AIに質問を返させるとは、答えを出す役をAIから外し、「自分が答えるための問いを1つずつ出す役」だけを渡すことである。 入口の条件がふつうの相談と違い、こちらに案や結論がなくてよい。テーマが1つあれば始められる。この記事で扱うのは、質問役を渡す依頼文の作り方と、7問で打ち切って自分で1つ決めるまでの20分の進め方だけである。必要なのは対話型AIが1つと、最後の3行を書ける場所である。
なお、すでに案が1文ある状態から、その案を壊して書き直していく進め方はAIとの壁打ちのやり方で扱っている。入口に案があるならそちらのほうが速い。
「何か質問して」と頼んだら、3問まとめて返ってきた
転職するかどうかを決めかねていて、考えを進めたくてAIを開く。何を聞けばいいか分からないので、「私に質問してください」と打つ。返ってきたのは3問だった。
1問目に答えている途中で、2問目と3問目の前提が自分の答えとずれていることに気づく。全部に答えると長くなるので1問目だけ返すと、AIは残り2問には触れず、代わりに助言を書き始める。10分後、画面には読める文章が並んでいるが、自分が決めたことは1つもない。
進まないのは、AIが答える役を降りていないから
質問を求めても答えが返ってくるのは、頼み方が悪いからというより、依頼文に「答えない」という指定が入っていないためである。対話型のAIは、質問を出すことも助言を書くこともできる。どちらもできる状態で「質問してください」とだけ渡すと、質問を出したうえで、ついでに答えも書く。
形式の問題として整理すると、この使い方では役を2つに割り当て直す必要がある。問いを出すのがAI、答えるのが自分、決めるのも自分である。3つのうち1つでもAIへ戻ると、その先は読むだけの時間になる。
もう1つ、1問ずつという指定が抜けると、まとめて返ってくる。まとめて返ってきた質問は、答えの途中で前提が動くため最後まで使えない。
質問させる使い方と、答えをもらう使い方の違い
同じAIでも、この2つは入口も手元に残るものも違う。
| 質問を返させる(この記事) | 答えをもらう | |
|---|---|---|
| 入口 | テーマだけ。案も結論もない | 聞きたいことが具体的にある |
| AIの役 | 問いを1つずつ出す | 情報や案を出す |
| 自分の作業 | 問いに答える | 出てきたものを選ぶ |
| 手元に残るもの | 自分の答え7つと、決めた行動1つ | 候補のリストと判断材料 |
| 向く場面 | 考えが言葉になっていない | 材料が足りない |
迷ったら、いま頭の中にあるのが「言葉になっていない気がかり」か「知らない情報」かで分ける。 前者なら質問役、後者なら答えをもらう側である。
手順: テーマ1つを7問で進める(20分)
1. テーマを「決めたいこと」1行にする(3分)
AIを開く前に、テーマを1行で書く。名詞1語(転職、お金、健康)では質問が発散するので、「〜を決めたい」「〜をどうするか」の形にする。
- 悪い例: 「キャリア」
- 良い例: 「今の部署で来年も続けるかどうかを、今月中に決めたい」
決める対象と期限が入っていれば、出てくる質問がその1点に寄る。
2. 依頼文を貼る(2分)
新しい会話の最初に、次の趣旨をそのまま貼る。テーマは末尾に付ける。
これから私が1つのテーマを書きます。あなたの役は、私が自分で考えるための質問を出すことだけです。条件は4つ。(1) 質問を一度に1問だけ出す (2) 私が答えるまで次の質問を出さず、助言・要約・励ましを書かない (3) 私の答えの中に出てきた言葉を使って次の質問を作る (4) 7問目で終わりにする。テーマは次のとおりです。
条件(3)を入れているのは、自分が使った言葉を拾わせるためである。これがないと、一般的な設問集をなぞる進み方になり、4問目あたりで自分のテーマから離れる。
3. 1問30秒で答え、詰まったら「分からない」で次へ進む(10分)
返ってきた問いに、1問30秒を目安に答える。長く書かない。考え込んで止まるくらいなら「分からない」と返して次へ進む。分からないと答えた問いは、それ自体が材料になる。
答えるときの唯一の規則は、日付か場面を1つ入れることである。「忙しい」ではなく「先週の火曜、22時まで会議が入った」と書く。具体が1つ入ると、次の問いがその具体に寄る。
4. 7問で止め、AIに締めさせない(3分)
7問目が終わったら、要約やアドバイスを求めずに会話を閉じる。 ここでまとめを頼むと、自分の言葉で書かれた7つの答えが、AIの言葉の要約に置き換わる。手元に残したいのは前者である。
5. 自分で3行だけ書く(2分)
会話の外のメモに、自分で3行書く。
1行目: 7問のうち、答えるのに一番時間がかかった問い
2行目: 自分の答えの中で、書いていて意外だった1文
3行目: 今週やる行動1つと、いつやるか
3行目は「考える」ではなく動作で書く。この3行が、この20分で残るものである。
6. 切り替えの目安を持っておく(随時)
途中で3問続けて「分からない」が出たら、そこで止める。考えが言葉になっていないのではなく、材料が足りていない状態なので、質問役ではなく答えをもらう使い方へ切り替えるほうが早い。逆に、2問目で行動が決まってしまったら、7問まで続けず打ち切ってよい。
実際にやると、ここでつまずく
最初にやったとき、依頼文に問数の上限を書かなかった。15問目まで続き、10問を過ぎたあたりから自分の答えが「はい」「たぶん」だけになっていた。読み返すと、使えたのは最初の5問ぶんだけだった。上限を書いておくと、1問あたりに使う量が自然に変わる。
もう1つは条件(1)の書き忘れである。「質問してください」だけで頼んだ回は、やはり3問まとめて返ってきた。「一度に1問だけ」と書き足した回では、最後まで一問一答で進んだ。頼み方の差はこの一文だけだった。
この進め方の続けにくい点と、LifeOSがそこをどう扱うか
正直に書くと、この手順は毎回、依頼文を貼るところから始まる。テーマが変わるたびに新しい会話を開くので、前回7問で出した答えは次回の会話には無い。同じテーマで2回目をやると、1問目がほぼ同じ問いから始まることがある。進んだぶんが次へ渡らないので、3回目あたりで「また同じところを回っている」と感じて開かなくなることがある。
手元の3行を毎回探して貼れば渡せるが、その手間があると、たいてい貼らない。
LifeOSは、週1回・5〜10分の振り返りをAIとの対話で進める日本語のサービスで、答えた内容が同じ場所に積み上がる。AIが返すのは断定ではなく仮説で、採るかどうかは項目ごとに本人が決め、本人が確認した内容だけが次回以降の前提として残る。 つまり、この記事でいう3行を毎回貼り直す部分を持たなくてよくなる。問いを何問出すかを自由に設計できるサービスではなく、扱う範囲も自分の価値観と週の振り返りに絞られている。登録なしで3分ほど試せる。
AIを振り返りに使うときの全体像はAIジャーナリングとはに、人のコーチとの役割の違いはAIコーチングとは何かにまとめてある。
よくある質問
7問という数に根拠はありますか?
数そのものに根拠はない。7問にしているのは、1問30秒で答えて10分に収まる範囲だからである。時間が取れるときは10問にしてもよいが、上限を決めずに始めないことのほうが重要である。上限が無いと、終わり方を自分で決めることになり、たいてい答えが雑になってから止まる。
AIが途中で助言を書き始めたら、どうすればよいですか?
「質問だけを1問お願いします」と短く返して続ける。会話を最初からやり直す必要はない。それでも助言が混ざるときは、依頼文の条件(2)を先頭に移して貼り直すと変わることがある。使うAIやその日の会話によって効き方は違う。
質問に答えていくうちに、気持ちが重くなってきたときは?
途中でやめてよい。7問は守る約束ではなく、長く続けないための上限として置いている。なお、この記事もLifeOSも、心身の状態を診断・治療・カウンセリングするものではなく、この進め方で考えが整理できると保証するものでもない。重さが続いて生活に差し支えがあると感じる場合は、問いを重ねるより先に、話せる相手や医療機関・公的な相談窓口を頼るほうが適していることがある。
