カスタム指示とは、ChatGPTの設定画面にあらかじめ文章を置いておき、新しい会話を開くたびにその文章が前提として読まれるようにする機能である。 毎回の会話で打ち込む説明とは置き場所が違い、書き換えるまで残り続ける。この記事で扱うのは、振り返りに使う会話に限って、何をそこへ置き、何を置かないかを決める1回きりの設定作業だけである。所要は30分、必要なのはChatGPTの設定画面と、直近3回ぶんの会話履歴である。
先に範囲を書いておく。前回の会話で出た結論そのものを次回へ持ち込む話は、設定欄ではなく毎回渡す側の作業なのでChatGPTに前回の話を覚えさせる方法と、その限界で扱っている。質問文そのものの書き方はChatGPTへの質問が上手くなる3つの型にある。また、1回の質問に対して答えが平均的になるときの前提の渡し方は、本記事では扱わない。
毎回、最初の5行が同じ説明になっている
週の振り返りをChatGPTでやろうとして新しい会話を開く。書き始めるのは振り返りの中身ではなく、「私は会社員で、平日は夜しか時間がなく、目標は3つあって」という説明である。前の週にも同じことを書いた。その5行を書き終えたころには、振り返りたかった出来事のほうがぼやけている。
説明を省いて本題から書くと、今度は返ってくる答えが誰にでも当てはまる内容になる。結局、次の週にはまた5行を書いている。この往復が2〜3週続くと、開くこと自体が億劫になることがある。
説明が繰り返されるのは、置き場所が会話の中にしかないから
同じ説明を毎回書いているのは、覚えが悪いからでも、伝え方が下手だからでもない。説明の置き場所が「その会話の中」しかないため、会話を閉じると一緒に消えているだけである。会話は使い捨ての単位で設計されているので、そこに前提を書けば、前提も使い捨てになる。
形式の問題としてはこうなる。振り返りで使う情報には、毎週変わるもの(今週あった出来事)と、半年くらい変わらないもの(働き方、使える時間帯、答えの返し方の好み)が混ざっている。前者は毎回書くしかない。後者は書く必要がない場所に置けばよい。カスタム指示は後者だけを入れる箱である。
変わるものまで箱に入れると、変わった後もその前提で返ってくる。
手順: 固定する3項目と返し方3条件を決める(30分・1回)
1. 直近3回の会話から、自分が打った説明文を拾う(8分)
履歴を開き、自分が書いた最初のメッセージだけを3回ぶん、メモへコピーする。AIの返答は見ない。
3回ぶんを並べたら、3回とも出てくる語句に印を付ける。1回しか出てこない語句には付けない。印の付いた語句が、この後の候補になる。思い出しで書かずに履歴から拾うのは、思い出しで書くと「書いたつもりの理想の前提」が混ざるためである。
2. 拾った文を3つに仕分け、固定するものだけ残す(7分)
印を付けた語句を、次の3つへ振り分ける。1つの語句は1つにしか入れない。
A: 半年たっても同じままのもの(職種、使える時間帯、家族構成、続けている習慣の頻度)
B: 数か月で変わる見込みのもの(今の目標、担当プロジェクト、繁忙期かどうか)
C: 毎週変わるもの(今週の出来事、今の気分、今週の進み具合)
設定欄へ入れるのはAだけである。 BとCは毎回の会話で書く。Bを入れたくなるが、入れると変わった後に気づけない。設定欄は開かないと見えないので、古い前提のまま半年動くことがある。
3. 枠1「自分について」を3項目で書く(5分)
カスタム指示の1つ目の欄(自分に関する情報)に、Aから3項目だけ選んで箇条書きで書く。1項目は1行、20〜40字を目安にする。
・平日は22時以降しか自分の時間がなく、まとまった作業は週末に寄せている
・振り返りは週1回、日曜の夜に10分だけやっている
・仕事は人と調整する時間が多く、1人で考える時間は自分で作らないと発生しない
3項目に絞るのは、多いほど効くわけではないためである。
4. 枠2「返し方について」を3条件で書く(5分)
2つ目の欄(返答のしかた)には、内容ではなく形式の条件を3つ書く。うち1つは禁止の形にする。
・結論から3行以内で書き、そのあとに理由を書く
・私が書いていない事実を補わない。足りない情報は質問で返す
・励ましや一般論のまとめで締めない
禁止を1つ入れておくのは、条件が「〜してほしい」だけだと、返答の末尾に定型の励ましが付きやすいためである。末尾の定型文は読み飛ばす習慣がつき、その手前の本文まで読み飛ばすようになることがある。
5. 設定前後で同じ質問を1回ずつ投げ、2条件で確かめる(5分)
設定を保存したら、保存前に1回、保存後に1回、まったく同じ短い質問を新しい会話で投げる。質問は「今週は水曜に会議が3つ入って、木曜の作業が後ろへずれた。来週どこを直すとよいか」程度の、事実1つだけのものにする。
見るのは2点だけである。
条件1: 自分が書いていない設定(年齢、職種、家族構成など)を勝手に足していないか
条件2: 保存後の返答で、自分が説明として書いた行が何行減ったか
条件2が0行なら、枠1の3項目が振り返りで実際に使う前提になっていない。1〜2で拾い直す。うまくいっている場合は、説明の5行が1〜2行まで減る。
6. 入れ替えの日を1つ決める(1分)
カレンダーに「カスタム指示を見る」を月1回、日付指定で入れる。やることは1つ、追加ではなく差し替えである。3項目の枠は増やさず、足したい行があれば既存の1行を消す。増やしていくと、半年後には読まれているのか分からない長文が残る。
実際にやると、ここでつまずく
最初にやったとき、枠1へ「今は繁忙期で残業が多い」と書いた。手順2でいうBである。繁忙期は2か月で終わったが、設定欄は開かないので気づかず、その後も「お忙しい中で」という前置きのついた返答を受け取り続けた。おかしいと思って設定を見たのは2か月後だった。設定欄の間違いは、会話の中の間違いと違って、その場では見えない。
もう1つは項目数である。最初は枠1に8項目書いた。返答が「まず前提を整理すると」で始まり、自分が書いた8項目の要約が5行続いてから本題に入るようになった。3項目に減らすと、要約は消えた。
この設定の続けにくい点と、LifeOSがそこをどう扱うか
正直に書くと、この設定でなくならないのはその週の出来事を書く手間である。減るのは前提の説明だけで、振り返り本体は毎回自分で書く。しかも、書いた内容は会話を閉じれば消えるので、翌週にまた「先週はどうだったか」を自分で思い出すところから始まる。設定欄は前提を固定できるが、積み上がった記録を置く場所ではない。
もう1つ、月1回の差し替えは忘れやすい。忘れても動いてしまうので、気づく機会が来ない。
LifeOSは、週1回・5〜10分の振り返りをAIとの対話で進める日本語のサービスで、答えた内容が同じ場所に積み上がる。AIが返すのは断定ではなく仮説で、採るかどうかは本人が決め、本人が確認した内容だけが次回以降の前提として残る。 つまり、この記事でいう枠1にあたる部分が、設定を書き直す作業ではなく、毎週の確認の結果として更新されていく。カスタム指示を自動で書いてくれるサービスではないし、汎用のAIのように何でも相談できるわけでもない。登録なしで3分ほど試せる。
AIを振り返りに使うときの全体像はAIジャーナリングとはに、前回の結論を次回へ持ち込む側の手順はChatGPTに前回の話を覚えさせる方法と、その限界にまとめてある。
よくある質問
カスタム指示に書いた内容は、毎回の会話にどれくらい効きますか?
どの程度反映されるかは仕様や会話によって変わるため、一定とは限らない。効いているかは手順5の2条件で自分の会話について見るほうが早い。弱いと感じる場合は、枠2の条件を抽象的な要望(丁寧に、分かりやすく)ではなく、行数や禁止のような判定できる形にすると差が出やすい。
記憶機能をオンにしていれば、カスタム指示は書かなくてよいですか?
役割が違う。記憶機能は会話の中から拾われた内容が残る仕組みで、何がいつ残ったかを自分で決めにくい。カスタム指示は自分が書いた文がそのまま置かれる。この記事の目的は「毎回説明する行を減らす」ことなので、自分で内容を決められる側に置くほうが確かめやすい。両方使うこともできる。
設定欄に自分のことを書くのが不安です。どこまで書けばよいですか?
書かなくてよい。手順4の枠2(返し方の条件)だけでも、返答の形は変わる。枠1に入れる3項目は、他人に見られても困らない粒度(時間帯や頻度など)で足りることが多い。なお、この記事もLifeOSも、心身の状態を診断・治療・カウンセリングするものではなく、この設定をすれば振り返りが続くと保証するものでもない。気分の重さが続いて生活に差し支えがあると感じる場合は、設定を工夫するより先に、話せる相手や医療機関・公的な相談窓口を頼るほうが適していることがある。
