1on1の前に5分でやる自分用の振り返り

2026-09-16 | blog

目次

1on1の準備とは、話す内容を用意することではなく、「相手にしか動かせない引っかかり」を1つ選び出す作業である。 進捗の報告は資料を見れば分かるので、その場で読み上げても時間が増えない。1on1という形式で価値が出るのは、相手の権限・情報・経験がないと動かないものを持ち込んだときだけである。この記事では、開始直前の5分で付箋1枚を作る手順を書く。使うのは自分のカレンダーと紙1枚で、会社のツールも上司の協力も要らない。

週の振り返り全体の型を先に知りたい場合は週1回の振り返りのやり方を読んでほしい。この記事が扱うのは、1on1という締め切りの直前だけに使う、5分の選び出しである。

「最近どう?」に「特に問題ないです」と答えて、15分が終わる

木曜の15時から1on1。席に着いて、上司が「最近どう?」と聞く。今週は特に事故も起きていないので、「順調です」「特に問題ないです」と答える。そこから雑談になり、15分が過ぎる。

席に戻って5分後に思い出す。先週から止まっている確認依頼のこと、来月の配分をどう相談するか決めかねていたこと。話すべきことが無かったわけではなく、あの場では出てこなかった。 こういう終わり方をしたことがある人もいる。

次の回は準備しようと思い、前日にメモを開く。書き始めると今度は業務報告になり、A案件は何%、B案件は何%と並んだところで「これは見れば分かる」と気づいて手が止まる。

出てこないのは記憶力の問題ではなく、探す順番の問題

「最近どう?」という問いは範囲が広すぎて、その場で材料を取りに行けない。人は広い問いを投げられると、直近2日ぶんの記憶から答えを作る。直近2日に大きな事故がなければ、答えは「特に問題ない」になる。内容が無いのではなく、探す範囲が勝手に2日に狭まっているだけである。

そしてもう1つ、準備の対象がずれている。報告を準備すると、相手も知っている情報を並べる時間になる。1on1の時間で価値が出るのは、こちら側だけでは決められないものだ。だから準備の作業は「書くこと」ではなく「選ぶこと」になる。

この2つを直すには、範囲を機械的に広げてから、選ぶ基準を1つだけ置けばよい。それが次の4手順である。

直前5分の手順

紙1枚(付箋でよい)とカレンダーを開いて始める。所要は合計5分で、1on1の直前にやる。前日にやると、当日までに1つ材料が増えて選び直しになる。

手順1. 2週間分を「古い順」に見て、引っかかりを3つ拾う(2分)

カレンダーを2週間前までさかのぼり、古い日から新しい日へ向かって予定を眺める。目に入った予定のうち、思い出したときに少し気が重くなるものを3つだけ拾って、紙に単語で書く。

重要度で選ばない。金額や納期の大きさで選ぶと、すでに報告済みの案件ばかりになる。古い順に見るのは、新しい順だと直近2日で枠が埋まってしまうからである。 3つ書けたら、残りは見ない。

手順2. 各行を「事実1行+困っている点1行」に落とす(1分30秒)

3つそれぞれを、2行に分けて書く。

事実: いつ・何が起きたか(評価語を入れない)
困り: 自分が何を判断できずにいるか(主語は自分)

「対応が遅い」「話が通っていない」のような評価は事実の行に入れない。困りの行の主語を相手にすると、1on1でそのまま読み上げられない文になる。主語を自分にして書けない項目は、この回では扱わないほうがよい。

手順3. 「自分だけで動かせるもの」に×を付ける(1分)

3つに対して、「これは自分の判断だけで前に進むか」と聞く。進むものには×を付ける。×が付いたものは1on1に持ち込まず、自分の作業リストへ戻す。

残ったものが1on1向きの材料である。3つとも×が付くこともある。その場合は「今回は共有だけで大丈夫です」と伝えてよく、それ自体が正しい結論である。 無理に議題を作ると、また報告の時間になる。

手順4. 残った1つに種別を1語書く(30秒)

残ったもののうち、いちばん気が重い1つを選び、その横に「報告・相談・依頼」のどれかを1語で書く。これは冒頭の一言を決めるためである。

例: 「1つ相談したいことがあります」から始める

種別を先に決めておくと、相手も聞き方を切り替えられる。依頼なのに相談の形で話すと、持ち帰りになって次回へ流れやすい。

出力物は、3行と印と種別1語が書かれた付箋1枚である。会話中はそれを見ながら話してよい。

実際にやると、ここでつまずく

筆者がこの手順を自分の1on1で使ったとき、最初につまずいたのは手順1だった。古い順に見始めると、引っかかりが3つで止まらず6つ出てくる。全部書き出すと、今度は選ぶのに5分では足りない。3つ書けた時点でカレンダーを閉じる、という打ち切りを先に決めておかないと、この手順は5分で終わらない。 4つ目以降が本当に重要なら、次の回まで残っている。

もう1つは手順2で、困りの行が「決めてもらえていない」という書き方になっていた回があった。これは主語が相手なので、そのまま読むと相手を責める文になる。書き直すと「自分としてはA案で進めたいが、決裁の範囲が分からないので止めている」になり、ここまで書けると手順4の種別も自動的に「依頼」に決まった。書き直す作業そのものが、何を頼みたいのかを決める作業になっている。

なお、この手順は1on1の会話がうまくいくことを保証するものではない。相手が話の形式(評価面談や進捗確認)を先に決めている回もある。その場合、準備した付箋は冒頭の1分か、終わり際の「最後に1つだけ」にしか使えない。それでも、持ち帰る側の材料としては残る。

毎週の振り返りをしている場合は、手順1が要らなくなる

週1回の振り返りを回している人は、手順1の材料がすでに手元にある。その週に書いた「引っかかった場面」から3つ選べば、カレンダーをさかのぼる2分は不要になる。自分用の記録の軽い書き方は自分用の週報の書き方に、材料を引き出す問いの並べ方は週次振り返りの質問リスト20にまとめてある。

LifeOSは、この「引っかかった場面を毎週1回だけ残しておく」部分を担当するサービスである。週1回5〜10分、決まった項目に短く入力すると、その週の出来事・感情・前進が整理されて返る。返るのはAIの仮説で、残すかどうかは本人が決める。1on1の準備そのものを代行するものではないが、直前に探す材料を減らすことはできる。

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FAQ

1on1で話すことが本当に何も無いときは、どうすればいいですか?

手順3で3つとも×が付いた回は、持ち込む議題が無い回である。その場合は、進捗の共有だけで終えてよい。無理に議題を作ると報告の読み上げになり、次回以降も「特にない」と言いにくくなる。なお、3回続けて×しか付かない場合は、カレンダーではなく別の材料(未着手のまま積んでいる依頼、断れずに引き受けた予定)から探すと引っかかりが出てくることがある。

上司への不満がある場合は、どう書けばいいですか?

手順2の「主語を自分にする」を通せる形まで書き直せた場合だけ、材料として使える。「説明が足りない」は相手への評価だが、「どこまで自分の裁量で決めてよいか分からないため止まっている」は自分の困りになる。書き直せない項目は、この手順では扱えない。人事や相談窓口など、扱う場所が別にあるためである。

1on1が憂うつで、前日から気が重いときは?

この手順は、話す材料を1つ選ぶためのものであって、気持ちや体調の状態を判定するものではない。この記事もサービスも、診断・治療・カウンセリングを目的としていない。気が重い状態が続く場合は、社内外の相談窓口や医療機関、話せる相手を頼ってほしい。 準備の量を増やしても、その重さは軽くならないことが多い。