好きなこととは、強い感情がわく対象のことではなく、誰にも頼まれていないのに何度も戻ってしまった対象のことである。 つまり判定材料は気持ちの強さではなく、再訪の回数である。この記事では、2週間の生活からその回数を実測し、候補を1〜2個まで絞るところまでの手順を書く。初日30分、以降は1日1分の記録、最終日に40分である。
なお、この記事が扱うのは「今すでに手元にある行動から拾う」工程だけである。将来やることを決めたい場合は目的が違うので、やりたいことが分からないときに、先に整理する2つのことのほうが近い。仕事で使える能力として取り出したい場合は自分の強みの見つけ方を見てほしい。ここでは、役に立つかどうかも、続けるかどうかも判定しない。
休みの日に何をしたいか、自分でも分からない
金曜の夜に、明日は久しぶりに何も予定が無いと気づく。そこまではいい。次に「じゃあ何をしようか」と考えると、何も浮かばない。
浮かばないので、とりあえず動画を見る。見終わって、別に見たかったわけではなかったな、と思う。子どもの頃は放っておいても何かに熱中していたのに、今は放っておかれると何もしない。 この差を、情熱が枯れたと解釈している人もいる。
一方で、「好きなことを見つけよう」と検索して出てくる方法の多くは、子ども時代を思い出す、ワクワクしたことを書く、といった記憶に頼るものである。記憶が出てくる人には効くが、出てこない人には次の一手が無い。
見つからないのは、判定の基準を感情に置いているから
大人になると、行動の大半に理由が付く。仕事だから、家族のためだから、健康のためだから。理由の付いた行動は、好き嫌いの判定材料になりにくい。自分が選んだのか、必要だから選ばされたのかが混ざっているためである。
さらに、判定の基準を「ワクワクするか」に置くと、実測できない。感情の強さは、その日の睡眠時間や仕事の忙しさで簡単に上下する。基準が揺れる限り、どれだけ自分に問いかけても答えは安定しない。
そこで、基準を感情から再訪の回数に置き換える。頼まれてもいないのに、時間があると戻ってしまう先。戻る行為は記録できるので、感情と違って後から数えられる。以下の手順は、この数え方だけでできている。
手順(2週間)
1. 記録の枠を1つ作る(初日30分)
紙でもメモアプリでもよい。1日1行、次の3つだけを書く枠を作る。
- 日付
- 誰にも頼まれずに、5分以上使ったこと
- それをやめた理由(時間切れ/飽きた/中断された/満足した)
ここで重要なのは2つ目の条件である。仕事、家事、育児、依頼された用事は、どれだけ時間を使っていても書かない。書くのは、やらなくても誰も困らなかったのに使った時間だけ。 5分という下限は、意図してこのくらい低くしてある。30分や1時間にすると、大人の生活ではほとんど埋まらない。
初日の30分では、枠を作ったあとに直近3日分を思い出して書き込んでおく。書けない日は空欄でよい。
2. 14日間、1日1行だけ書く(1日1分)
夜、寝る前に1行書く。書くことが無い日は「なし」と書いて閉じる。
この2週間でやってはいけないのは、記録のために行動を足すことである。「好きなことを探しているから、今日は新しい趣味を試そう」と動くと、その行動は「頼まれていない」ではなく「探すために選んだ」になり、判定に使えなくなる。生活を変えずに、いつもどおりの2週間を記録する。
なお、寝る前に書けない人もいる。その場合は移動中でも昼休みでもよいが、時刻は固定する。 時刻が動くと、思い出す範囲が毎回変わって、記録の粒度が揃わない。
3. 再訪の回数で並べ替える(最終日15分)
14行を見て、同じ対象が2回以上出てきたものに印を付ける。
ここで対象をまとめる粒度に注意する。「動画を見た」は粗すぎる。「機械が分解される動画を見た」「昔の街並みの動画を見た」まで下げると、同じ対象かどうかが判定できる。逆に「9月3日に見た特定の動画」まで細かくすると、2回以上は永久に出ない。目安は、他人に一言で説明できる程度の粗さである。
印が付いたものを、回数の多い順に並べる。この時点では、内容の良し悪しも、意外性も考えない。回数だけで並べる。
4. 上位3つを1回ずつ、小さく再訪する(最終日25分+各30分)
上位3つについて、30分以内でもう一度できる形を1つずつ考えて、翌週に1回ずつ実行する。
機械が分解される動画 → 家の壊れた扇風機を1台だけ開けてみる
昔の街並みの動画 → 隣の駅まで歩いて、古い建物だけ写真に撮る
料理の手順を読む → いつも買う調味料を1つだけ替えて作る
やってみたあと、次の1問だけに答える。「またやるとしたら、今週中にやりたいか、来月でいいか。」
今週中と答えたものだけが残る。 3つとも来月でよければ、それは候補が間違っていたのではなく、2週間の記録が短かっただけなので、記録を2週間延長して手順3からやり直す。
5. 残った1〜2個を、日付とともに1行で書く(10分)
残ったものを、次の形で書く。
2026-09-13 時点で、頼まれなくても戻っているのは(対象)である。(14日中 ◯回)
回数を残すのがこの工程の目的である。回数が書いてあると、半年後に読み返したときに「当時の記録ではそうだった」と読める。断定にならず、更新もしやすい。
実際にやると、ここでつまずく
最初にやったとき、14行のうち9行が「なし」になった。書くことが無い日が続き、6日目で記録自体をやめかけた。
原因は、5分の下限を守っていなかったことだった。実際には5分未満の細切れの行動はあり、それを「こんなものは違う」と判断して書かずにいた。2回目にやったときは、書くかどうかを自分で判定せず、5分以上使ったものは内容を問わず全部書くことにした。すると14行中11行が埋まり、そのうち3つが2回以上に届いた。埋まらないのではなく、埋める前にふるいにかけていたのが理由だった。
もうひとつのつまずきは、手順3の粒度である。最初は「読書」とまとめて書いていたため、印は付くのに手順4で何を再訪すればいいのか決められなかった。「読書」を「工事現場の写真集」「事件の記録」まで下げてはじめて、30分でできる再訪の形が思いついた。まとめた語ではなく、その日に実際に見ていた対象の名前で書くほうが後の工程が進む。
この手順の続けにくい点と、LifeOSがそこをどう扱うか
この手順の弱点は、2週間という期間の短さがそのまま結果に出ることである。繁忙期の2週間で取れば「なし」が並ぶし、連休を含む2週間で取れば普段やらないことが上位に来る。回数という基準は感情より安定しているが、期間の偏りには弱い。 本来なら2〜3か月に1回、同じ記録を取り直して、毎回残るものを見るのが望ましい。
ただ、同じ記録をもう一度14日間取るのは、実際にはほとんどやらない。1回目は目的があるから続くが、2回目には「もう分かっているつもり」が入って、3日で止まる。ここが、この手順を自力でやるときのいちばん現実的な難所である。
LifeOSは、この「取り直し」の部分を週1回の対話の側に寄せている。毎週の振り返りの中で、その週に自分から時間を使った対象が記録として残っていくため、2週間の特別な記録期間を設けなくても材料が溜まっていく。月をまたいで繰り返し出てきた対象は候補としてまとまるので、期間の偏りを平均する役割も持つ。もっとも、出てくるのは候補であって、好きかどうかを決めるのは本人である。紙とカレンダーだけでも同じ判定はできるので、記録の置き場所を1つに寄せたい場合の選択肢としてLifeOSを3分だけ試してみてほしい。
見つけた対象を、自分の判断基準の言葉として整理したい場合は、自分の価値観の見つけ方。1人でできる手順の全体像が次の工程にあたる。
FAQ
好きなことが仕事にできそうにない場合も、意味がありますか?
この手順は、仕事になるかどうかを判定していない。判定しているのは、頼まれずに戻った回数だけである。仕事として成立するかは、需要や技能など別の条件で決まるため、同じ材料からは判断できない。仕事側から入りたい場合は、能力として取り出す強みの見つけ方のほうが目的に合う。この記事の出力は、休みの日の30分をどこに置くかを決めるための材料だと考えてほしい。
2週間で候補が1つも残らなかったときはどうしますか?
記録を2週間延長し、手順3からやり直す。それでも残らない場合、原因は候補側ではなく期間側にあることが多い。繁忙期や、家族の世話が重なった時期は、頼まれない時間そのものがほとんど発生しないため、記録に出ないのは自然である。無理に埋めずに、生活の密度が変わった時期に取り直すほうが材料になる。なお、以前は楽しめたことに時間を使えない状態が長く続いて気になる場合は、この手順を進めるより、話せる相手や専門の窓口に相談してほしい。この記事は診断や治療を目的としたものではない。
「なし」の日が多いのは、好きなことが無いということですか?
そうとは限らない。「なし」が多い週は、頼まれた予定で1日が埋まっていたか、5分未満の細切れしか無かったかのどちらかであることが多く、対象の有無ではなく時間の構造を示している。実際、手順を1回目にやったときも「なし」が過半だったが、ふるいを外して書き直すと埋まった。まず、書くかどうかを判定せずに全部書く形で1週間だけ取り直してみるとよい。
