AIを乗り換える前に確かめる3点とは、出力の良し悪しではなく、自分が入力側でやっていること――渡した材料の量、投げた質問の数、返ってきた文をその後どう扱ったか――を数えることである。 この3点が乗り換え先でも同じなら、変わるのは文体だけになる可能性が高い。この記事は、乗り換えるかどうかを30分で判定する手順を扱う。判定した結果、乗り換えたほうがよい場合の条件も最後に置く。
どのAIが優れているかを順位づけする記事ではない。サービスごとの機能や料金は更新が早いため、ここでは扱わない。
「このAIは自分に合っていないのかもしれない」と思い始める
ChatGPTで自己分析を3回ほどやった。返ってくる文章は読めるし、外れてもいない。ただ、3回とも似たような結論に着地して、読み終えてもすることがない。
そこで「別のAIなら違う切り口を出すのではないか」と思う。名前を聞いたことのあるものをいくつか開いて、同じ質問を打ち込む。返ってきた文章は、文体は違うが、言っていることはだいたい同じだった。
ここで「AIでの自己分析はこんなものか」と結論づける人もいれば、さらに別のAIを探し続ける人もいる。どちらの場合も、試した回数のわりに手元に残るものが少ない、という状態になりやすい。
出力が似るのは、乗り換えても入力側が同じままだから
対話型AIは、渡された文字列の範囲で文を作る。モデルが違えば言い回しや構成は変わるが、渡す材料が同じなら、書ける内容の範囲も同じになる。「これまでの経歴を踏まえて私の強みを分析してください」という1文に、経歴の要約5行を添えて渡した場合、どのAIでもその5行に含まれる情報の組み替えが返る。
これは性能差が存在しないという意味ではない。長文の保持、日本語の自然さ、音声入力の使いやすさなどには実際に差がある。ただ、自己分析の手応えに効くのは、差が出るその部分よりも手前の工程であることが多い。手前の工程とは、材料を集める・質問を分ける・返ってきた文を処理する、の3つである。
乗り換えは、この3工程を一度も触らずに実行できてしまう。だから何度乗り換えても同じ場所に戻りやすい。
手順: 入力側の3点を数える(30分)
過去にやった自己分析の履歴を1回ぶん開く。紙かメモアプリを用意する。
1点目: 渡した材料は何行だったか(10分)
履歴をさかのぼり、自分が打った文だけを数える。AIの出力は数えない。
- 打った文の合計行数
- そのうち、日付・場所・数字・固有名詞が入っている行の数
2つ目がゼロなら、渡したのは要約だけである。要約だけを渡した場合、返ってくるのも要約になる。この状態でAIを変えても、要約の言い換えが変わるだけになりやすい。
目安として、具体の行が5行未満なら、乗り換えよりも先に材料を足すほうが変化が大きい。足し方はChatGPTの自己分析が当たらないと感じたら、足すべきは材料に手順がある。
2点目: 1回のやりとりで何を聞いたか(10分)
打った文のうち、疑問文がいくつ入っていたかを数える。
「私の強みと弱み、向いている仕事、今後伸ばすべき点を教えてください」は、1つの送信に3つの質問が入っている。3つ入った送信には、3つを浅く並べた答えが返りやすい。
数え終えたら、1回の送信に入っていた質問の最大数を書き留める。3つ以上が並んでいたなら、乗り換えではなく、1送信1質問に分けて同じAIでもう一度やるほうが先である。
3点目: 返ってきた文を、その後どうしたか(10分)
3つのうちどれに当たるかを選ぶ。
- A: 読んで閉じた(スクリーンショットを含む)
- B: どこかにコピーして保存した
- C: 保存したうえで、翌週以降に開いた
Aだった場合、出力の質を上げても手元には何も残らない。ここで乗り換えを検討しても、判定材料が作れない。Cまで届いている場合は、出力の差が結果に効きやすいので、乗り換えを検討する意味がある。
判定
3点のうち、2つ以上が「具体の行5行未満」「1送信3質問以上」「Aで終了」に当てはまるなら、いま使っているAIのままで手順側を直すほうが変化は大きい。当てはまるのが1つ以下なら、入力側は足りているので、乗り換えの検討に進んでよい。
それでも乗り換えたほうがよい場合
入力側が足りていても、次のような具体的な不足がある場合は、道具を変えるのが正しい。
- 長い文章を渡すと途中が抜け落ちる(扱える文量の不足)
- 音声で話したものを整形したいが、入力手段が合わない
- 過去の履歴をさかのぼる操作が自分の使い方に合わない
- 料金や利用規約の条件が自分の用途に合わない
いずれも「出力が浅い」という感覚ではなく、機能として不足している点を1つ名指しできる状態である。名指しできるなら、その1点を満たすかどうかだけで比べればよい。タイプ別の比べ方はAI振り返りアプリの選び方と比較の観点にまとめてある。
やってみると、ここでつまずく
1点目を数えるとき、多くの場合は履歴をさかのぼる作業そのもので止まる。会話が長いと、自分の発言だけを拾うのに思ったより時間がかかる。対策として、最新の1回だけを対象にするとよい。3回ぶん数えても結論はたいてい変わらない。
もう1つ、3点目で「Bで保存した」と答えたつもりが、保存先を開いてみると何も入っていないことがある。保存したつもりで、実際にはスクリーンショットだけが写真フォルダに溜まっている、という形である。判定では、実際に開いて中身を確認した結果で答えるほうがよい。
続けにくいのは、判定した後の3工程が毎回手作業だから
判定そのものは30分で終わる。難しいのはその後である。
材料を足す・質問を分ける・出力を保存して翌週開く、の3つは、いずれも毎回の手作業になる。とくに3つ目は、保存先を決めても、翌週にそこを開く理由がないと続かない。開かなければ、前回と同じ材料を渡すことになり、また同じ出力が返る。
乗り換えを繰り返してしまうのは、この3工程が重いことの裏返しであることが多い。道具を変える作業は1回で終わるが、手順を維持する作業は毎週発生する。
LifeOSがこの部分をどう扱うか
LifeOSは、AIとの対話で自分の価値観を言葉にし、週1回の振り返りでそれを更新していく日本語のサービスである。上の3工程を利用者が毎回組み立てるのではなく、サービス側の形式として固定している。
材料をどこから集めるか、どの順で何を聞くか、答えた内容をどこに残すかが決まっているため、利用者が用意するのはその週の答えだけになる。前回残した言葉は次の週の対話に引き継がれるので、「保存したが開かない」状態になりにくい。プロンプトの管理やAIの選定という作業自体が発生しない、という位置づけの道具である。
ただし、この記事の判定は今日そのまま実行できる。まず自分の入力側を数えてみて、手順の側に原因があると分かった場合に試すとよい。3分ほどの対話から試せる。
AIを振り返りに使うこと全般のできる・できないはAIジャーナリングとはにある。
よくある質問
結局、自己分析に向いているAIはどれですか?
この記事では順位づけをしない。理由は2つある。1つは、サービスの仕様が短期間で変わるため、書いた時点の比較がすぐ古くなること。もう1つは、上の3点で「入力側が足りていない」と判定される場合、どれを選んでも結果が変わりにくいことである。機能の不足を1つ名指しできる状態なら、その1点だけで比べるのが早い。
複数のAIに同じ質問をして、答えを比べるのは有効ですか?
材料と質問が同じなら、返る内容も近くなりやすいので、比べても差が読み取りにくい。比べるなら、同じAIに材料を変えて投げた結果を並べるほうが差が出る。複数回の出力を並べて読む手順は別の記事で扱っている。
3点を数えたら全部足りていました。乗り換えるべきですか?
足りている場合でも、不足している機能を1つ名指しできないなら、乗り換えて変わるのは文体である可能性が高い。名指しできるものがあれば、その1点だけを条件にして選べばよい。どちらでもない場合は、同じ環境であと2〜3回続けてから判断しても遅くない。
