一人でやる振り返りとは、自分が集めた材料を自分だけで判定する作業のことである。 材料を出す人と判定する人が同じなので、判定の物差しを毎回その場で作ることになる。ここが、他人と一緒にやる振り返りと最も違う点である。
物差しがその場で決まると、体調や直近の出来事によって長さが変わる。同じ1週間を振り返っても、ある週は「まあできた」で終わり、別の週は「何もできていない」になる。どちらが正しいかは、後から見ても決められない。
この記事で扱うのは、判定する前に物差しを外へ出しておく手順である。所要は準備10分と、毎回の振り返りに足す2分。判定を正確にする方法ではなく、判定のブレ幅を自分で見えるようにするための手順として書く。
同じ1週間が、日によって「できた週」にも「だめな週」にもなる
日曜の夜、1週間を振り返る。手帳を開いて、月曜から順に思い出す。
火曜に予定していた作業が金曜にずれたことを思い出し、「今週も後ろ倒しにした」と書く。次の週も同じようにずれたが、その日はたまたま気分がよく、「ずれたが週内には終わった」と書く。3週目、疲れていて、「毎週ずらしている。改善していない」と書く。
3回とも、起きたことはほぼ同じである。違っているのは、その日の自分が使った言葉だけだ。3週分を並べて読むと、記録が週の内容ではなく書いた日の気分を記録していることが分かる。ここから「自分の振り返りは当てにならない」と結論して、やめてしまうことがある。
問題は判定の甘さ辛さではなく、物差しが毎回変わること
一人の振り返りで起きるのは、甘すぎるか厳しすぎるかのどちらか一方ではない。同じ人の中で両方が起きる。だから「もっと厳しく見よう」も「自分を責めるのをやめよう」も、どちらも物差しを固定しない点では同じで、次の週にはまた別の方向へ振れる。
他人と一緒にやる振り返りでは、相手の質問が物差しの代わりになっている。「それはいつの話ですか」「それで、次はどうしますか」と聞かれると、答えが事実と次の行動に寄る。一人のときはこの質問が来ないので、材料集めと判定が同時に進み、混ざる。
混ざった状態の典型が、事実の欄に評価語が入っている記録である。「月曜は集中できなかった」は、一見すると事実に見えるが、判定が済んだ後の言葉である。この1行からは、月曜に何が起きたのかを後で復元できない。
やることは1つで、材料を集める工程と、判定する工程を、時間で分ける。そのうえで判定に使う言葉をあらかじめ決めておく。物差しを紙の上に置いてしまえば、その週の気分は判定の前後ではなく、判定語の選び方だけに現れる。
手順(準備10分+毎回2分)
1. 判定に使う言葉を2つだけ決める(準備5分)
紙かメモアプリの先頭に、判定語を2つ書く。良い・悪い、できた・できなかったは使わない。この4語は程度が無限にあり、その日の気分で幅が変わるためである。
代わりに、次の行動を指す2語を使う。例を挙げる。
- 「同じ手でいく」/「手を変える」
- 「続ける」/「いったん外す」
- 「次も予定に置く」/「予定から外す」
どれを選んでもよいが、2つに絞り、以後変えない。2語しかないので、判定は「どちらか」になり、程度の表現が入り込む余地が小さくなる。
2. 材料の書き方を1行で決めておく(準備5分)
判定語の下に、材料の書式を書く。「いつ・何をした・どうなった」の3点だけで1行、と決める。感想、理由、反省は書かない。
例として、書式に合う行と合わない行を挙げる。
- 合う: 「火曜21時、資料の下書きに着手。30分で1ページ」
- 合わない: 「火曜は集中できず、あまり進まなかった」
この2つは同じ夜のことを書いているかもしれないが、後から使えるのは前者だけである。
3. 材料を5行集める(毎回1分)
振り返りを始めたら、まず書式どおりに5行書く。この段階では判定語を一切書かない。手帳やカレンダー、チャットの送信履歴など、日付と時刻が残っているものを見ながら埋めると早い。
5行という数には根拠を置いていない。少なすぎると1件の印象に引っ張られ、多すぎると時間が伸びて続かなくなるための、作業上の目安である。3行でも7行でもよいが、毎回同じ数にすることだけは守る。数が週によって変わると、判定の材料の量が変わってしまう。
4. 5行のそれぞれに判定語を1つ付ける(毎回1分)
5行を上から順に読み、手順1で決めた2語のどちらかを書く。迷ったら、「来週も同じ場面が来たら、同じやり方をするか」だけを考えて決める。
このとき、理由を書かない。理由を書き始めると、そこに気分が入って長さが変わる。判定語だけを付けて次の行へ進む。
5. 判定語の偏りを見る(毎回30秒)
5行の判定語を数える。5行すべてが同じ語になった週は、材料が足りていない可能性を疑う。全部が「手を変える」なら、うまくいった作業が材料から落ちている。全部が「同じ手でいく」なら、予定どおりに進まなかった場面が落ちている。
この場合の対処は、判定をやり直すことではなく、材料を2行足すことである。落ちている側の場面を、記録を見ながら探して書き足し、その2行にも判定語を付ける。
6. 4週に1回、判定語だけを並べて読む(4週に1回3分)
月に1度、過去4週分の判定語だけを縦に並べる。本文は読まない。
見るのは、「手を変える」が続いているのに、材料の行がほぼ同じ内容で並んでいないかという1点である。同じ場面に4週続けて「手を変える」を付けていて、材料の中身が変わっていないなら、判定は毎週できているが手を変える作業が実行されていない、ということになる。ここは判定の問題ではないので、判定語を増やして解決しようとしない。
実際にやると、手順3で必ずつまずく
この手順で最初に詰まるのは、手順3の5行である。
書式を「いつ・何をした・どうなった」と決めていても、書き始めると2行目あたりで「バタバタしていた」「思ったより時間がかかった」といった言葉が混じる。混じっていること自体には気づきにくく、後から読み返すと評価語が入っている。
対処として効いたのは、書いている最中は判定語の2語を紙の上部に見える状態にしておき、材料の行を書き終わるまでその2語を見ない、という置き方だった。判定語が視界にあると、書きながら判定してしまう。紙なら上半分を折る、アプリなら判定語を別のメモに置く、といった物理的な分け方のほうが確実だった。
もう1つ、5行を「印象に残っている順」で書くと偏る。カレンダーを月曜から順に見て、目に入った順に書くほうが、うまくいった場面が落ちにくい。振り返りの順番については週1回の振り返りのやり方の全体ガイドでも扱っている。
なお、この手順で判定が正確になるわけではない。判定はどこまでいっても自分がしている。変わるのは、判定がどちらへ振れたかを後から数えられるようになる点だけである。振り返り自体の意味を疑っているなら、「振り返りは意味ない」と感じたときに見直す3つの点のほうが先に読む記事になる。振り返りが続かない形式の問題全般は振り返りが続かないのは意志の問題ではないにまとめている。
一人でやるか、誰かと話すかの分かれ目
この手順は、一人でやることを前提にしている。ただし、材料を集めても判定語が毎回同じ方向にしか出ない状態が何週も続くなら、それは判定の手順で埋められる範囲を超えていることがある。人に話す、書いたものを誰かに見せる、といった外側の材料を足すほうが早い場合もある。
どちらが良いという話ではなく、手順で扱える範囲には端があるということである。
LifeOSでの扱い
LifeOSは、AIとの対話で自分が大事にしていることを言葉にし、週1回の振り返りで少しずつ更新していくサービスである。この記事の手順でいえば、材料を集める工程と、判定の前に質問が入る工程が対話の形で用意されている。上の手順を紙でやる場合、判定語を見ないようにする工夫を自分でする必要があるが、対話では質問が来るまで判定を書く欄がない。
一方で、判定そのものは利用者がする。LifeOSは診断やカウンセリングを提供するサービスではなく、判定の正しさを保証するものでもない。無料でカード情報の登録なしに試せる(有料は月額1,500円・年額12,000円、いずれも税込)。
よくある質問
一人の振り返りでは、厳しく見るのと甘く見るのはどちらがよいですか
どちらがよいかは決められない。厳しく見たほうが次の手が出る場面もあれば、材料が少ないまま厳しく判定して手を変えすぎる場面もある。この記事の手順は、どちらに寄せるかではなく、その週にどちらへ寄ったかを後から数えられる形にすることを目的にしている。判定語を2語に固定し、5行の偏りを見るのは、そのためである。
判定語を2つではなく3つ以上にしてもよいですか
増やすこと自体はできるが、3つ目に「保留」に相当する語を置くと、迷った行がそこへ集まりやすい。2語のうちどちらかを選ぶ形にしておくと、「来週も同じやり方をするか」という1つの問いで決められる。どうしても決められない行が出たら、判定語を増やすのではなく、その行の材料が足りていないと考えて、時刻や結果を書き足すほうが手が少ない。
材料を5行書く時間もない週はどうすればよいですか
行数を3行に減らし、以後も3行で固定する方法がある。重要なのは行数の多さではなく、毎回同じ行数であることである。ある週は1行、別の週は10行という形にすると、判定の前提が週ごとに変わってしまい、判定語の偏りを見る意味がなくなる。減らす場合は、一度決めたら数週間は変えずに続けるほうが、後から並べたときに比べられる。
