AIは強みの候補語をいくらでも出せるが、その候補を採るか捨てるかを決める材料は持っていない。 採否を決められるのは、その場面にいた本人だけである。この記事では、AIに聞く前に採否の関門を3つ紙へ書いておき、返ってきた候補語を機械的に落としていく手順を書く。出力物は、場面と動作が付いた1〜3行である。所要は40分ほどで、使うのは紙1枚とAIが1つだけでよい。
AIを使わず、自分の週の記録から強みを取り出す手順は自分の強みの見つけ方。週の記録から拾う方法にある。この記事が扱うのは、AIに候補を出させる場合に、丸ごと受け取るか丸ごと捨てるかの二択にしないための採否作業である。
「課題解決力」と返ってきて、口に出すと嘘っぽい
職務経歴書の「強み」欄が空いたままになっている。自分で考えても手が止まるので、AIに「私の強みを分析して」と聞く。返ってくるのは「課題解決力」「傾聴力」「粘り強さ」といった語で、どれも間違ってはいない気がする。
そのまま欄に書き写す。後日、面談で口に出してみると、自分の声が嘘っぽく聞こえる。「たとえば?」と聞かれたところで詰まる。語としては合っているのに、その語を支える場面が出てこない。 こういうことがある。
逆に、全部が一般的すぎる気がして、丸ごと捨ててしまうこともある。捨てると欄はまた空になる。受け取るか捨てるかしかないので、何度やっても同じところへ戻る。
二択になるのは、採否の基準が後出しになっているから
AIの回答には、たいてい説明が付いている。「あなたは困難な状況でも粘り強く取り組む傾向があります」という文は、読めばもっともらしい。もっともらしい説明を読んでから採否を考えると、説明に合う基準を無意識に作ってしまう。 これは判断が甘いという話ではなく、順番の問題である。
だから、基準は聞く前に作る。基準が先にあれば、回答を読む作業は判断ではなく照合になり、10分ほどで終わる。照合で残った語には場面と動作が付いているので、口に出しても詰まらない。
関門は3つでよい。多くすると全部落ちるし、少ないと全部通る。
手順(40分・紙1枚)
1. AIに聞く前に、採否の関門を3つ紙へ書く(5分)
先に書く。これを飛ばすと手順3が成立しない。
関門1: 直近3か月に、その語が出た場面を日付つきで1つ挙げられるか
関門2: その場面で、自分が最初にした動作を1つ書けるか
関門3: その動作は、同じ場にいた他の人がやらなかったことか
関門3は他人との優劣を比べるものではない。「同じ会議にいた人がやらなかった」という、その場に限った事実を見るだけである。全社や業界と比べ始めると手が止まるので、範囲はその場面に限定する。
2. AIに候補語だけを12個出させる(10分)
渡す材料は2つに絞る。直近3か月で人から頼まれた仕事5件と、自分から手を挙げた仕事3件を、それぞれ1行ずつ書いて貼る。依頼文は次のようにする。
以下は私の直近3か月の仕事です。ここから読み取れる強みの候補を、評価や説明を付けずに語だけ12個挙げてください。順位も付けないでください。
説明を出させないのがこの手順の要である。 説明が付くと文章としての説得力が採否に混ざる。順位も要らない。順位が付くと上から順に通したくなる。
3. 12語を1列に書き、関門1→2→3の順に×をつける(20分)
紙に12語を縦に並べ、関門1から順に見る。途中で落ちた語は、その先の関門を見ない。
関門1でだいたい半分が落ちる。日付つきの場面が出てこない語は、いまの自分の材料では支えられない語である。関門2でさらに落ちる。場面はあるのに最初の動作が書けないのは、その場面を結果でしか覚えていないときで、これもここで落ちる。関門3を通るのはふつう1〜3語になる。
4. 通った語を、動作の1行に書き直す(5分)
通った語をそのまま使わず、関門2で書いた動作を添えて1行にする。
×「粘り強さ」
○「7/14、仕様が決まらない打合せで、最初に論点を3つに絞って板書した」
語のままだと面談で詰まるが、この形なら詰まらない。職務経歴書に書くときも、語だけの欄より短い事実の行のほうが読み手に伝わりやすい。
5. 惜しい語を1つだけ「保留」に置く(1分)
関門1か2で落ちた語のうち、自分の感覚として惜しいものを1語だけ別枠に書く。1語だけにする。 来月、新しい3か月分の材料でもう一度同じ関門に通す。2回連続で落ちたら消す。
実際にやると、ここでつまずく
関門を後から書きたくなる。 手順1は退屈なので、先にAIに聞いてから関門を作りたくなる。筆者が最初にやったときは実際にその順でやってしまい、出てきた「調整力」に合う関門を書いていた。回答を見た後に作った関門は、その回答をほぼ全部通してしまう。順番だけは守る価値がある。
説明付きで出てきてしまう。 「説明不要」と書いても説明が付いてくることがある。そのときは読まずに語だけを書き写す。読んでから落とすのは難しいので、視線を語の列だけに限る。
関門3で手が止まる。 「他の人がやらなかったこと」を考え始めると、比較の話になって進まなくなる。その会議・その日のその場面に限って、実際に他の人がやらなかった動作かどうかだけを見る。思い出せないなら×でよい。
この手順の続けにくい点と、LifeOSがそれをどう扱うか
続けにくいのは手順2の材料集めである。「直近3か月で頼まれた仕事5件」は、記憶からは出てこない。カレンダーとメールとチャットを遡ることになり、ここで30分以上かかると、次の月はやらなくなる。
保留語の置き場所も問題になる。1語だけ書いた紙は、翌月には見つからない。見つからないと、また12語をゼロから出させることになり、前回落とした語がまた並ぶ。採否の結果が残らないので、毎回同じ判断をやり直している状態になる。
LifeOSは、週1回の振り返りをAIとの対話で進めるサービスで、答えた内容が同じ場所に積み上がる。AIが返すのは断定ではなく仮説で、採るか採らないかは項目ごとに本人が決め、本人が確認したものだけが次回以降の前提として残る。 週ごとの記録がそのまま3か月分の材料になるので、この記事でいえば手順2の遡り作業と、手順5の保留語の置き場所の両方が軽くなる。強みを判定して決めてくれるサービスを探している場合には合わないが、候補を自分で採否したい人には向くことがある。登録なしで3分ほど試せる。
AIを振り返りに使うときの全体像はAIジャーナリングとはに、AIに考えを引き出させる問いの投げ方はAIとの壁打ちのやり方にまとめてある。
FAQ
AIに候補を出させるのは、自分で考えるのと何が違いますか?
違うのは、出てくる語の範囲である。自分で考えると、過去に人から言われた語や職務経歴書で見慣れた語に寄りやすい。AIは材料から機械的に語を並べるので、自分では選ばない語が混ざる。ただし並べるところまでが役割で、どれが自分のものかを決める材料はAI側にない。この記事が関門を先に作るのはそのためである。
3つの関門を全部通る語が0だったら、どうすればいいですか?
0でもおかしくない。多いのは関門1で全部落ちるケースで、これは強みがないのではなく、直近3か月の材料が手元に出ていないという意味である。その場合は、1週間ぶんでよいので日付と行動を並べてから手順2をやり直すほうが早い。語を増やしても関門は通らない。
出てきた候補を読んで、自分には何もないように感じたときは?
そう感じることはある。この手順は、語の数を減らすことを前提に作ってあるので、12語が1語になるのは想定どおりの動きで、残った数が本人の価値を表すものではない。なお、この記事もLifeOSも、心身の状態や適性を診断・治療・カウンセリングするものではない。気分の重さが続いて生活に差し支えがあると感じる場合は、強みを言葉にする作業より先に、話せる相手や医療機関・公的な相談窓口を頼るほうが適していることがある。
