ジャーナリングとは、頭の中にあることを、うまく書こうとせずにそのまま紙や画面へ出す記録法のことである。 日記が「その日に何があったか」を残すのに対し、ジャーナリングは考えや感じたことを外に出すこと自体が目的になっている。だから正解の書式がなく、初めての人ほど「何を書けばいいのか」で止まりやすい。
この記事で扱うのは、自分に合う形を決める前の、最初の14日だけの簡略版である。道具は1つ、問いは1つ、1回3分、週2回だけ。14日目に読み返して形を決め直すところまでを書く。この簡略版は、続けるためではなく、自分がどの形なら書けるかを14日で確かめるためのものである。
買ったノートの1ページ目で、30分止まる
ジャーナリングが良いらしいと聞いて、ノートを買う。夜、机に向かって開く。
1ページ目に日付を書く。その下が白い。「今日の気づき」と書いてみて、消す。何かを書かなければいけない気がするのに、思いつくのは「疲れた」だけで、それを1ページ使って書く気にはならない。30分粘って半ページ書き、翌日は開かず、3日目に存在を忘れる。
1週間後にノートを見つけて、1ページ目だけ埋まっているのを見て、向いていなかったと結論する。
止まるのは、「形を決める」と「書く」を同時にやっているから
初回に決めなければいけないことが、実は多い。紙かアプリか、朝か夜か、何分書くか、何を書くか、毎日か、見返すか。この6つを全部その場で決めながら、同時に中身も書こうとしているのが、1ページ目で止まる理由のことがある。
形を決めるには材料が要る。自分が朝と夜のどちらで書けるかは、両方やってみないと分からない。ところが、材料を集めるには書く必要があり、書くには形が要る。ここで循環している。
抜け方は1つで、最初の14日は形を決めないことである。仮の形を外から与えて、その通りにだけやる。14日分の実感が材料になるので、そこで初めて自分の形を決める。だから最初の14日は、「続ける練習」ではなく試用期間として扱う。
この記事の簡略版は、意図的に次の4点を固定している。道具は1つ/問いは1つ/1回3分/週2回だけである。
手順(準備5分+1回3分×4回・14日間)
1. 道具を1つに決める(3分)
紙のノートでもスマートフォンのメモアプリでもよい。選ぶ基準は「今すでに毎日開いているか」である。すでに開いているものを使う。新しく買ったノートや、新しく入れたアプリは、開く習慣がない分だけ不利になる。
決めたら、書く場所を1つに固定する。ファイルを分けない。ページを分けない。14日ぶんを1か所に縦に足していく。
2. 問いを1つだけ決める(2分)
最初の14日は、問いを1つに固定する。おすすめは次の1問である。
今日、いちばん時間を取られたのは何か。
感情を聞かない問いから始める。感情を聞く問い(今日どう感じたか)は、書ける日と書けない日の差が大きく、試用期間の材料としては安定しない。時間は毎日必ず使っているので、書けない日がほぼない。
3. 曜日と時刻を、既存の行動に紐づけて決める(1分未満)
週2回だけにする。曜日を2つ決め、それぞれ「何かをした直後」に置く。夕食の片付けが終わった直後、風呂から出た直後、通勤電車に乗った直後。時刻ではなく直後で決めると、思い出す手間が消える。
4回ぶん(2週×2回)をカレンダーに入れて準備は終わりである。
4. 1回3分、タイマーを使って書く(1回3分×4回)
タイマーを3分にセットして、問いに答える形で書き始める。ルールは3つだけ。
- 消さない。 書き直したくなったら、上の行を残したまま下に書く
- 読み返さない。 前回のぶんは14日目まで開かない
- 3分で止める。 途中の文でも止める
3分で止めるのは、書きたい状態で終わるためである。書き切ってしまうと、次の回に取りかかるまでの重さが増えることがある。
材料が浮かばない日は、その日のカレンダーとメッセージの送信履歴を10秒だけ見る。そこから1行拾えば3分は埋まる(材料の拾い方をもう少し細かくした手順は書くことが思いつかない日の、材料の拾い方にある)。
5. 14日目に1回だけ読み返して、形を決め直す(15分)
4回ぶんを続けて読む。見るのは3点だけである。
- 書けた回数(4回中何回か。2回以上なら形は合っている)
- 書けなかった回の共通点(曜日か、時刻か、疲れ方か)
- 自分で読んで、1つでも拾えるものがあったか(翌週やめたいこと、増やしたいこと)
この3点をもとに、次の形を決める。頻度を週2回のまま続ける、問いを別のものに変える、時刻を移す、のどれかである。いきなり毎日に増やさない。増やすのは、週2回が4回続けて書けた後でよい。
実際にやると、ここでつまずく
初日に毎日やりたくなる。 最初の数日はやる気があるので、週2回という上限が物足りなく感じる。ここで毎日に変えると、4日目あたりで「昨日と同じことを書いている」状態になり、書くこと自体がつまらなくなる。週2回は上限であって、目標ではないと決めておくと戻りやすい。
3分では足りない気がして延長する。 延長して10分書けた日があると、次の回に「10分ぶん書かなければ」という前提ができてしまう。試用期間のあいだは、書けた日も3分で止める。
道具選びで数日使う。 アプリを比較し始めると、それだけで1週間が過ぎる。手順1の基準(すでに毎日開いているもの)で機械的に決めて、14日目に不満があれば変える。
14日目より前に読み返す。 途中で読み返すと、次の回から「読まれる文章」を書き始めてしまい、試用の材料としては使いにくくなる。読み返しは14日目の1回に寄せる。
1回飛ばした時点でやめる。 4回中1回飛ばしても、試用としては成立する。飛ばした回は手順5の「書けなかった回の共通点」の材料になるので、飛ばしたこと自体が結果の一部である。
この手順の限界と、LifeOSがそこをどう扱うか
簡略版でいちばん抜けやすいのは、14日目の読み返しである。書く4回は3分で終わるが、読み返しの15分は予定に入っていないと来ない。そして読み返さないと、形が決まらないまま3週目に入り、なんとなく回数が減って終わる。
もう1つの限界は、書いたものが増えるほど、読み返す単位が決まらなくなることである。14日ぶんなら続けて読めるが、2か月ぶんを前から読むのは現実的ではない。どこを読むかを毎回決めなければならなくなった時点で、読み返しは止まりやすい。
つまり、この手順を14日より先へ伸ばすときに必要なのは、書く側の工夫ではなく、読み返す機会が自動で来る形である。週1回、決まった単位で見直す枠を外側に持っておくと、書いたものが置きっぱなしにならない。
LifeOSは、週1回の対話で直近の記録を扱い、出てきた言葉を時系列で残す形にしている。書く量を増やすものではなく、書いたものを読み返す回が毎週来る場所として使う設計である。診断や治療、カウンセリングを提供するものではない。
14日を終えて、続けたいのに間があいてしまう段階に入ったら、問い・置き場所・終わり方を固定する仕組み化の手順がジャーナリングが続かない理由を仕組みで解決する方法にある。振り返り全体の組み立て方は振り返りが続かないのは意志の問題ではないにまとめている。
FAQ
ジャーナリングは毎日やらないと意味がないですか?
頻度と得られるものの関係は人によって違うため、一律には言えない。この記事の簡略版が週2回から始めるのは、効果の大小ではなく、14日で「書けた回」と「書けなかった回」の両方を観察するためである。毎日にすると、書けなかった日が単なる失敗として扱われ、条件の違いが見えにくくなる。
何を書けばよいか分からないときは、テンプレートを使ったほうがよいですか?
最初の14日については、項目の多いテンプレートは避けるほうが進みやすい。埋める欄が増えるほど、3分では終わらなくなるためである。この記事で問いを1つに固定しているのは同じ理由による。テンプレートを使うなら、14日目に形を決め直すときに、欄が3つ以下のものから試すとよい。
手書きとアプリでは、どちらがよいですか?
最初の14日では、どちらかを決める必要はない。手順1の基準(すでに毎日開いているほう)で選び、14日目に不満があれば入れ替える。実際に14日やってから比べるほうが、始める前に比較するより早く決まる。
書いた内容を誰かに見られるのが不安です。
不安がある状態で始めると、書く内容が最初から「見られてもいい範囲」に寄り、試用の材料になりにくい。先に置き場所のほうを決めておくとよい。紙なら持ち出さない場所、アプリなら端末側のロックがかかる場所に固定する。何を書かないかを先に決める考え方は、この記事の範囲を超えるため、別途扱っている。
