AIの自己分析を比較するとは、複数回の出力を横に並べ、毎回出てくる語と今回だけ出た語に分けて、後者だけを読む作業である。 判定するのは分析の精度ではなく、入力した材料が前回から何本入れ替わったかのほうである。
3回やって、3回とも同じことを言われる
月に1回くらいAIに自己分析をさせている。出てきた文章は、読んだときはなるほどと思う。スクリーンショットを撮る。
3回目で、前と同じ言葉が並んでいることに気づく。「慎重」「全体を見る」「人に任せるのが苦手」。当たっているのかもしれないが、3回同じなら1回で足りたことになる。もっといいプロンプトがあるのではないかと探し始め、そこで止まる。こうなる人もいる。
同じ結果が返るのは、渡している材料がほぼ同じだから
AIは渡された文の範囲で答えを作る。毎月「これまでの仕事を振り返ると」から始まる似た文章を渡していれば、返るのは似た分析である。出力が安定しているのは分析が正しいからではなく、入力が安定しているからという場合がある。
だから3回ぶんを並べたとき、最初に見るべきなのは「どれが一番当たっているか」ではない。当たり外れで読むと、どれも当たっているように見えて選べない。
見るのは差分である。3回のうち1回にしか出なかった語のほうに、その月に実際に起きたことが入っている。 毎回出る語は、自分の入力のテンプレートを写している可能性のほうが高い。
なお、前回の結論を引き継いで深掘りするのではなく、材料を入れ替えてやり直す手順は別にある。ここで扱うのは、すでに手元にある複数回ぶんの出力を並べるところだけである。
手順: 3回ぶんを並べて差分だけ読む(60分・紙1枚と過去の出力)
1. 出力を3つ選び、間隔と条件をメモする(10分)
手元の履歴から、1か月以上あいた出力を3つ選ぶ。各出力について、3点を書き出す。
日付 / そのとき渡した材料 / 使ったプロンプトの種類
例:
6/12 / 直近1か月の業務メモ10行 / 既成の自己分析プロンプト
7/20 / 転職サイトの職務経歴を貼った / 同上
8/25 / 特に材料なし、質問だけ / 自分で書いた質問
条件が揃っていない場合は、揃っていないと書いたまま進める。 揃えようとして過去をやり直すと、比較する対象が今日の3回になってしまい、月をまたいだ変化が見えなくなる。
2. 各出力から名詞句だけを抜く(20分)
3つの出力を1つずつ読み、名詞と名詞句だけを抜き出して列にする。1出力あたり10〜15語を上限にする。
6/12: 慎重 / 全体把握 / 調整役 / 任せるのが苦手 / 準備の早さ
7/20: 慎重 / 全体把握 / 専門性の幅 / 任せるのが苦手 / 数字への弱さ
8/25: 慎重 / 全体把握 / 任せるのが苦手 / 短期の集中 / 人前での説明
文ごと写さない。文には修飾と理由づけが付いていて、それを読むと3回とも説得力があるように見える。語だけにすると、重なりと差が目で見える。
3. 毎回出た語に線を引き、いったん脇へ置く(5分)
3列を見比べ、3回とも出ている語に線を引く。上の例では「慎重」「全体把握」「任せるのが苦手」である。
線を引いた語は、この回では読まない。正しいかどうかも判定しない。これらは安定して出ている以上、今月の変化を知るための材料にはならない。
4. 1回だけ出た語を集めて、出どころを当てる(15分)
残った語(1回だけ出たもの)を1列に書き出す。各語について、その月に何を渡したからその語が出たのかを1行書く。手順1でメモした「渡した材料」を見ながら当てる。
「専門性の幅」(7/20だけ)← 職務経歴を貼ったから出た。自分の月の出来事とは関係ない
「人前での説明」(8/25だけ)← 8月に説明会を2回やった。出来事が入っている
ここで「渡した材料から説明がつく語」と「つかない語」に分ける。材料から説明がつく語は、入力の副産物なので落とす。つかない語だけが残る。
5. 残った語を1〜2語に絞り、元の出来事を1行書く(8分)
説明がつかなかった語のうち、1〜2語だけ残す。各語について、その月に実際にあった出来事を1行、記録から書く。
「短期の集中」→ 8/18の週、3日で資料をまとめ切った。その前後の2週間はほぼ進んでいない
記憶から書かず、カレンダーやメモから拾う。 語のほうから記憶をたどると、その語に合う出来事だけが出てきやすい。
6. 次回に渡す材料を1つだけ入れ替えると決める(2分)
最後に、次回の自己分析で渡す材料を1つ決める。今回と同じものを渡すと、同じ語がまた並ぶ。
次回(10月)に渡す材料: 9〜10月のカレンダーから、着手日と完了日が書ける仕事5件
毎回の材料を全部変える必要はない。1つだけ入れ替えると、次回の差分が何によって生まれたか分かる。
実際にやると、ここでつまずく
手順1で、過去の出力が残っていない。 会話を消していたり、どの月のものか分からない場合がある。そのときは3回ぶんを待たず、今回を1回目として日付と渡した材料だけ記録しておく。比較は2回目からでも成立する。
手順2で、名詞句の粒度が揃わない。 「慎重」と「慎重に物事を進める傾向」が別語に見えてしまう。迷ったら短いほうへ寄せて、1語2〜6文字を目安にする。厳密さより、3列を同じ目で見られることを優先する。
手順3で、線を引いた語を読みたくなる。 3回とも出ている語は印象が強く、そこを掘りたくなる。ただし安定して出ているものは来月も出るので、次回に回しても失われない。この回は差分だけに使う。
手順4で、全部が「渡した材料から説明がつく」になる。 これは悪い結果ではなく、3回とも入力の写しを読んでいたということが分かったという結果である。その場合は手順6へ進み、材料を1つ入れ替えて翌月にもう一度並べる。
この手順の続けにくい点と、LifeOSがそこをどう扱うか
並べてみると、読む量は減る。続けにくいのは手順1の「そのとき渡した材料」を、毎回その場で記録しておくところである。1か月後にはどの材料を貼ったか思い出せない。ここが空欄だと、手順4の仕分けができず、また当たり外れの読み方へ戻る。
AIの側に前回の話を引き継がせる方法もあるが(ChatGPTに前回の話を覚えさせる方法と、その限界で扱っている)、引き継ぐことと、月ごとの差を残すことは別の作業である。引き継ぐと出力は安定する方向へ動くので、差分を見たい場合はむしろ手元に記録が要る。
LifeOSは、対話を通じて自分の価値観を言葉にし、週1回の振り返りで更新していく日本語のサービスである。上の手順との関係でいうと、その週に何があったかが毎週たまっていくため、1か月後に「そのとき何を渡したか」を思い出す工程が軽くなる。ただし、AIが出した語をそのまま自分の結論にするサービスではない。出力は仮説であって、本人の状態を決めるものではないし、採否は項目ごとに本人が決める。並べる作業自体は紙1枚でできるので、まず1回試して、記録を探す手間が惜しくなったときに置き場所を考えれば十分である。
AIを振り返りに使うときの全体像はAIジャーナリングとはに、自己分析プロンプトの結果の扱い方はChatGPTで自己分析するプロンプトと、結果の扱い方の注意にまとめてある。
よくある質問
比較するには何回ぶん必要ですか
3回あると「毎回/1回だけ」の区別がつくので扱いやすい。2回でも差分は出るが、たまたま出た語なのか毎回出る語なのかが分かれない。1回しか無い場合は、今回を1回目として日付と渡した材料を記録しておくところから始められる。
間隔は1か月がいいですか
1か月は目安である。基準は日数ではなく、前回から渡す材料が入れ替わったかどうかのほうである。仕事の内容が変わっていない期間に短い間隔で回すと、入力が同じなので差分は出にくい。逆に転職や異動があった直後なら、2週間でも差が出ることがある。
3回とも違うことを言われる場合は、どう読めばいいですか
毎回違うのは、毎回渡している材料が違うためであることが多い。手順1でメモした材料を見比べて、条件のほうが揃っていないかを先に確認する。条件も似ているのに語が毎回入れ替わるなら、出力が材料ではなく言い回しに反応している可能性があるので、材料を数値入りの行に変えると安定しやすい。
