職務経歴書は、自分の判断の履歴ではなく他人に説明するための要約である。 これをAIへ渡すと、要約から読み取れる範囲の一般的な人物像が返ってくる。社会人がAIで自己分析をするときに材料として向いているのは、まだ要約されていない直近の判断である。この記事では、渡す材料を職務経歴から「直近2週間に自分が決めた10件」へ差し替える手順を扱う。
職務経歴書を貼ったのに、誰にでも当てはまる答えが返ってくる
社会人になってから自己分析をしようと思い、手元にある職務経歴書をコピーしてAIの入力欄に貼る。「これを読んで私の強みと価値観を分析してください」と書いて送る。
返ってくるのは、課題解決力がある、チームの調整に強い、成長意欲が高い、といった文章である。読んで違和感はないが、同じ職種の同僚に見せても通りそうな内容でもある。もう一度「もっと具体的に」と頼むと、同じ内容が長くなって返ってくる。ここで自己分析そのものが自分に向いていないのだと結論づけてしまうこともある。
一般論が返るのは、渡した材料が最初から一般化されているからである
職務経歴書は、採用担当者が短時間で読めるように書かれている。だから固有の迷いや、選ばなかった選択肢、判断に使った基準は最初から削られている。「新規サービスの立ち上げに参画し、3か月で〜を達成」という1行のなかに、その3か月で何十回か行った判断は残っていない。
ここで起きているのは推論の失敗ではなく、すでに一般化された文章から個別の判断を復元させようとしているという形式の問題である。AIは入力に無い情報を作らないか、作るとすれば統計的にありそうな内容で埋める。後者になると、誰にでも当てはまる人物像になる。
差し替える材料は、要約される前の判断である。社会人の場合、これは実績ではなく日々の細かい決定として残っている。何を先にやると決めたか、何を断ったか、どちらの案を選んだか。これらは職務経歴書には1行も載らないが、判断の傾向はここにしか出ていない。
手順: 直近2週間の「自分が決めた10件」を材料にする(45分)
用意するのは、この2週間のカレンダー、メールやチャットの送信履歴、紙1枚とAIの入力欄である。職務経歴書は今回は使わない。
1. 直近2週間から、自分が決めた事柄を10件書き出す(20分)
カレンダーと送信履歴を2週間ぶんさかのぼり、次の条件に合う事柄を探す。
・自分が最終的に決めた(上から降りてきた指示をそのまま実行した件は除く)
・別の選択肢がありえた
・結果の良し悪しは問わない
1件1行で書く。書式は「〈場面〉で〈やったこと〉を選び、〈やらなかったこと〉を後回しにした」にそろえる。
例)火曜の午前に、資料の作り直しよりも先に関係者への確認を選び、資料は木曜へ回した
大きな決定でなくてよい。会議を30分に短縮した、返信を翌日にした、自分でやらずに人に頼んだ、といった粒度で足りる。10件そろわない場合は7件で進める。
2. 各行に、選んだ理由を書かずに「そのとき優先したもの」だけ足す(10分)
各行の末尾に、10文字以内で1語だけ足す。理由の説明ではなく、優先したものの名前だけを書く。
例)……資料は木曜へ回した / 手戻りの少なさ
例)……返信を翌日にした / まとまった時間
ここで長い理由を書くと、書いた時点で自分の解釈が入り、手順3でその解釈が補強されるだけになる。1語にとどめるのが要点である。
3. AIへ渡すのは10行だけにする(5分)
入力欄に手順1・2でできた10行を貼り、続けて次を送る。職務経歴や所属、年数は書かない。
上の10行は、私が直近2週間に自分で決めたことと、そのとき優先したものです。
次の2つだけを出してください。
(1) 10行のうち3件以上で共通している優先の仕方を、2つまで挙げる
(2) 1件だけ他と違う優先の仕方をしている行があれば、その行番号を挙げる
10行に書かれていないこと(性格・職種・適性)は推測しないでください。
所属や年数を書かないのは、書くとその属性の一般像が混ざるためである。同じ10行でも「30代の営業職です」を足すと、出力が営業職の一般論へ寄ることがある。
4. (2)で挙がった行を、自分だけで読む(5分)
AIが挙げた「他と違う1件」は、解説させない。その行を自分で読み、次の1行だけ紙に書く。
あの場面では、ほかと違って ___ を優先していた
書けない場合は空欄のまま残す。ここを埋めるのはAIの仕事ではなく、当時の状況を知っている側の仕事である。
5. 2週間後にもう一度10行を作り、(1)だけを見比べる(5分)
2週間後に同じ手順で10行を作り、手順3の(1)だけを比べる。2回とも同じ優先の仕方が挙がっていれば、それは職務経歴書の1行より確かな材料になる。1回ずつで違うものが挙がった場合は、まだ判定できないとして保留する。
この手順の続けにくいところ
手順1が重い。2週間さかのぼると、決めた覚えがない日が半分くらいあり、10件に届かない。実際にやると「自分が決めた」に当てはまるかどうかで迷って手が止まる。迷ったら入れておき、手順3の出力で浮かなければ次回から外す、という扱いにしたほうが進む。
もう1つは、職務経歴を使わないことへの抵抗である。せっかくまとまった文章があるのに使わないのは無駄に見える。職務経歴書が役に立つ場面は他人へ説明するときで、判断の傾向を取り出す用途には情報が足りない、というだけの話である。転職活動の書類作成には引き続き使える。
3つ目は、優先したものの1語がどれも同じになることである。10行すべてに「早さ」と書いてしまう月もある。そのときは手順3の(1)が最初から分かっているので、AIへ渡す意味が薄い。かわりに(2)の「他と違う1件」だけを探す使い方に切り替えると、1件でも見つかれば材料になる。
LifeOSでは、決めたことが週1回のほうから出てくる
2週間ぶんの決定を後からさかのぼって探すのは手間がかかる。LifeOSは週1回の振り返りを前提にしていて、対話のなかでその週に自分が選んだことを言葉にする形になっているため、後から履歴を掘り返す工程を別に持たなくてよい。職務経歴のような要約ではなく、週ごとの判断が材料としてたまっていく。
自己分析のために材料を作る作業を別に立てるのが重い場合には、この形が近いことがある。効果を保証するものではなく、診断・治療・カウンセリングを提供するサービスでもない。無料で試す範囲ではカード情報の登録は不要である。
まずはLifeOSで3分ほど試して、週1回の側に判断がたまる形が合うか確かめてみてほしい。
AIを振り返りに使うこと全体はAIジャーナリングとはが全体像になる。AIを使わず社会人の自己分析をする手順は社会人の自己分析のやり方、AIへ渡すプロンプトの型はChatGPTで自己分析するプロンプトのほうが近い。
よくある質問
職務経歴書をAIに読ませるのは意味がないのですか
用途が違うだけである。職務経歴書の文章を整える、抜けている実績を洗い出す、求人票との対応を見る、といった作業ではそのまま材料になる。この記事で扱っているのは判断の傾向を取り出す用途で、その用途には要約前の材料が必要になる。
転職を考えている場合も同じ手順でいいですか
この手順は転職の有無を前提にしていない。出てくるのは直近2週間の優先の仕方までで、職種や求人の適否を判定するものではない。転職の判断には別の材料が必要になるため、この手順の出力をそのまま応募理由にはしないほうがよい。
在職中で決定権がほとんどない場合はどうすればいいですか
手順1の粒度を下げる。着手の順番、返信の早さ、誰に聞くかといった決定は、権限とは別に毎日発生している。「上から降りてきた指示をそのまま実行した件は除く」を厳密に適用すると10件そろわないことがあるが、その場合は7件で進めてよい。
