは紙1枚と、色の違う筆記具3本(または3種類の記号)だけである。これから先の予定を組み替える話は扱わない。棚卸しは過去の在庫を数える作業なので、材料は済んだ時間に限る。
分単位の記録が続かないのは、記録の粒度が細かいから
時間の使い方を見ようとすると、まず「何時何分に何をしたか」を書く形が思い浮かぶ。この形は正確だが、記録する側の負担が実行の途中で増える。1日に30回以上の記入が必要になり、記入が途切れた時点でその日のデータが使えなくなる。
棚卸しで知りたいのは分単位の内訳ではなく、自分の裁量がどれだけ残っているかである。それを見るには、1日を2時間ごとの12コマ、平日と休日を合わせて24コマ程度に落としても足りる。粒度を粗くすると「この2時間はどちらとも言えない」というコマが出るが、そのコマこそ後で見る対象になる。
粗い粒度でよいもう1つの理由は、記憶から書けることである。1週間前の火曜の14時に何をしていたかは思い出せないことがあるが、「火曜の午後は打ち合わせが続いていた」なら思い出せる。思い出せなければ、それも1つの結果として扱う。
手順1: 1枚に24コマの枠を作る(5分)
紙を横向きに置き、上端に7日ぶんの日付を書く。左端に時間帯を4つ書く。目安は次のとおりである。
- 朝(起床〜9時ごろ)
- 午前〜昼(9時〜14時ごろ)
- 午後(14時〜19時ごろ)
- 夜(19時〜就寝)
7日×4区画で28マスになる。自分の生活に合わない区切りなら、区画は3つでも5つでもよい。決めるのは区切りの正しさではなく、7日ぶんが1枚に収まることである。2枚に分かれると、最後に比を見る段で見比べができなくなる。
日付は今日を含めず、前日から数えて7日ぶんにする。今日は終わっていないため、塗る材料が揃っていない。
手順2: 3種類の記号を決める(3分)
塗り分けに使う3種類を、先に紙の隅に書いておく。
- ○(決めた): 自分がその時間の使い方を決めたコマ。内容が仕事でも家事でも、始める・やめる・順番を決めたのが自分ならここに入る。
- △(決まっていた): 始まる時刻と内容が自分の外側で決まっていたコマ。勤務時間、会議、送迎、通院、家族や仕事の都合で動いた時間などが入る。
- ?(思い出せない): 何をしていたか出てこないコマ。空欄にはせず、必ず?を書く。
3種類に迷うコマが出る。そのときは始める時刻を誰が決めたかだけで判定する。内容が好きかどうか、生産的かどうかは判定に入れない。好き嫌いを混ぜると塗り分けが評価になり、手が止まる。
手順3: 記憶で埋める(15分)
前日から1日ずつ、逆順に埋めていく。逆順にする理由は、直近のほうが思い出しやすく、埋め始めの手が動きやすいからである。
埋めるときの目安は1コマ10秒である。10秒で出てこなければ?を書いて次へ進む。カレンダーや通話履歴を見て補うのは1回までにする。調べ始めると、この工程が「記録の復元」になって45分で終わらない。
28マスが埋まったら、?の数を数えて紙の隅に書く。?が半分を超えていても、手順を止める必要はない。?が多いこと自体が次の段で見る材料になる。
手順4: 3種類の数を数えて、比を1行で書く(7分)
○、△、?の数をそれぞれ数え、紙の下に1行で書く。
○ 6 / △ 15 / ? 7(28マス)
この1行が棚卸しの結果である。良い比・悪い比の基準はない。基準を置くと、次に見るのが自分の時間ではなく基準との差になる。ここで見るのは次の2点だけである。
- ○が固まっている時間帯があるか。 朝だけ、あるいは夜だけに○が並ぶことがある。裁量が残っている時間帯が分かると、何かを始めるときに置く場所が1か所に絞れる。
- ?が固まっている時間帯があるか。 ?が特定の時間帯に並ぶ場合、その時間帯は記憶に残らない使い方になっている。良し悪しではなく、そういう区画があるという事実として扱う。
手順5: 1文だけ書いて終える(10分)
紙の空いている場所に、次の形で1文書く。
この1週間で自分が決めて使えたのは、主に(時間帯)だった。
書けたら終わりである。「もっと○を増やす」「?を減らす」といった目標は、この手順では書かない。棚卸しは在庫を数える作業なので、増減の計画は別の作業になる。数えた直後に計画を書くと、たいてい比を良くするための計画になり、1週間後に残らない。
書いた1文は捨てずに残す。次に同じ手順をやったとき、比較の対象になるのはこの1文と3つの数字である。
つまずきやすい点
△ばかりになる。 勤務時間が長い週や、家族の予定が多い週は△が20を超えることがある。これは手順の失敗ではない。その週の裁量が実際に少なかったということなので、○の位置だけを見て終える。
○と△の区別がつかない仕事がある。 出勤自体は△だが、その中で作業の順番を自分で決めていた場合は、コマの単位を守って始まる時刻を決めたのは誰かで判定する。区別に3分以上かけるコマは△に寄せる。
?を埋めたくなる。 ?は空白ではなく結果である。埋めるために記録を掘り始めると作業が数時間に伸びる。?のまま残して比を出したほうが、同じ手順を次の週にも実行できる。
毎週やりたくなる。 毎週やると、3つの数字がほとんど動かない週が続いて飽きやすい。間隔は1か月から3か月に1回で足りる。週単位で扱うのは時間の配分ではなく、1週間の出来事のほうが向いている(週1回の振り返りのやり方)。
この棚卸しと、他の棚卸しとの関係
年単位の出来事を並べる作業は人生の棚卸しのやり方で扱っている。こちらは対象が数年から数十年で、材料は出来事である。時間の棚卸しは対象が1週間で、材料は時間そのものである。両方をやるなら、先に時間の棚卸しをやって裁量が残っている時間帯を見つけ、そこに年単位の作業を置くと進みやすい。
3種類の比を数回分ためると、自分が何を決める側に置いているかが見えてくることがある。その見え方を言葉にする作業は自分の価値観の見つけ方で扱っている。時間の棚卸しは、そこへ持っていく材料を作る工程として使える。
なお、この手順に45分も取れないという場合は、対象を7日から3日に減らす。3日でも比は出る。振り返りそのものの時間が取れないときの畳み方は振り返りの時間が取れないときに、5分へ畳む手順にまとめている。
紙で数回やったあとの選択肢
紙で2〜3回やると、数字を並べて比べる段で手間が出てくる。前回の紙を探し、3つの数字を見比べ、1文を読み直すという工程である。ここを続けやすくしたい場合は、週1回の振り返りと記録が同じ場所に残る形を使う方法がある。LifeOSは、対話で出てきた言葉を残し、週1回の振り返りで前回との違いを見られるようにしたサービスである。棚卸しの結果を置いておく先の1つとして試せる。
よくある質問
時間の棚卸しと時間管理は何が違いますか
時間の棚卸しは、過ぎた時間を数えて配分を見る作業である。時間管理は、これからの時間の置き方を決める作業である。対象が過去か未来かが違う。この記事の手順では、数えた直後に計画を書かない形にしている。数えることと決めることを同じ45分に入れると、数字が計画に合わせて動きやすくなるためである。
記録を取っていない期間でも棚卸しできますか
できる。この手順は記憶から埋めることを前提にしている。思い出せないコマは「?」として残し、その数も結果として数える。記録を後から復元しようとすると作業時間が数倍になるため、10秒で出てこないコマは?のまま進めてよい。
どのくらいの間隔でやるとよいですか
1か月から3か月に1回が目安である。毎週やると3つの数字が動かない週が続き、作業が形だけになりやすい。逆に1年空けると、比較対象の1文と数字が自分の生活と合わなくなっていることがある。季節ごと、あるいは仕事の区切りごとに1回という間隔が扱いやすい。
