読書ノートとは、本の内容を要約して保存するものではなく、読んでいるあいだに自分の側で起きた反応を、本の長さに関係なく一定量だけ残す記録である。 本記事では、1冊につき3行、所要5分に固定する書き方を扱う。読みながら線を引く作業は増やさず、読み終えた翌日に3行だけ書き、月に1回だけ読み返す。必要なのはノート1冊とペン、または手元のメモアプリだけである。
「付箋はたくさん貼ったのに、ノートは白紙」という状態
読み終えた本に付箋が20枚ほど貼ってあり、ノートを開いて1ページ目に章のタイトルを書き、そこで止まったことがある。全部を写すと時間が足りない。どれかを選ぼうとすると、どれも大事に見えて選べない。結局その本は本棚に戻り、ノートには章タイトルだけが残った。
半年後に同じ本を手に取ったとき、付箋の場所は覚えていなかったし、なぜそこに貼ったのかも思い出せなかった。残っていたのは付箋の位置であって、そこで考えたことではなかった。
書けないのは記憶力ではなく「分量が本の側で決まっている」問題として扱える
要約という形式には、設計上の性質が2つある。
- 分量が本の長さに比例する。 300ページの本は、要約も長くなる。読み終えるたびに作業量が変わるので、所要時間が読む前に分からない。
- 判断の数が多い。 どこを残しどこを捨てるかを、ページごとに決めることになる。付箋20枚なら20回の判断が発生する。
この2つが重なると、本を読み終えた直後、いちばん疲れているタイミングで、いちばん重い作業が来る。白紙のまま終わるのは当然に近い。
残したいものを「本の要点」から「自分の反応」に置き換えると、分量は本の長さと無関係になる。反応は、300ページでも50ページでも、だいたい1つか2つしか残らないからである。記録そのものが続かない状態が先にある場合は、記録が続かない側の手順を先に通しておくとよい。
手順: 印を付けて、翌日に3行だけ書く
手順0: 置き場所と単位を先に決める(3分)
1冊につき1ページと決める。ノートでもメモアプリでもよいが、途中で場所を変えないことのほうが重要である。ページの上に「書名・読み終えた日」だけを書く欄を作っておく。著者名や出版社は書かない(調べる手間が発生すると、その日に書き終わらない)。
手順1: 読みながらは、印だけを付ける(作業時間0)
読んでいる最中にノートは開かない。やることは1つだけで、気になった箇所にページの角を折るか、付箋を1色だけ貼る。線を引いたりコメントを書き込んだりはしない。理由は、読書中に書く作業を入れると、読む速度が落ちて本自体を読み終えなくなることがあるからである。
付箋の色を分けたくなるが、分けない。色を分けると「これは何色か」という判断が読書中に増える。
手順2: 読み終えたら、印のうち1つだけを選ぶ(2分)
折ったページを順に開き、いちばん最初に「あ、これだ」と思った1か所で止める。全部を見比べない。迷ったら、最後に折ったページを選ぶ。印が10か所以上ある場合は、最初の3か所だけを見て選ぶと決めておく。
選ばなかった印はそのままにしておく。消す必要はない。
手順3: 3行で書く(5分)
行ごとに書く内容を固定する。
- 1行目: 本に書いてあったことを、自分の言葉で1文にする。引用ではなく、思い出せた範囲でよい。
- 2行目: なぜそこが引っかかったのか。 自分の経験や、いま抱えている状況と結び付ける。「去年の秋に同じ失敗をしたから」でよい。
- 3行目: 今週ためしてみること1つ。 行動にならないものは書かない。思いつかない場合は「今週は何もしない」と書いて埋める。
3行目が埋まらない本は多い。埋まらないこと自体が、その本と今の自分の距離を表しているので、そのまま残す。
手順4: 書く日を「読み終えた翌日」に固定する(判断0)
読み終えた直後には書かない。直後は印象が強すぎて、本の勢いのまま書いてしまい、1週間後に読むと意味が分からないことがある。翌日に、本を閉じた状態で書く。本を開き直して探し始めたら、その時点で手順2に戻る(探し始めると30分かかる)。
手順5: 月1回、3行だけ読み返す(10分)
月末に、その月に書いたページをまとめて開く。読むのは3行だけで、本文には戻らない。3行目に書いた「ためしてみること」のうち、実際にやったものに印を付ける。評価はしない。印の数を数えるだけにする。
週単位の振り返りと一緒に回したい場合は、振り返りノートの書き方の側にページを作って、読書の3行をそこに貼る形でもよい。
この手順が続けにくくなる点を正直に書く
翌日には、何が引っかかったのかを忘れている。 翌日に書くと決めていても、24時間たつと印の理由が思い出せないことがある。実際、折ったページを開いて「ここの何が良かったのか分からない」まま3行目だけ埋めた本が何冊かある。これを完全には防げない。対策としては、印を付けた日に本の余白へ単語を1つだけ書いておく方法があるが、手順1の「読書中は書かない」と衝突するので、どちらを取るかは本の種類によって変わる。
読み終えない本が記録から抜ける。 この手順は「読み終えた翌日」を起点にしているので、途中でやめた本は1行も残らない。実際には途中でやめた本のほうが多い、ということが起こる。やめた本も残したい場合は、「やめた日」を読み終えた日の欄に書いて、2行目(なぜ引っかかったか)を「なぜやめたか」に置き換える運用になるが、ここを決めないまま始めると記録が歯抜けになる。
3行目が毎回同じ文になる。 「意識してみる」「気をつける」が並び始めたら、その月は3行目を書くのをやめて2行までにするほうが早い。無理に行動を作ると、月末の読み返しで印が1つも付かず、読み返す意味がなくなる。
溜まるだけで読み返さない。 月1回と決めていても、読み返す日は飛びやすい。記録を読み返さない問題は読書ノートでも同じで、読み返す日を単独で予定に入れるより、すでにある別の予定(月初の計画や週次の振り返り)の末尾に付ける形のほうが残りやすい。
ページが増えると、どの本に何を書いたか分からなくなる。 20冊を超えたあたりから、目次を作るか検索できる場所に移すかの判断が要る。紙のまま続けるなら、ページの端に1冊ごとの色を付けるくらいが限界である。
LifeOSがこの作業のどこを引き受けるか
3行を書くところまでは、ノートとペンと5分で終わる。難しいのはその先で、何冊もの3行をまたいで「自分は何に反応し続けているのか」を見る部分である。1冊ずつ読み返しても、同じ主題に繰り返し線を引いていることには気づきにくい。月1回の印付けは、その入口ではあるが、それだけでは傾向にはならない。
LifeOSは、AIとの対話で自分が何を大事にしているかを言葉にし、週1回の振り返りでその言葉を更新していくサービスである。読んだ本の要約を作る道具ではなく、「なぜその箇所が引っかかったのか」という2行目の側を、週ごとの記録と並べて置いておく使い方が近い。本の内容をまとめ直す用途であれば、AIと読書を振り返る手順のほうが目的に合う。
週1回の振り返りの組み立て方は週次振り返りの全体ガイドに、振り返りを習慣にする方法は振り返りの習慣化ガイドにまとめてある。まず自分の言葉が出てくるかどうかを確かめたい場合は、LifeOSを3分だけ試すのが早い。無料で始められ、カード情報の入力は不要である。
よくある質問
読書ノートは手書きとアプリのどちらがいいですか?
どちらでも成立する。判断の基準は、読み終えた翌日に5分以内で開ける場所かどうかである。手書きはノートを取り出す手間があり、アプリは開いたときに別の通知に流れやすい。実際に両方を1か月ずつ試して、3行が書けた冊数が多かったほうを選ぶのが早い。途中で場所を変えると過去分が分断されるので、変えるなら月の変わり目にまとめて移す。
小説やエッセイでも同じ手順で書けますか?
書ける。ただし1行目(本に書いてあったこと)は要点ではなく「場面」になる。誰が何をした場面か、を1文にする。2行目・3行目の扱いは変わらない。3行目の「今週ためしてみること」は小説では埋まらないことが多いので、その場合は2行で止めてよい。
要約を作らないと、内容を忘れてしまいませんか?
忘れる。この手順は内容の保存を目的にしていないので、あらすじや論旨を後から参照したい場合には向かない。参照が目的なら、要約や索引を作るほうが合っている。本記事が残そうとしているのは、本の内容ではなく、その本を読んでいたときの自分の状況と反応のほうである。目的が「内容の保存」であれば、別の形式を選んだほうがよい。
