振り返りと反省の違いは、対象の置き方にある。振り返りは「起きたこと」を対象に置き、反省は「自分の至らなさ」を対象に置く。 同じ1週間を材料にしても、どちらを対象に置くかで出てくる文章は変わる。AIとの振り返りが反省会の形になるとき、変わっているのは自分の性格ではなく、AIに送った依頼文の対象の置き方であることが多い。
「整理したかっただけなのに、反省文が返ってくる」場面
週末にChatGPTを開いて、1週間の出来事を貼り付ける。「この1週間を振り返ってください」と書いて送る。返ってくるのは「時間管理に改善の余地があります」「優先順位づけが課題です」といった、課題と改善提案の並んだ文章である。
読むと、どれも間違ってはいない。ただ、読み終わったあとに残るのは「自分はできていない」という感触だけで、来週どうするかは決まっていない。もう一度「もっと前向きに」と頼むと、今度は褒め言葉が増えるが、中身は同じ課題リストのままだった、ということも起きる。
これを何週か続けると、開くこと自体が重くなる。やめてしまう人もいる。
反省寄りになるのは、依頼文に評価の動詞が入っているため
AIは、依頼文の動詞に合わせて出力の形を決める。「振り返って」「分析して」「アドバイスして」は、いずれもAIの側では「評価して改善案を出す」という指示として扱われやすい。加えて、材料として貼った文に「できなかった」「遅れた」といった評価語が混ざっていると、AIはその評価語を手がかりに、足りない点の一覧を作る。
つまり、反省会になるのは意欲や性格の問題ではなく、依頼文の主語と動詞が「自分の評価」を求める形になっているからである。逆に言えば、主語を出来事に移し、動詞を「並べる」「分ける」といった作業語に変えれば、出力の形は変わる。
手順: 依頼文の3か所を書き換える(15分・初回のみ)
1. いま使っている依頼文をそのまま書き出す(3分)
頭の中の文ではなく、実際に送った文を1行コピーする。多くの場合、次のような形になっている。
「今週の出来事です。振り返って、改善点を教えてください。」
書き出したら、次の3か所に印をつける。主語(誰について書かせているか)、動詞(何をさせているか)、求める出力(何が返ってくれば終わりか)。
2. 3か所をそれぞれ置き換える(7分)
- 主語: 「私」→「今週起きたこと」。人ではなく出来事を対象に置く。
- 動詞: 「振り返って/評価して/アドバイスして」→「分けて/並べて/共通点を挙げて」。判断を含まない作業語にする。
- 求める出力: 「改善点」→「分類された出来事の一覧」「複数回出てきた場面」。数えられる形を指定する。
書き換えると、たとえばこうなる。
「以下は今週起きたことの記録です。判断や評価はせず、①予定どおり進んだこと ②途中で止まったこと ③予定になかったこと の3つに分けて一覧にしてください。改善案は書かないでください。」
「改善案は書かないでください」の一文は省略しない。これを抜くと、分類の後ろに提案が付いてくることが多い。
3. 材料側の評価語を消す(5分)
貼り付ける出来事の行から、「できなかった」「ダメだった」「遅れてしまった」を消し、事実だけに戻す。「資料作成が遅れてしまった」→「資料作成は木曜に完了した(予定は火曜)」。事実と予定の差を数字で書けば、評価語がなくても情報は落ちない。
ここまでが1回ぶんである。返ってきた一覧を読んで、②と③に入った行のうち2回以上出てきた場面があれば、その場面だけを次の1問で扱う。
やってみると、ここで戻る
実際に運用すると、多くはこの3つでつまずく。
1つ目は、2往復目で元に戻ることである。一覧が返ってきたあと、つい「で、どうすればいいですか」と送ってしまう。この一文で動詞が評価に戻り、そこから先は元の反省会に戻る。対策は、2往復目の文もあらかじめ決めておくことである(例:「②に入った行のうち、同じ場面が2回以上あるものだけを抜き出してください」)。
2つ目は、分類名を自分で決めていないことである。「いい感じに分けて」と頼むと、AIは「成功」「失敗」という軸を持ってくる。この軸が入った時点で反省の形になる。分類名は自分で3つ書いてから渡す。
3つ目は、書き換えた依頼文を毎回作り直していることである。毎回ゼロから書くと、疲れている週ほど短い文になり、短い文は評価を求める形に戻りやすい。定型文として保存し、貼るだけにしておく。
なお、書く順番や時間帯を変えても気持ちが沈むままの場合は、依頼文の問題ではない可能性がある。無理に続けず中断してよい。LifeOSは診断・治療・カウンセリングを提供するサービスではない。
LifeOSでは、この置き換えを毎回しなくてよい形にしている
上の手順のうち、続けるのが難しいのは「毎週、同じ形の問いを自分で用意する」部分である。LifeOSは対話の問いがあらかじめ固定されていて、扱う対象が出来事の側に置かれている。週1回の振り返りでは、その週に起きたことを材料として置き、評価ではなく繰り返し現れた場面のほうを拾う形になっている。依頼文を毎回書き直す作業自体が不要になる、という部分だけが違いである。
どう問われるかは読むより試すほうが早い。3分で最初の対話ができる。
AIを振り返りに使う全体像はAIジャーナリングとはに、問いの作り方そのものはChatGPTへの質問が上手くなる3つの型にまとめてある。振り返りの形式を根本から見直す場合は振り返りが続かないのは意志の問題ではないも参照できる。
よくある質問
反省は悪いことなのか
そうではない。反省が必要な場面はある。ここで分けているのは良し悪しではなく、同じ材料から違う出力が出るということである。来週の行動を決めたいときに課題リストが返ってくると、材料と出力が噛み合わない。目的に合わせてどちらを頼むか選べばよい。
依頼文を変えてもAIが改善案を書いてくる
「改善案は書かないでください」を依頼文の最後ではなく、分類の指示の直前に置くと守られやすいことがある。それでも付いてくる場合は、出力の形を先に固定する(例:「表形式で、列は『出来事』『分類』の2列のみ」)と、余計な段落が入りにくくなる。
振り返るたびに落ち込むときも、この手順で直るのか
この記事が扱うのはAIへの依頼文だけである。自分で紙に書くときの順番や、書いたあとに気持ちが沈む場合の扱いは対象が違うため、別の手順として分けている。まずは依頼文だけを変えて1回試し、変化がなければ別の要因を見るほうが早いことが多い。
