やりたくないことリストとは、嫌いなものを思いつくままに並べた紙のことではない。実際に繰り返し起きた動作だけを残し、それぞれに「いつ起きるか」と「起きたときに代わりに取る一手」を書き足した、5〜8行の一覧のことである。 条件と一手が付いていない行は、読んでも次の判断が変わらないので、リストとしては機能しにくい。
この記事では、直近1か月の予定表から材料を取り、運用できる形のリストを1枚作る手順を書く。所要は40分、出力物は5〜8行である。
なお、やりたいことを探す前段として「避けたい条件」を作る工程はやりたいことが分からないときに、先に整理する2つのことに、断った判断から価値観の候補語を作る工程は大事にしたいことの見つけ方にある。この記事は語を作らない。やりたくないこと自体を、来週から使える一覧にする工程だけを扱う。
30個書いたのに、翌週の予定は先月と同じだった
ノートの見開きに「やりたくないこと」を書き出した。長い会議、朝一番の電話、返信の催促、人前での発表、締切の重なる週、意味の分からない資料づくり。勢いがついて30個ほど並んだ。書いている間は、頭の中が片づいていく感じがある。
翌週。予定表を開くと、先月とほとんど同じ並びになっている。リストのほうは、そのページを開くこと自体がない。
もう一度書き直そうかと思うが、書き直しても中身はだいたい同じになる、ということに気づくことがある。
使われないのは、意志ではなく、行が判断の形をしていないから
「長い会議」はリストの行としては短すぎる。長い会議は、来週も再来週も来る。行を読んだ瞬間に「では今どうするか」が決まらないので、読む理由が生まれない。
もう1つ、30個のうち多くは1回しか起きていない出来事である。あの日の打ち合わせが長引いた、あの週に締切が重なった。1回きりの出来事は来週の判断材料にならないが、書いた直後は印象が強いので上位に並びやすい。
そして「やりたくない」は感情の言葉なので、体調や相手によって強さが変わる。強さで並べると、並び順が週ごとに動く。回数で並べると動かない。 リストが使えるかどうかは、感情の言葉を回数と条件に置き換えられているかで、かなりの部分が決まる。
手順(40分・1回だけ)
用意するのは、直近1か月の予定表(カレンダーアプリでも手帳でもよい)と、紙1枚である。
1. 予定表から「終わったあとに疲れが残った予定」を20件抜く(10分)
思い出して書かない。予定表を上からなぞって拾う。 1か月ぶんを見て、終わった直後に疲れが残った予定に印を付け、20件になったら止める。20件に届かなければ、届いた数でよい。
このとき、良い悪いの判定はしない。楽しかったが疲れた予定も入れてよい。選別は手順3で行う。
2. 予定ではなく、その中の「動作」まで1段細かくする(10分)
20件それぞれについて、予定名ではなく、その予定の中のどの動作が疲れたかを1行で書き直す。
「◯◯定例(90分)」 → 前半の進捗報告を聞き続ける
「A社打ち合わせ」 → その場で数字を暗算して答える
「資料作成」 → 完成形が決まっていない状態で作り始める
予定名のままだと、避けようがない。動作まで下ろすと、避けられる部分と避けられない部分が分かれる。ここが40分のうち一番効く工程である。
3. 同じ動作が2回以上出た行だけ残す(5分)
書き直した20行を見比べ、同じ動作が2回以上出ているものに印を付ける。1回しか出ていない行は、いったん消す。
消す基準は「重要でないから」ではなく「再発していないから」である。ここで20行が6〜10行まで落ちることが多い。
4. 残った行を「避けられる/避けられない」で2列に分ける(5分)
残った行を、自分の判断だけで避けられるものと、相手や立場の都合で避けられないものに分ける。
避けられない列は消さない。消す代わりに「減らし方」を1行足す。 進捗報告を聞き続けるのを避けられないなら、「前半は音声だけ聞いて手元の作業を進める」と書く。ゼロにできない行でも、量を変える一手は書けることが多い。
5. 各行を「〜のときは、〜にする」の形に書き換える(5分)
ここでリストの体裁を変える。「〜をやりたくない」ではなく、発生条件と代替の一手をつないだ1文にする。
完成形が決まっていない資料を頼まれたときは、着手前に「どこまで書けば終わりか」を1行で確認する
定例の前半が報告だけのときは、音声だけ聞いて手元の1件を進める
主語は自分にする。「相手が◯◯しないようにする」と書くと、自分の側で実行できないので、翌週に動かない。
6. 日付を入れて、月1回だけ開くと決める(5分)
先頭に作成日を書き、次に開く日を1つだけ決める。毎日見る必要はない。このリストは判断の場面で思い出せればよく、思い出せなかった行は次の月に条件の書き方を直せばよい。
実際にやると、ここでつまずく
手順1で、予定表を見ずに思い出しで書いてしまう。 思い出しで出るのは印象の強い1〜2件だけで、再発している地味な動作が落ちる。この手順で拾いたいのは、むしろ後者である。
手順2で、動作ではなく人の名前が出てくる。 「Aさんとのやりとり」は動作ではない。Aさんとのやりとりの、どの部分か(返信を待つ時間か、口頭で決まったことを後から文字に起こす作業か)まで下ろす。人の名前で書いた行は、避けようとすると関係の話になり、手が止まる。
手順3で、2回出ていないが強く嫌な行を残したくなる。 残してもよいが、その場合は行の末尾に「1回」と書いておく。翌月にもう1回出たら正式な行にする、と決めておくと、リストが感情で膨らまなくなる。
手順5で、代替の一手が思いつかない行が出る。 空欄のままにしておいてよい。一手が書けない行が3つ以上あるなら、それは自分1人で扱う範囲を超えている可能性があるので、誰かに相談する対象として別枠に移す。
この手順の限界
このリストは、予定表に残っている範囲しか写せない。予定表に載らない作業(急な依頼、割り込み、家のこと)が多い場合、手順1で材料がほとんど取れないことがある。その場合は1か月ではなく、これから2週間ぶんを記録してから始めるほうが早い。
もう1つ、やりたくないことが減っても、その空いた時間に何を入れるかは決まらない。このリストは引き算の道具で、足し算はしない。 やりたいことの側は別の工程が必要になる。
そして、条件と一手を書いても、その場面が来たときに思い出せるとは限らない。月1回開くだけでは、実際に一手を取れたかどうかの記録は残らない。取れた回数が分からないと、条件の書き方が悪いのか、場面がそもそも来なかったのかを切り分けられない。ここが1人で運用するときに空きやすい部分である。
LifeOSはこの部分をどう扱うか
LifeOSは、週1回の振り返りをAIとの対話で進めるサービスである。やりたくないことリストを管理する機能はないが、週ごとの内容が1か所に積み上がり、次回の対話がその前提から始まる点が、いま書いた「取れた回数が分からない」という弱いところと重なる。先週こう書いた、という前提を人間の側で持ち出さなくてよいので、同じ動作が何週続いているかが見えやすくなることがある。
AIが返すのは断定ではなく仮説で、採るか採らないかは本人が決める。本人が確認したものだけが、次回以降の前提として残る。やりたくないことを自動で検出してくれるサービスではないし、診断や適性の判定もしない。書く量を増やさずに、月単位の繰り返しを見たい場合に使い道があることがある。登録なしで3分ほど試せる。
リストの行から自分の判断基準の側を言葉にしていく手順は自分の価値観の見つけ方に、断った判断から候補語を作る手順は大事にしたいことの見つけ方にまとめてある。
FAQ
やりたくないことリストは何個くらいが適切ですか?
この手順では5〜8行に落ちることが多い。数の正解はないが、10行を超えると開いたときに読み切れず、結局使わない紙になりやすい。多く出た場合は、手順3の「2回以上」を「3回以上」に上げて絞るとよい。
やりたくないことを書くと、後ろ向きな気分になりませんか?
そう感じる場合は、手順2で止めて手順3以降を別の日に回してよい。この手順が扱うのは感情の整理ではなく、予定表に残った動作の集計である。気分の面が気になるときは、手順5の「代替の一手」の側から書き始めると、引き算ではなく置き換えの作業として進むことがある。
ほとんどの行が「避けられない」に入ってしまうときは、どうすればいいですか?
避けられない列が多いこと自体は珍しくない。その場合、手順4の「減らし方」を1行だけ書くところに時間を使うほうが、リスト全体を作り直すより効果が見えやすい。なお、この記事もLifeOSも、心身の状態を診断・治療・カウンセリングするものではない。避けられない状況が続いてつらさが残る場合は、リストを作るより先に、話せる相手や医療機関・公的な相談窓口を頼るほうが適していることがある。
