自己分析とは、過去の行動の記録から、自分が繰り返している判断の傾向を取り出す作業のことである。 就職・転職活動でおこなう自己分析は、選考で語る材料を作ることが目的なので、経歴の山場を掘り下げる形になっている。一方、転職するつもりがない状態で「自分のことが分からない」と感じている場合は、目的が違うので手順も変わる。この記事では、応募書類を作らない前提で、直近3か月の記録から傾向を1〜2文取り出す手順を書く。表計算ソフトかノート1冊で実行できる。
就活本を開いて、1ページ目で閉じる
働き始めて数年が経ち、今の仕事を辞めるつもりはないが、これを続けた先が想像できない。書店で自己分析の本を買って開くと、1章が「学生時代に力を入れたこと」の掘り下げから始まっている。数年前の話を思い出そうとして、当時の記憶がすでに整理済みのエピソードになっていることに気づく。何度も面接で話した形のまま固まっていて、新しく出てくるものがない。
2ページ進んだところで閉じて、そのまま本棚に戻る。こういう止まり方をしたことがある人もいる。
進まないのは、他人へ説明する形式のまま使っているから
就活型の自己分析は、他者に説明できる形へ収束させることがゴールになっている。だから「一貫性のあるストーリー」「強みを裏づけるエピソード」といった、聞き手を想定した形式が採用される。この形式で書くと、説明しやすい経験(大きな成果、明確な転機)だけが素材として選ばれ、説明しにくい日常の判断は落ちる。
転職を前提にしない自己分析のゴールは、説明ではなく来週の判断に使える材料を持つことである。ゴールが変われば素材も変わる。必要なのは経歴の山場ではなく、直近数か月に自分が実際に下した小さな決定の集まりである。説明する相手がいない自己分析では、材料は「大きさ」ではなく「新しさ」で選ぶ。
90分(3回に分けてよい)でやる手順
1. 直近3か月で「自分が決めたこと」を20件書き出す(30分)
記憶からではなく、記録から拾う。開くのは次の4つでよい。
- カレンダー(入れた予定、動かした予定、断った予定)
- 送信済みメール・チャットの送信履歴(返信の順番、引き受けた依頼)
- 購買履歴(買ったもの、やめたサブスク)
- 写真フォルダ(休日に行った場所)
粒度は小さくてよい。「金曜の飲み会を断った」「A案件のレビューを自分から引き取った」「昼食を毎日同じ店にした」で構わない。20件に届かないうちは、粒度を下げて拾い直す。
2. 1件ずつ、自分で決めたか流されたかを記号で付ける(10分)
各行の右に、○(自分で決めた)・△(迷ったが自分で決めた)・×(流された・断れなかった)を付ける。深く考えず、5秒で決める。ここで悩むと20件で疲れる。
3. ○と△の行だけ集め、決め手を1語で書く(20分)
○△の行それぞれについて、「なぜそちらにしたか」を名詞1語で書く。文章にしない。「時間」「相手」「静かさ」「やり直しの効きやすさ」「自分の名前が残るか」など、思いついた語をそのまま置く。うまい言葉を探して止まるくらいなら、粗い語でよい。
4. 2回以上出てきた語を2〜3語選び、1文にする(10分)
出てきた語を数え、複数回出たものを2〜3語選ぶ。それを次の形に入れる。
- 「私は、◯◯が確保されている選択を優先しがちである」
- 「私は、◯◯が読めない選択を後回しにしがちである」
断定でなく「しがち」で書くのは、これが3か月分の記録から出た暫定の傾向であって、性格の結論ではないからである。
5. 反証を1つ探す(15分)
作った文に当てはまらない行を、20件の中から1つ探す。必ず1つはある。見つけたら、その行の状況を1行書き足す。「ただし、締切が近い週はこの限りではない」のような条件が付くと、文は使える形になる。反証が1つも見つからない場合は、語が一般的すぎる(「効率」「誠実」など、どの選択にも当てはまる語)可能性が高いので、3へ戻って別の語を選ぶ。
6. 来月、1回だけ使う(5分)
出来上がった1〜2文を、次に何かを決めるときに1回だけ見る。判断を変えるためではなく、その文が実際の場面で当てはまるかを確かめるために見る。当てはまらなければ書き直す。使わない自己分析は、書いた翌週には忘れる。
実際にやると、ここでつまずく
筆者が最初につまずいたのは、1で「決めたこと」を仕事上の重要な決定に限ってしまい、7件しか出なかったことだった。7件では2回以上出てくる語が生まれず、3で止まった。昼食の店、返信する順番、断った誘い、買わなかったものまで含めたら25件を超え、そこで初めて「やり直しの効きやすさ」という語が4回出てきた。傾向は件数が集まって初めて見えるので、粒度を上げるより件数を稼ぐほうが先である。
もう1つは、4で出た語が「成長」だったことだ。文にすると立派に見えたが、5で反証を探したら20件中12件が当てはまらなかった。説明として気持ちのよい語ほど、実際の記録とは合わないことがある。 語を「口出しされない状態」に置き換えたら、反証は2件に減り、そちらのほうが後で使えた。
出てきた語を価値観の言葉として整えていく手順は、自分の価値観の見つけ方。1人でできる手順の全体像にまとめてある。過去の記録ではなくこれからの1週間を観察して規則性を取り出す方法は、自己理解を深める方法。書いて分かる形式のやり方で扱っている。
この手順の続けにくい点と、LifeOSがそれをどう扱うか
正直に書くと、この手順には残る難しさが2つある。1つは、90分を確保する必要があること。3回に分けられるとはいえ、1で集めた20件を覚えているうちに4まで進まないと、材料が冷める。もう1つは、出した1〜2文が3か月後には合わなくなることである。仕事の内容も生活も変わるので、本来は定期的に更新する種類の文なのだが、更新のきっかけが自分の中にしかない。
LifeOSは、AIとの対話で自分の価値観を言葉にし、週1回の振り返りでその言葉を更新していく日本語サービスである。まとまった90分を取らなくても、対話に答えていく形で材料が集まり、週次の回で前回の言葉を見直す流れになっている。更新のきっかけが週1回の側から来るため、思い出したときにやり直す運用にならない。登録前に3分で試せる体験があり、カード情報の入力は不要である。
FAQ
就活の自己分析と、社会人の自己分析は何が違いますか?
目的が違うため、素材の選び方が違う。就活の自己分析は選考で語る材料を作るのが目的なので、他人に説明できる大きな経験を掘り下げる形になる。転職を前提にしない場合のゴールは、来週以降の自分の判断に使える材料を持つことなので、直近数か月の小さな決定を数多く集めるほうが向いている。同じ「自己分析」という言葉でも、前者は過去へ深く、後者は最近を広く、と方向が逆になる。
診断ツールやタイプ分けの結果は使えますか?
出発点としては使えるが、この手順の代わりにはならない。診断結果は「あなたはこういう傾向がある」という一般的な記述で返ってくるため、そのままでは自分の記録と結びついていない。使うなら、結果に書かれた傾向を仮説として扱い、この記事の1で集めた20件の中に、その傾向が現れている行と現れていない行を探すとよい。当てはまらない行が見つかったときのほうが、材料としては役に立つ。
自己分析はどのくらいの頻度でやり直せばよいですか?
まとまった手順としては3〜6か月に1回で足りることが多い。3か月分の記録が新しく溜まるまで、同じ材料を眺めても出てくる語は変わりにくいからである。ただし、担当業務・住む場所・生活リズムのどれかが変わった月は、期間を待たずにやり直すほうが実態と合う。日々の更新は、週1回の振り返りで「今週の判断は前回の1文と合っていたか」を1行確認する程度でよい。
