得意・苦手と、好き・嫌いは、別の軸である。得意・苦手は仕上がりまでにかかった手直しの量で決まり、好き・嫌いは取りかかるまでの遅れで決まる。 同じ作業について両方を1つの感覚で答えようとすると、片方がもう片方に引っ張られて、毎回同じ答えになりやすい。
この記事では、今週やった作業12件に、2種類の数字を別々に入れて4つの箱に分ける手順を書く。所要は35分、出力物は4つの箱に振り分けられた12行と、来週の一手1つである。週1回まわす前提で書いてある。
なお、週の記録から強みの候補を1つ取り出す工程は自分の強みの見つけ方にある。この記事は強みを1つに絞らない。苦手の側と好き嫌いの側を含めて、作業を分類しきるところだけを扱う。
「得意なことは?」に答えるたび、去年と同じ答えになる
面談で「得意なことは何ですか」と聞かれる。少し考えて、去年と同じことを答える。嘘ではないが、根拠を聞かれると困る。
同じ面談で「苦手は?」と聞かれると、今度は好きではない作業の名前が出てくる。数字を扱う仕事、電話、細かい確認。ただ、そのうちいくつかは、やってみると手直しがほとんど出ていない。つまり苦手ではない。嫌いなだけである。
逆に、好きでよく引き受けている作業のほうが、毎回やり直しが出ていることもある。好きだから得意だと思っていた、という取り違えは起きることがある。
混ざるのは、1つの感覚で2つを同時に答えているから
「得意ですか?」と聞かれて頭に浮かぶのは、その作業をしているときの気分であることが多い。気分は好き嫌いの側の情報なので、そのまま答えると得意の欄に好き嫌いが入る。
分けるには、測る材料を最初から別にするしかない。この記事では次の2つを使う。
- 得意・苦手 → やり直した回数 + 人に聞いた回数(作業のあとに残る、外から見える数字)
- 好き・嫌い → 着手までの遅れ(頼まれてから実際に手を付けるまでの時間)
どちらも記憶ではなく、記録から拾える数字である。気分を経由しないので、週ごとに答えが揺れにくい。
手順(35分・週1回)
用意するのは、今週の予定表とメッセージの送信履歴、紙1枚である。
1. 今週やった作業を12件書き出す(10分)
予定表と送信履歴を上からなぞって拾う。仕事以外も入れてよい。 12件に届かなければ届いた数で進める。
作業名は動作で書く。「A社の件」ではなく「A社向けの見積を作る」。動作で書かないと、手順2の数字が入らない。
2. 各件に「やり直しの回数」と「人に聞いた回数」を入れる(10分)
1件ずつ、2つの数字を書く。
- やり直しの回数: 提出・完了したあとに直した回数(0、1、2……)
- 人に聞いた回数: 進める途中で誰かに確認した回数
合計が0〜1なら得意側、2以上なら苦手側とする。境目は暫定でよい。数えることのほうに意味がある。
見積を作る やり直し0/質問0 → 合計0 → 得意側
議事録をまとめる やり直し2/質問1 → 合計3 → 苦手側
思い出せない件は、数字を入れずに飛ばす。推測で埋めない。
3. 各件に「着手までの遅れ」を3段階で入れる(5分)
頼まれた(または決めた)時点から、実際に手を付けるまでの遅れを3段階で入れる。
- すぐ(その日のうち)→ 好き側
- 半日〜翌日 → 中間。好き側に入れる
- 翌日以降、または催促されてから → 嫌い側
締切が理由で早く着手した件は、遅れの判定から外す。締切の力で動いたぶんは、好き嫌いの情報にならない。
4. 2×2の箱に置く(5分)
紙に4つの箱を書き、12件を置く。
好き 嫌い
得意 ① ②
苦手 ③ ④
置くだけでよい。この時点で、②と③に入った件が、これまで感覚で答えていたときに混ざっていた部分である。
5. 箱ごとに、決め打ちの扱いを当てる(5分)
箱ごとの扱いは先に決めておく。その場で考えない。
- ①得意×好き: 来週も自分でやる。1件だけ、似た作業を増やす
- ②得意×嫌い: 手順を3行に書き出して、人に渡せる形にする。ここは自分の負担を減らせる余地が一番大きい箱である
- ③苦手×好き: 続けてよい。ただし締切のある仕事には入れず、練習の枠に置く
- ④苦手×嫌い: 減らす、または頼む。今週は1件だけ選ぶ
④で複数選ばない。1件に絞ると翌週に結果が見える。
6. ②の1件に、来週の一手を書く(数字は翌週も取る)
②の箱から1件選び、来週の一手を1行書く。書いたら、手順1〜3の数字は来週も同じやり方で取る。1週ぶんでは、その作業が本当に得意なのか、その週がたまたま簡単だっただけなのかが分からない。 同じ作業が2週以上出てから判定する、と決めておく。
実際にやると、ここでつまずく
手順2で、数字を入れながら「これは得意なはず」と補正してしまう。 補正すると、結局は感覚の答えに戻る。数字だけ入れて、判定は手順4でまとめて行うと引っ張られにくい。
1回で終わった作業を、得意だと読んでしまう。 そもそも簡単な作業は、誰がやってもやり直しが出ない。同じ種類の作業が2回以上出た行だけを信用する、と決めておくとよい。これが手順6を置いている理由である。
「人に聞いた回数」を、聞くのが悪いことのように数えてしまう。 ここでは良し悪しを測っていない。聞いて進めたほうが早い作業もある。数えているのは、その作業を1人で完了まで持っていけたかという外形だけである。
②(得意×嫌い)の扱いを、根性で続けるほうへ寄せてしまう。 ②は続けられてしまう箱なので、放っておくと量が増える。手順を書き出しておくと、量が増えたときに渡す選択肢が残る。
苦手の箱に多く入って、気分が下がる。 12件のうち半分が苦手側に入るのは珍しくない。1週ぶんの数字であり、作業の難易度がそろっていないためでもある。この箱分けは能力の評価ではなく、来週の配分を決めるための材料である。
この手順の限界
1週間に発生しない作業は、この表に出てこない。 年に数回の作業や、長期の作業は、着手までの遅れも手直しの回数も1週では測れない。分かるのは、繰り返し来る作業の範囲だけである。
もう1つ、この数字は他人との比較ではない。自分の中で、どの作業に手直しが集中しているかを見ているだけである。「人より得意」の判定はこの手順では出せない。
そして、週1回まわす前提で書いたが、先週の数字を覚えていないと2週目以降の比較ができない。紙が増えるだけで、同じ作業が何週続けて苦手側に入っているかが見えなくなる。前提の持ち越しは、1人で続けるときに落ちやすい部分である。
LifeOSはこの部分をどう扱うか
LifeOSは、週1回の振り返りをAIとの対話で進めるサービスである。この4つの箱を作る機能はないが、週ごとの内容が1か所に積み上がり、次回の対話がその前提から始まる点が、いまの「先週の数字が持ち越せない」という弱いところと重なる。先週どの作業が②や④に入っていたかを自分で説明し直さなくてよいので、2週以上またぐ判定がしやすくなることがある。
AIが返すのは断定ではなく仮説で、採るか採らないかは本人が決める。本人が確認したものだけが、次回以降の前提として残る。得意・苦手を判定してくれるサービスではないし、適性検査や診断も行わない。分類そのものより、同じ作業が何週続いているかを見たい場合に使い道があることがある。登録なしで3分ほど試せる。
①の箱から強みの候補を1つ取り出す手順は自分の強みの見つけ方に、分けた結果を自分の判断基準として言葉にしていく手順は自分の価値観の見つけ方に、書いて自己理解を進める形式の話は自己理解を深める方法にまとめてある。
FAQ
得意と苦手の境目を「合計2以上」にする根拠は何ですか?
厳密な根拠はない。1回の確認は作業の性質でも起きるが、2回以上は自分の側の理由が混じりやすい、という目安で置いている。自分のデータが3〜4週たまったら、苦手側が半分を超えないあたりに境目を動かしてよい。数字の絶対値より、週をまたいで同じ基準で数えることのほうが効く。
「得意だが嫌い」の作業は、やめてしまってよいですか?
この手順ではやめる判断まではしない。手順5のとおり、まずは手順を3行に書き出して渡せる形にするところまでを扱う。渡す相手がいない場合でも、書き出しておくと自分の所要時間が下がることがある。
苦手ばかりで、自分には何もないように感じるときはどうすればいいですか?
1週ぶんの12件では、そう見えることがある。作業の難易度がそろっていないため、苦手側に偏ることは構造上よく起きる。2週以上続けて同じ作業が苦手側に入るかを見てから判断するほうが、材料としては確かになる。なお、この記事もLifeOSも、心身の状態を診断・治療・カウンセリングするものではない。自分を責める気持ちが続く場合は、作業を進めるより先に、話せる相手や医療機関・公的な相談窓口を頼るほうが適していることがある。
