転職を考え始めたときの整理メモ。「サイン」を探す前に書き出す5つの問い

2026-10-19 | blog

目次

「転職したほうがいいサイン」とは、転職を検討する人が自分の状況を説明するために使う、一般化された状態のリストである。 評価されない、成長を感じない、日曜の夜が重い——といった項目が並ぶ。これは多くの人の状況を平均して作られた説明であり、自分がそこに当てはまるかどうかは、自分の側の材料を並べてからでないと判定しにくい。

この記事で扱うのは、サインの一覧と照合する前に、自分の材料を5つの問いで書き出す手順である。紙1枚、40分。転職するかどうかの結論は出さない。結論を出すための材料を、見比べられる形に並べるところまでを扱う。

検索結果を3ページ読んだのに、何も決まらない夜

22時、ベッドで「転職 したほうがいい サイン」と検索する。10個の項目が並んだ記事を上から読む。3つは当てはまる気がする。4つ目は、当てはまる日と当てはまらない日がある。5つ目は意味がよく分からない。

別の記事を開く。項目が8個で、さっきとは少し違う。また3つくらい当てはまる。タブが5枚になったところで画面を閉じる。翌朝、何も変わっていない。

翌週また同じ検索をして、同じ記事を読む。読んだ記憶はあるが、何が当てはまったかは覚えていない。

決まらないのは迷いの問題ではなく、照合する自分側の材料が文字になっていないから

サインの一覧は分類である。分類は、照合する対象が具体的なときだけ働く。「評価されない」という項目に対して、自分の側に「3月の面談で言われたこと」「8月に出した企画の扱われ方」という具体がないと、当てはまるかどうかはその日の気分で決まる。

気分は日によって動く。だから月曜に読むと5つ当てはまり、金曜に読むと2つになる。同じ人が同じ記事を読んで結論が変わるのは、照合する材料の側が固定されていないからである。

もう一つある。サインの一覧は「転職するかどうか」という1つの問いに全部を集約してしまう。実際には、転職しなくても変えられる部分(担当業務、働く時間、相談相手)と、転職でしか変わらない部分(会社、職種、業界)が混ざっている。混ざったまま1つの問いに入れると、どの部分の話をしているのか分からなくなる。

だから、照合の前に材料を作る。以下は、その材料を40分で紙に出すための手順である。

手順: 5つの問いを40分で書き出す(紙1枚)

準備するもの: A4の紙1枚かノートの見開き、ペン、タイマー、カレンダー(去年の手帳があれば一緒に)。

手順1: 紙を5つに区切り、問いだけ先に書く(3分)

紙を横に5本の帯に区切る。各帯の左端に、次の問いを先に書いてしまう。

  1. この1年で、辞めたいと思った日はいつか。何があった日か
  2. その出来事は、誰の都合・何の都合で起きたか
  3. 同じことは、今の会社の中で変えられるか
  4. 今の仕事で、続けたいと思っている部分は何か
  5. 次の職場で、絶対に避けたい条件は何か

問いを先に書くのは、書き出している途中で問いを考え直さないようにするためである。

手順2: 問い1に、日付と出来事だけ書く(10分)

感情は書かない。「しんどかった」ではなく「6月12日、金曜。18時に差し戻し。土曜に出社」と書く。思い出せる範囲で3〜7件。カレンダーを開いて予定が詰まっていた週を見ると出てくることがある。

日付が曖昧なものは「夏ごろ」でよい。3件に届かないときは、1年を4つの季節に区切り、各季節から1件ずつ探す。

手順3: 問い2で、出来事を3つに仕分ける(8分)

書いた各行の右端に、記号を1つ付ける。

  • 人: 特定の誰かとのやりとりで起きた
  • 仕組み: 人が変わっても起きる(制度、評価のしかた、人員数、納期の決まり方)
  • 自分: 引き受け方、断らなかったこと、見積もりの甘さ

迷う行は両方書いてよい。付け終わったら、どの記号が何件あるかを数えて、紙の下に書く。

手順4: 問い3で、社内で変えられるかを1行ずつ判定する(10分)

各行に「変えられる/変えられない/試していない」のどれか1つを書く。ここで多くなりやすいのは「試していない」である。試していない行には、試すとしたら誰に何を言うかを1行だけ足す(例: 「次の面談で、担当3件のうち1件を外せるか聞く」)。

「変えられない」と書いた行だけを、別の紙に書き写す。この数行が、転職でしか変わらない部分の候補になる。

手順5: 問い4と問い5を、同じ紙の下に書く(9分)

問い4(続けたい部分)は3つまで。出ないときは「無い」と書いて構わない。無いと書けること自体が材料になる。

問い5(避けたい条件)は、手順4で書き写した行から作る。「残業が多い」のような一般語ではなく、「月に2回以上、金曜の18時以降に差し戻しが来る」のように、面接で確認できる形まで具体にする。一般語のままだと、どの会社でも「うちは大丈夫です」と返ってきて、確認にならない。

書いたあとの読み方

紙を見て、記号の内訳を見る。「人」が多ければ、異動や配置で変わる可能性が残っている。「仕組み」が多ければ、同じ会社の別部署でも同じことが起きる可能性がある。「自分」が多ければ、職場を変えても持ち越す部分がある。

これは答えではなく、次の1か月で何を確認するかを決めるための材料である。「仕組み」が多く、かつ「試していない」が多いなら、先に試す項目のほうが決まる。

実際にやると、ここでつまずく

手順2で、1件も出てこない日がある。 辞めたいと思ったこと自体は覚えているのに、出来事が思い出せない。このときは紙を閉じて翌日に回したほうがよい。思い出せないまま埋めると「たぶんこんな感じだった」という創作が混ざり、手順3の仕分けが効かなくなる。

手順3で、ほとんどの行に「人」が付く。 特定の一人との関係が強く出ているときに起きやすい。各行に「その人がいなかったら、同じ出来事は起きたか」を書き足すと、「人」と「仕組み」が分かれることがある。

手順5の問い4が埋まらない。 続けたい部分が出ないのは、疲れている時期に書いたからかもしれないし、本当に無いのかもしれない。1回で判定せず、「10月12日時点では出なかった」と日付を添えて残す。

この紙を1回書いただけでは足りない点

この手順の弱点は、書いた日の1枚の写真にしかならないことである。思い出せた範囲と、その日の気分に左右される。先月なら「仕組み」と仕分けた出来事を、今月は「自分」と書くこともある。

本当に効くのは、同じ問いに何度か答えた紙を並べて、毎回出てくる行とその日だけの行を見分けることのほうである。毎回出てくる行は、仕組みの側に根がある可能性が高い。

ただ、紙でこれをやると、前回の紙を探すところで止まる。3か月前の1枚は、だいたい見つからない。見つかっても、どういう順番で書いたかを忘れていて、比べ方が分からなくなる。

LifeOSがこの部分をどう扱うか

LifeOSは、AIとの対話で自分の価値観を言葉にして、週1回の振り返りでそれを更新していくサービスである。

上の5つのうち、問い4(続けたい部分)と問い5(避けたい条件)は、1回で決まるものというより、週ごとの記録から形が見えてくる種類のものである。LifeOSでは週1回の振り返りが同じ形式で積み上がるため、前の紙を探さずに、毎回出てくる行とその週だけの行を並べて見られる。

転職するかどうかを判定する機能はない。判定は本人がするもので、ここで扱えるのは材料のほうである。まずは3分の体験から試せる: https://app.lifeos.jp/

関連して、価値観を言葉にする全体の手順は価値観の見つけ方、自己理解の進め方は自己理解を深める方法、転職を前提にしない自己分析は社会人の自己分析のやり方、週1回の振り返りの型は週次振り返りの完全ガイドにまとめている。

よくある質問

転職したほうがいいサインに3つ当てはまったら、転職したほうがいいですか?

当てはまる数で決まるものではない、と考える人もいる。項目はもともと多くの人の状況を平均して作られたもので、同じ項目でも背景は人によって違う。数を数えるより、手順3で「人・仕組み・自分」のどれが多いかを見るほうが、次に確認することが決まりやすい。

この整理は、転職エージェントに相談する前にやるべきですか?

順番の正解はない。ただ、手順5まで書いた紙があると、相談の場で避けたい条件を具体的に言える。一般語のまま相談すると、返ってくる提案も一般的なものになりやすい。

書き出した紙は取っておいたほうがいいですか?

日付を入れて残しておくと、3か月後に同じ問いに答えたときの比較材料になる。比較ができると、その日の気分で動いた部分と動かなかった部分が分かれる。紙で管理しにくい場合は、写真を撮って日付をファイル名にしておくだけでも足りることがある。