ジャーナリングの効果を自分で確かめるとは、書いた週と書かなかった週を並べ、あらかじめ決めた2つの観察項目がどう違ったかを見る作業である。 世の中の研究が示す平均的な傾向と、自分にとって続ける価値があるかは別の問題で、後者は自分の手元でしか分からない。
この記事で扱うのは、観察項目を2つだけ決め、書く週と書かない週を交互に置いて14日で比べる手順である。必要なのは紙1枚かメモアプリ1つと、1日30秒の記録だけである。医学的な効果や心の状態を判定する手順ではなく、この先も続けるかどうかを自分で決めるための材料を作る手順である。
「なんとなく効いている気がする」で3週目に止まる
ジャーナリングを2週間ほど続けたところで、ふと「これは効いているのか」と考える。書いた直後は少し楽になっている気がするが、翌日には忘れている。検索すると効果の説明はたくさん出てくるが、どれも自分の話ではない。確かめようがないまま、忙しい週に1回飛ばす。飛ばした週も特に困らなかったので、次の週も飛ばす。こうして3週目で止まる人もいる。やめた理由は「効かなかったから」ではなく、「効いているか分からないままだったから」に近い。
分からないのは、比べる相手がないから
効果が分からない原因は、感じ方の鈍さではなく、比較の形が作られていないことにある。具体的には3つ欠けている。
1つ目は、書かない期間がないことである。毎日書いていると、書いた自分しか観測できない。差を見るには、書かない側の観測が必要になる。
2つ目は、見る項目が決まっていないことである。「気分」「スッキリ感」のような言葉は、その日の天気や睡眠でも動く。何を見るかを先に決めていないと、後から都合のよい変化を探してしまう。
3つ目は、記録が後付けになることである。2週間経ってから「先週はどうだったか」を思い出すと、書いた週のほうを良く思い出す。書いたという事実が記憶の色を変えるためである。
したがって手を入れるのは、意識ではなく形式のほうである。書かない週を意図的に作り、観察項目を2つに限定し、毎日その日のうちに30秒で記録する。 これだけで比較の形が成立する。書き方そのものを整えたい場合はジャーナリングが続かない理由を仕組みで解決する方法が先に役立つ。振り返り全体の形の話は振り返りが続かないのは意志の問題ではない。形式から見直す全体ガイドにまとめてある。
手順(準備15分+1日30秒×14日+判定20分)
1. 観察項目を2つだけ決める(10分)
次の条件に合うものを2つ選ぶ。
- その日の終わりに、考えずに数字か○×で答えられる
- ジャーナリングと関係がありそうだが、書くこと自体ではない
例を挙げる。どれかを選んでもよいし、自分で作ってもよい。
- 夜、寝る前に同じ心配事を思い返した回数(0・1・2回以上の3段階)
- その日、決めきれずに翌日へ持ち越した用件の数
- 仕事の合間に無目的にスマートフォンを開いた回数(だいたいで可)
- 朝、起きてから最初の作業に取りかかるまでの時間(5分単位)
気分の点数(10点満点など)は選ばないほうがよい。 日々の上下が大きく、14日では差が埋もれる。数えられる出来事のほうが差が出る。2つに絞るのは、3つ以上にすると記録が30秒で終わらず、記録漏れで比較そのものができなくなるからである。
2. 14日を2つの週に割り、どちらを書く週にするか決める(3分)
紙に14日ぶんの日付を縦に書き、1〜7日目と8〜14日目に線を引く。そしてどちらか一方を「書く週」、もう一方を「書かない週」にする。
順番は、直前の状況で決める。ここ数日書いていた人は、最初の7日を書く週にする。しばらく書いていない人は、最初の7日を書かない週にする。直前と同じ状態から始めるほうが、1日目の値が普段の値に近くなる。
書く週の内容は、いま自分がやっている形のままでよい。この手順は書き方を変える手順ではないので、問いも分量もいつもと同じにする。
3. 記録欄を作る(2分)
14日ぶんの日付の右に、観察項目2つの欄と、書いたかどうかの欄(○×)を作る。合計3列である。紙でもメモアプリでもよいが、ジャーナリングを書く場所とは別にする。同じ場所だと、書かない週にその場所を開かなくなり、記録が抜ける。
4. 毎日、寝る前に30秒で記録する(1日30秒×14日)
その日の分だけ埋める。過去の日を埋め直さない。忘れた日は空欄のまま次に進む。
書かない週にジャーナリングをしたくなったら、してよい。ただし○を付ける。予定どおりに進めることより、実際にどうだったかを正しく残すことのほうが、この手順では大事である。
5. 14日目に判定する(20分)
まず、各週で記録が5日以上埋まっているかを確認する。どちらかの週が4日以下なら、この2週間では判定しない(理由は次の節に書いた)。
埋まっていれば、週ごとに2つの項目の合計と平均を出す。そして紙の下に、次の3行を書く。
項目1: 書く週〈平均〉/書かない週〈平均〉。差は〈数値〉。
項目2: 書く週〈平均〉/書かない週〈平均〉。差は〈数値〉。
この2週間で、他に変わったこと: 〈1つだけ〉
3行目が判定の要である。連休、出張、繁忙期、体調、家族の予定など、週をまたいで変わったことを1つ書く。それが差の大きさと同じくらいの影響を持ちそうなら、この結果は使えないという判断になる。
差が出た場合も、原因がジャーナリングだと確定はしない。確定しないまま「もう2週間続ける」か「形を変える」か「やめる」のどれかを選べれば、この手順の役目は済んでいる。
実際にやると、ここでつまずく
つまずき1: 書かない週の3日目あたりで、記録だけ止まる。 書かない週は、ジャーナリングという行動がないので、記録するきっかけも消える。これがいちばん多い失敗である。対策は、記録欄を歯磨きや充電など毎日必ずやる行動の場所に置くことである。スマートフォンの充電器の横に紙を置く、という程度で足りる。
つまずき2: 書かない週のほうが数値が良く出て、結論に困る。 これは起こる。書く週に別の予定が重なっていれば普通に起こる。この場合の扱いは、手順5の3行目に書いた「他に変わったこと」を見て、条件が違うなら判定を保留し、順番を入れ替えてもう14日やることである。書かない週を先にして再試行すると、順番の影響を打ち消せる。
つまずき3: 差が小さすぎて読めない。 「気分」「集中」のような抽象的な項目を選んだ場合はほぼこうなる。手順1の条件(数えられる出来事)に合う項目へ入れ替えて、もう14日やる。入れ替えると前回の結果とは比べられなくなるので、前の記録は残しつつ別の紙で始める。
この手順の続けにくい点と、LifeOSがそれをどう扱うか
弱点は2つある。
1つ目は、14日では条件が揃わないことが多いことである。生活は週単位で変わるので、2つの週が同じ条件になることはほとんどない。回数を増やせば揃ってくるが、4週・6週と延ばすほど、記録のほうが先に途切れる。
2つ目は、この手順自体が書く動機を薄くすることである。効果を測るために書くと、書く時間が観察の対象になり、書くこと自体に集中しにくくなる。判定が終わったら、記録欄は畳んだほうがよい。
LifeOSは、前者に関わる部分を記録の頻度の側から扱っている。週1回の振り返りを前提にしているため、比較の単位が最初から週になっており、毎日の記録が途切れても週の分だけは残る。上の手順で言えば、記録欄を別に作らなくても、週ごとの記述が時系列に並ぶ状態になる。
ただし、観察項目を決めるのは書く側の仕事で、差が何によるものかの判定も読む側の仕事である。LifeOSは効果を測る道具ではなく、週1回の記録を同じ形で残すための道具である。3分で1回ぶんを試せるので、上の14日が終わったあと、続ける形の候補として見てもよい。
始めたばかりで形がまだ決まっていない場合は、比較より先にジャーナリングの始め方。最初の2週間だけの簡略版のほうが順番として先になる。
よくある質問
一般に言われているジャーナリングの効果は、この手順で確認できますか?
できない。この手順は、自分の手元の2週間で、決めた2項目に差が出たかどうかだけを見るものである。対象が1人で、期間が短く、条件も揃わないため、一般的な効果の有無を判定する設計にはなっていない。この記事も、ジャーナリングに何らかの効果があることを保証していない。目的は、自分が続けるかどうかを決める材料を1つ作ることである。
書かない週を作るのが不安です。習慣が切れませんか?
7日間空けると、そこで止まる場合はある。それが心配な場合は、書く週と書かない週を1日ずつ交互にする形(奇数日だけ書く)でも比較はできる。ただし前日の影響が残るため、週単位より差が小さく出やすい。どちらの形でも、記録欄の○×を正しく付けておけば、後から見直せる。
記録が途切れた場合、途切れた日を思い出して埋めてもよいですか?
やらないほうがよい。後から思い出して埋めた値は、書いた週のほうを良く見せる方向に寄りやすいためである。空欄のまま進め、手順5の「各週5日以上」を満たさなければ、その2週間は判定に使わず、次の14日で取り直す。なお、気分や体調の不調が続いていると感じる場合は、この手順で判断せず、医療機関などに相談してほしい。この記事は診断やカウンセリングを提供するものではない。
