会話を区切るとは、いま開いているスレッドを閉じて、必要な情報だけを持って新しいスレッドを立てる判断のことである。 会話が長くなって話が散るのは、記憶や理解の問題ではなく、1つのスレッドに複数の論点が同時に載っている状態が続いているためであることが多い。区切るかどうかは、感覚ではなく3つの合図で判定できる。
「最初に何を聞いていたのか分からなくなる」場面
ChatGPTで自己分析を始めて、最初は「自分はどういう場面で集中できるのか」を聞いていた。返ってきた答えに補足していくうちに、話は仕事の進め方に移り、さらに人間関係の話になり、気づくと画面には40往復ぶんの文章が並んでいる。
上へスクロールして最初の質問を読み直すと、そのときの論点はもう扱われていない。最後のほうのAIの答えは、どの話についての答えなのかが自分でも判別しにくい。そのまま閉じ、翌週また最初から同じ質問を打ち込む。
この繰り返しになると、時間はかかるのに手元に残るものが増えない。
散るのは、論点が増えても場所が1つのままだから
AIとのやり取りでは、直前の数往復が強く影響する。論点Aについて話したあとに論点Bへ移ると、Bへの答えはAの文脈を引きずる。さらにCが加わると、AとBの前提を混ぜた答えが返る。これは不具合ではなく、文脈を踏まえる仕組みが働いた結果である。
紙のノートであれば、論点が変わればページを変える。会話の画面にはそのページの区切りがないため、論点が増えたことに気づいても場所が増えない。だから散る。必要なのは、区切りを自分で入れることである。
手順: 3つの合図で区切り、8行を持ち越す(初回20分・以降5分)
1. 区切りの合図を3つ覚えておく(初回のみ)
会話中、次のいずれかが起きたら区切りどきである。往復数ではなく、内容で判定する。
- 合図1: 見出しが2つ以上になった。 いま話している内容を一言で言うと、と自分に聞いて、答えが2つ出たとき。
- 合図2: 同じ答えが2回返ってきた。 言い回しは違うが中身が同じ答えが続くとき。掘り進める材料が尽きている。
- 合図3: 自分の発言が疑問符だけになった。 「なるほど、では次は?」のように、自分の側から情報を出していない発言が3回続いたとき。
3つとも、スクロールして探す必要はない。画面の最後の数往復を見れば判定できる。
2. 持ち越しメモを8行で書く(5分)
閉じる前に、次のスレッドへ運ぶものだけを書き出す。新しい文章を作るのではなく、既にある会話から抜き出す。
- 最初に聞きたかったこと(1行)
- 分かったこと(最大3行・AIの語ではなく自分の言葉で)
- まだ答えが出ていないこと(1行)
- 次のスレッドで最初に聞くこと(1行)
- 材料として使う出来事(最大2行・日付付き)
8行に収まらない場合は、論点が2つ残っている。そのときは2つのメモに分け、スレッドも2つ立てる。同時に1つしか進めないのであれば、片方は日付だけ書いて保留にしてよい。
3. 新しいスレッドを立て、メモを貼って再開する(3分)
新しいスレッドの1通目は、持ち越しメモをそのまま貼り、その下に「4」で書いた質問を1つだけ置く。前のスレッドは消さずに残す。あとで読み返すかどうかは別として、消すと「分かったこと」の根拠が追えなくなる。
引き継ぎメモの書式をもっと細かく決めたい場合は、ChatGPTに前回の話を覚えさせる方法と、その限界に別の観点でまとめてある。
やってみると、ここで止まる
実際に運用すると、つまずくのはだいたい次の3点である。
1つ目は、区切りどきに限って会話が面白くなっていることである。合図2(同じ答えが2回)が出ているのに、読んでいる側は納得感があるので続けたくなる。ここで続けると、さらに10往復してから同じ結論に戻る。合図が出た時点で一度手を止め、メモを書いてから続けるかどうかを決めると、無駄が減る。
2つ目は、持ち越しメモにAIの語をそのまま写してしまうことである。「内発的動機づけが高い」のような語を写すと、次のスレッドはその語を前提に進み、自分の場面から離れていく。分かったことの3行は、必ず自分が実際に見た場面の言葉に置き換える。
3つ目は、スレッドを増やしすぎて探せなくなることである。区切りに慣れると1週間で10本以上になることがある。スレッド名を「日付+最初に聞きたかったこと」の形に統一しておくと、探す時間が減る。
LifeOSでは、区切りと持ち越しを自分で管理しなくてよい
上の手順で最も続けにくいのは、会話の最中に自分で区切りを判定し、毎回8行を書き写す部分である。会話に集中しているときほど、この判定は後回しになる。
LifeOSは、対話が週1回の振り返りという単位で区切られている。1回ぶんの対話で扱う範囲があらかじめ決まっていて、前回までに言葉になったものは自分のOSとして残る形になっている。持ち越しのために自分でメモを書き写す作業が発生しない、という点が違いである。
実際の区切られ方は、読むより試すほうが早い。3分で最初の対話ができる。
AIを振り返りに使う全体像はAIジャーナリングとはに、1つの論点を深く掘る場合の往復の作り方はAIの回答をもう一段掘る追加質問の作り方にまとめてある。
よくある質問
何往復を超えたら区切ればいいのか
往復数では決めにくい。1つの論点だけを扱っていれば30往復でも散らないことがあり、逆に5往復で論点が3つに増えることもある。この記事で合図を内容の側に置いているのはそのためである。目安が欲しい場合は、「上へ2回スクロールしないと最初の質問が見えない」を補助的な合図として使う方法もある。
長いスレッドを1つ持っておいたほうが、AIが自分を理解してくれるのでは
長さと理解は比例しない。前提が増えるほど、直近の話題に引きずられた答えも出やすくなる。長く保ちたい情報は、会話の中に置くのではなく、持ち越しメモのような短い形で自分の側に持っておくほうが確実である。
区切ったあと、前のスレッドは消していいのか
消さないほうがよい。ただし読み返す前提で残すなら、名前を統一しておかないと探せなくなる。なお、過去の会話ログをまとめて整理する作業は本記事の手順とは別で、事後の整理として扱うほうが進みやすい。
