ChatGPTへの質問が上手いとは、丁寧な日本語で書くことでも長く書くことでもなく、AIが答えを1つに絞れるだけの制約を、質問文の中にあらかじめ入れておくことである。 質問文に制約がなければ、AIは誰にでも当てはまる平均的な答えを返すしかない。この記事では、すでに手元にある「うまくいかなかった質問文」を、3つの型で書き直す作業だけを扱う。所要時間は15分で、必要なのは対話型AI1つと、前回の会話履歴だけである。
20往復して、最後まで「一般論」から抜けなかった
転職するかどうかを整理したくて、ChatGPTに「転職すべきか教えて」と打つ。返ってくるのは、現職の不満を書き出す、市場価値を調べる、家族と話す、といった一覧である。もっともだと思うので「もっと具体的に」と返す。今度は同じ一覧が長くなって返ってくる。
「私の場合はどう思う?」と聞く。すると「状況によりますが」という前置きから始まり、また一般的な話に戻る。20往復ほどしたあと、画面を閉じる。時間は40分使っていて、手元には何も残っていない。
同じことは仕事の相談でも起きる。「この企画の改善点を教えて」と聞くと、ターゲットを明確に、KPIを設定する、といった項目が並ぶ。知らなかったことは1つもない。
一般論が返るのは、質問が「情報を求める形」のままだから
「教えて」で終わる質問は、答えの範囲を相手に決めさせる形式である。範囲が決まっていないとき、AIは最も外れにくい答え、つまり多くの人に当てはまる一般論を返す。これはAIが手を抜いているのではなく、範囲を指定されなかったときの最も無難な出力がそれだからである。
「もっと具体的に」と足しても改善しにくいのは、この指示が範囲ではなく分量を指定しているからである。範囲が同じまま分量だけ増えれば、一般論が長くなる。
つまり足りないのは質問の丁寧さではなく、次の3つのうちのどれかである。
- 前提: 自分の状況のうち、答えを変えるものは何か
- 制約: 満たすべき条件、使えない手段、かけられる時間
- 出力形式: いくつ、どの粒度で、何の順に並べるか
この3つを質問文に埋め込む書き方には型がある。以下の3つを、目的に応じて使い分ける。
手順: 前回の質問文を3つの型で書き直す(15分)
工程0. 失敗した質問文を1つ持ってくる(2分)
新しく質問を考えるのではなく、前回うまくいかなかった質問文をそのままコピーする。会話履歴を遡り、一般論しか返ってこなかったやりとりの最初の1文を選ぶ。手元にない場合は、いま聞きたいことを普段どおりの書き方で1文だけ書く。
工程1. どの型に書き直すかを決める(1分)
聞きたいことの状態で選ぶ。迷ったら型1から試す。
| 状態 | 使う型 | 出てくるもの |
|---|---|---|
| 案がまだ1つもない | 型1 制約型 | 条件を満たす案が3つ |
| 案が2つあって決めきれない | 型2 対比型 | 各案で捨てるものの一覧 |
| 案が1つあり、進めてよいか不安 | 型3 反証型 | その案の弱点が3つ |
工程2. 型に沿って書き直す(7分)
型1 制約型(案を出させる)
以下の条件をすべて満たす案を3つ出してください。
条件1: (使える時間・お金・体力のうち、最も厳しいもの)
条件2: (すでに試して駄目だった手段。これは案に含めない)
条件3: (絶対に手放したくないもの)
出力は箇条書き3つ、各1文で。前置きと補足は不要です。
条件は3つまでにする。4つ以上入れると、すべてを満たそうとして内容の薄い案が並ぶことが多い。
型2 対比型(決めきれないとき)
AとBで迷っています。どちらがよいかは答えないでください。
かわりに「Aを選ぶと捨てるもの」「Bを選ぶと捨てるもの」を、
それぞれ3つずつ挙げてください。各1文で、比較表にはしないでください。
A: (1文で)
B: (1文で)
「どちらがよいか答えないでください」の1行が要である。これを入れないと、捨てるものを並べたあとに結論を足してくる。結論が付くと、そこだけ読んで判断してしまいやすい。
型3 反証型(進めてよいか不安なとき)
次の案の弱いところを3つ、起きる可能性が高い順に挙げてください。
励ましや代案は不要です。指摘だけ書いてください。
案: (「〜する」で終わる1文で)
工程3. 返ってきたものを1つだけ選び、1行残す(5分)
3つ返ってきたうち、読んだときに一番いやな気持ちがしたものを1つ選ぶ。それが、自分がまだ考えたくない部分であることが多い。選んだ1つについて、自分の言葉で1行だけ書いてメモに残す。AIの出力そのものは残さなくてよい。
実際にやると、ここでつまずく
文字数の指定が守られない。 「各50字で」と書いても、日本語では長さがぶれる。字数ではなく「各1文で」「箇条書き3つ」のように構造で指定するほうが安定する。
条件を思いつかない。 型1の条件2(すでに試して駄目だった手段)が出てこない場合、まだ何も試していない段階である可能性がある。そのときは条件2を空欄にせず、「調べただけで実行していない案は除外」と書き換えるとよい。
型2で結論を足してくる。 禁止しても最後に「総合的にはAが」と付くことがある。そのときは「結論の行を削除して、もう一度出力してください」と返す。書き直させるより早い。
この3つの型の、続けにくい点
型は覚えれば使えるが、毎回どの型かを選ぶ判断が面倒になる。とくに疲れているときは、型を選ぶ前に「教えて」と打ってしまう。
もう1つは、工程3で残した1行が散らばることである。1回ごとには意味があるのに、3週間後にどこに書いたか分からなくなる。振り返りに使うつもりだった1行が、探せないまま消える。この2点は質問の技術の問題ではなく、置き場所と頻度の問題である。書き方だけを磨いても解消しにくい。
LifeOSがこの部分をどう扱うか
LifeOSは、AIとの対話を1回ごとの検索ではなく、週単位の流れとして扱う。対話の中で出てきた言葉は同じ場所にたまり、週1回の振り返りのときにまとめて見返せる。型を毎回自分で選ばなくても、対話の側から質問が返ってくる形になっている。
質問の型を自分で管理し続けるのが面倒だと感じる場合は、3分の体験で対話の流れを試してみるとよい。合わなければ、この記事の3つの型だけを持ち帰っても実行できる。
AIを振り返りに使う全体像はAIジャーナリングとは、週次振り返りの手順としての使い方はChatGPTで週次振り返りをする手順、案を1つ持った状態で壊していく使い方はAIとの壁打ちのやり方で扱っている。
よくある質問
質問の型は毎回コピーして貼る必要がありますか?
貼らずに書ける場合は不要である。重要なのは文面ではなく、前提・制約・出力形式の3つが入っているかどうかで、自分の言葉で書いても同じ効果になる。ただし型2の「どちらがよいかは答えないでください」だけは、省くと結論が付いてくるため残すほうが安定する。
有料プランでないとこの3つの型は使えませんか?
3つとも無料で使える対話型AIで実行できる。型が効くのは出力の範囲を絞るからで、モデルの性能に依存する部分は小さい。長い会話を続けたい場合は上位プランのほうが扱いやすいが、この手順は1〜3往復で終わる想定である。
ChatGPT以外のAIでも同じ型が使えますか?
対話形式のAIであれば、同じ考え方で使えることが多い。ただし出力形式の指示への従いやすさはサービスごとに差があるため、指示が無視される場合は条件の数を減らして試すとよい。
