読んだ本の記録をAIと振り返る。要約ではなく引っかかりを残す

2026-09-20 | blog

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読書の振り返りとは、本の内容を思い出せるようにすることではない。その本を読んでいるあいだに自分の側で起きた反応を、1つだけ文字に残すことである。 内容の要約はすでに本に書かれているので、もう一度作っても手元の情報は増えない。増えるのは、自分がどこで手を止めたかという記録のほうである。

この記事では、線を引いた箇所から「自分が反対できる箇所」だけを残し、AIには問いを1つ作らせる手順を書く。1冊あたり25分で、出力物は疑問文1行と、日付つきの自分の経験1件である。AIに問いを返させること自体の一般的なやり方はAIとの壁打ちのやり方にある。この記事が扱うのは、他人が書いた文章を入力にする場合の、材料の作り方という一点である。

ハイライトは溜まっているのに、読んだ本の話ができない

読み終えた本が今年で12冊ある。電子書籍のハイライトも残っている。それなのに、人に「あの本どうだった?」と聞かれて、出てくるのは「よかった」と著者の名前だけ、ということがある。

AIに要約を頼んだこともある。整った要約が返ってくる。読むと、たしかにそう書いてあったと思う。ただ、その要約を1週間後に見ても、自分が読んだときの感じは戻ってこない。返ってきたのは本の内容であって、読んでいたときの自分ではないからである。

ハイライトを見返しても同じことが起きる。線が引いてあるのは著者の文である。その横に、自分が何を思って線を引いたかは1行も書かれていない。

残らないのは記憶力ではなく、記録が著者の言葉だけでできているから

線を引く動作は速い。指をなぞるだけで済む。一方、なぜ線を引いたかを書く動作は遅い。だから読書中は前者だけが実行され、記録はすべて著者の言葉で埋まる。

その状態でAIに渡すと、返ってくるのも著者の言葉の要約になる。入力が著者の言葉しかないので、当然である。要約が役に立たないのではなく、要約しか作れない材料を渡している。

ここで必要なのは、著者の文に対する自分の反応を、あとから機械的に取り出すことである。読書中には無理でも、読み終えた直後なら取り出せる。取り出す方法として使いやすいのが、「この箇所に反対できるか」という一点だけを見る方法である。賛成しかできない箇所は、自分の考えが動いていない箇所である。動いていない箇所を何行残しても、記録は著者の言葉のままになる。

手順(1冊25分)

1. 線を引いた箇所から3か所だけ選ぶ(5分)

多く引いた本でも3か所に絞る。選ぶ基準は「重要そうだから」ではなく、読んでいるときに一度、目が戻った箇所である。

書き写すのは全文ではなく、ページ番号と、内容が分かる程度の短い言葉でよい。長く書き写すほど時間がかかり、しかも他人の文章の分量が増えるだけである。

p.83 締切を先に決める話
p.117 相談相手を1人に絞る話
p.152 記録を毎日つけない話

2. 各箇所に、反対できるかを○×で付ける(5分)

1か所ずつ、「これに反対する言い分を、自分は1つ以上持っているか」を考える。持っていれば○、持っていなければ×を付ける。

×が付いた箇所は、ここで捨てる。納得しただけの箇所であり、自分の材料にはならない。3か所すべてが×になる本もある。その場合は手順1に戻り、別の3か所を選ぶ。2回やって全部×なら、その本は今回は振り返らなくてよい。

小説や随筆で「反対」が成立しにくいときは、判定を「自分なら違う動きをしたか」に置き換える。違う動きが1つでも浮かべば○である。

3. ○の箇所に、自分の経験を日付つきで1件添える(10分)

ここがこの手順でいちばん時間のかかるところで、省略できない部分でもある。○が付いた箇所ごとに、実際にあった出来事を1件、日付を添えて1〜2行書く。

p.117 相談相手を1人に絞る話 ○
6/20 の案件で3人に相談して、3通りの助言が来て2日止まった

日付が思い出せない場合は「6月ごろ」でよいが、「よくある」「いつも」は使わない。回数が1回なのか複数回なのかが、あとで分からなくなるためである。

4. AIには2つだけ発注する(3分)

ここまでで作った○の箇所と経験を貼り、次の2つだけを頼む。要約と感想と評価は、明示的に断っておく。

以下は本の一部と、私の経験です。要約・感想・評価は書かないでください。
(1) これらに共通して当てはまる問いを1つだけ、疑問文で書いてください。
(2) その問いに対する反例になりそうな私の経験を探すための質問を、3つ書いてください。

返ってきた問いが自分の言葉として不自然なら、その場で書き直してよい。AIが作るのはたたき台で、採否は自分が決める。

5. 問い1行を、読書メモの先頭に日付つきで置く(2分)

本ごとのメモではなく、問いだけを並べた1つのファイルを作り、その先頭に足していく。書式は日付、問い、本のタイトルの3点だけにする。

9/17 「相談の数を増やすと、決まるのが遅くなる場面はどれか」(『◯◯』)

本文の抜き書きはここに入れない。入れると、次に開いたときに他人の文章を読み直すことになり、問いが埋もれる。

6. 月1回、問いだけを3分読む(月3分)

月末に、そのファイルの問いだけを上から読む。似た問いが3つ以上並んでいたら、その月の関心はそこにあったということになる。読むだけでよく、まとめる必要はない。

実際にやると、ここでつまずく

手順2で、全部に○を付けてしまう。 反対できる気がしてくるためである。判定を速くするには「反対する言い分を、口に出して10秒で言えるか」に変える。言えなければ×でよい。

手順3で、経験ではなく感想を書いてしまう。 「たしかにそうだと思った」は感想で、日付が付かない。日付が付かない行はすべて感想だと考えて、書き直すほうが早い。

手順4で、つい要約も頼んでしまう。 要約が返ると読んでしまい、そのあとに自分で問いを直す気力がなくなる。断り書きを定型文として保存しておくと、毎回書かずに済む。

厚い本ほど3か所に選べない。 このときは章を1つだけ選び、その章の中から3か所にする。本全体を1回で扱おうとすると、手順1で止まる。

この手順の続けにくい点

読み終えた直後にしかできない。読み終えて数日経つと、目が戻った箇所を思い出せなくなるので、手順1が成立しなくなる。読む時間と、25分の枠を別に確保する必要がある。

問いのファイルも、溜まると扱いに困る。20行を超えたあたりから、どの問いがどの本のものだったか分からなくなる。本のタイトルを書いていても、問いだけを読むと文脈は戻らない。この手順は問いを蓄積する手順であって、蓄積した問いを整理する手順ではない。

そして、問いを1行残しても、それが自分の行動に関係するかどうかは、日々の記録と突き合わせないと分からない。読書のメモは読書のメモとして独立してしまいやすく、週の振り返りとつながらないまま置かれることが多い。

LifeOSはこの部分をどう扱うか

LifeOSは、週1回の振り返りをAIとの対話で進めるサービスである。読書専用の機能があるわけではないが、問いが1か所に積み上がり、次の週の対話がその前提から始まる点が、この記事の手順の弱いところと重なる。AIが返すのは断定ではなく仮説で、採るか採らないかは項目ごとに本人が決める。本人が確認したものだけが、次回以降の前提として残る。

本の要約を作ってくれるサービスを探している場合には向かない。読んだ内容の管理も扱わない。読書で出てきた問いを、自分の週の出来事の側と突き合わせたい場合に使い道があることがある。登録なしで3分ほど試せる。

LifeOSを試す

AIを振り返りに使うときの全体像はAIジャーナリングとはに、日々の記録側を軽くする手順はChatGPTで日記を書く手順にまとめてある。

FAQ

AIに本を要約してもらうのは無駄ですか?

無駄ではない。読む前に全体像を知りたいときや、読むかどうかを決めたいときには役に立つ。この記事が扱っているのは読み終えたあとの工程で、そこでは要約が「自分の反応」の代わりにならない、という話である。目的が違うので、両方使ってよい。

読書メモのアプリを新しく入れたほうがよいですか?

この手順で作るのは、問いを1行ずつ足していくファイル1つだけなので、いま使っているメモで足りることが多い。新しいアプリを入れると、手順6の月3分より先に、アプリを覚える時間が必要になる。追加するとしたら、手順1で線を引く場所(電子書籍のハイライトなど)を1つに決めるほうが効く。

本を読んで気持ちが重くなるときも、この手順をやったほうがよいですか?

やらなくてよい。この手順は、読んだ内容に対して自分の言い分を出すためのもので、気持ちの整理を目的にしていない。なお、この記事もLifeOSも、心身の状態を診断・治療・カウンセリングするものではない。本の内容が自分の状況と重なってつらくなる状態が続く場合は、手順を続けるより先に、話せる相手や医療機関・公的な相談窓口を頼るほうが適していることがある。