転職で何がしたいか分からないとき、「避けたい条件」から書き出す手順

2026-10-20 | blog

目次

「避けたい条件」とは、次の職場で起きてほしくないことを、求人票に書かれる粒度の言葉で書き直したもののことである。 「人間関係が嫌だ」は感想であり、条件ではない。「席の配置が毎月変わる」「定例会議が週5本ある」まで下げると、求人票や面談で確認できる形になる。

この記事で扱うのは、やりたいことを先に決めずに、避けたい条件を20個書き出して3つまで絞る手順である。紙1枚と求人票3件、合計50分。転職するかどうかの結論は出さない。条件の形で言葉にして、見比べられるところまでを扱う。

求人票を50件見たのに、1件も保存できていない

転職サイトを開いて、条件で絞り込んで、上から順に読む。読み終わるころには、どれも同じに見えている。保存した求人はゼロで、気づくと別のタブを見ている。

次の週にもう一度開くと、前の週に読んだかどうかも思い出せない。「何がしたいか分からないからだ」と考えて自己分析の記事を読み、やりたいことを書き出そうとするが、3行書いて止まる。やりたいことが出てこないので、求人票に戻る。

このとき手元に無いのは、やりたいことではなく判定の基準である。50件を見比べる作業は、基準が1つも文字になっていない状態では成立しない。

絞り込めないのは熱意の問題ではなく、「欲しい条件」が先に要求される形式になっているから

求人サイトの絞り込み欄は、ほとんどが「欲しい条件」を入力させる形になっている。職種、年収の下限、勤務地、働き方。欲しい側を先に決められる人には速い形式だが、欲しい側が決まっていない人には、入力する前に答えを要求する形式になる。

一方で、避けたい側は意外と具体的に出てくる。今の職場で起きていることや、過去に経験したことが材料になるためである。手元にある材料は避けたい側に偏っているのに、入力欄が欲しい側しか受け付けないので、進まない。

だから順番を入れ替える。避けたい条件を先に20個書き、そのうち3つを反転させて、欲しい条件の下書きにする。反転できる形まで言葉を下げる作業が、この手順の中身である。

やりたいこと側から整理したい場合の手順はやりたいことが分からないときの整理、転職を前提にしない自己分析の型は社会人の自己分析のやり方にまとめている。

手順: 避けたい条件を20個出して3つに絞る(紙1枚・50分)

用意するのは、A4の紙1枚とペン、それと気になった求人票3件である。求人票は応募先の候補ではなく、条件欄の語彙を借りるために使う。業種も年収も、自分と関係なくてよい。

手順1: 求人票3件の条件欄だけを読む(10分)

3件の求人票を開き、仕事内容の説明は飛ばして、条件欄と募集要項だけを読む。勤務時間、休日、配属、評価の時期、出張の頻度、試用期間。ここに並んでいる項目名が、このあと使う語彙になる。

読みながら、項目名を紙の左端に縦に写す。10個前後になる。内容は写さない。項目名だけである。

手順2: 項目名ごとに「起きてほしくないこと」を書く(15分)

写した項目名の右に、起きてほしくないことを1行で書く。「勤務時間」の右なら「終業の時刻が週によって2時間動く」。「評価」の右なら「評価の基準が期の途中で変わる」。

項目名が10個でも、1つの項目に2〜3行書けるものがある。合計20行を目安にする。20行出ないときは、手順1に戻って求人票を1件追加する。

書くときの制約は1つだけ。人名と部署名を書かないことである。 「あの上司が」と書いた行は、次の職場で確認できる条件にならない。「1対1の面談が年1回しかない」まで下げる。

手順3: 20行を3つの束にまとめる(10分)

20行を読み返して、似ているものに同じ印を付ける。印は3種類までにする。多くの場合、時間の読めなさ・決まり方の不透明さ・人との距離の近さ、といった方向に分かれるが、分かれ方は人によって違う。

束ごとに、その束を代表する1行を選ぶ。新しく書き直さず、20行の中から選ぶ。 書き直すと、また感想に戻ることがある。

手順4: 3行を反転して、欲しい条件の下書きにする(10分)

選んだ3行を、紙の下半分に反転して書く。反転のときの条件は、面談で質問できる文になっているかどうかである。

「終業の時刻が週によって2時間動く」の反転は、「残業が少ない」ではない。これは質問できない。「繁忙期と閑散期で終業時刻がどれくらい動くか」なら質問できる。「評価の基準が期の途中で変わる」の反転は「評価の基準はいつ決まって、いつ共有されるか」になる。

3行が質問文の形になったら、この回の作業は終わりである。やりたいことは書かない。

手順5: 1週間後に、3つの順番を決める(5分)

1週間おいてから紙を見て、3つに順番を付ける。全部満たす求人は少ないので、1つだけ譲れないものを決める。 残り2つは「できれば」に落とす。

順番が決まらない場合は、価値観の側から並べる手順が価値観の優先順位の決め方にある。避けたいこと全般を広く洗い出す手順はやりたくないことの書き出し方にまとめている。

実際にやると、ここでつまずく

いちばん多いのは、手順2で感想に戻ることである。 「風通しが悪い」「雑に扱われる」と書いた行は、書いた本人には意味が分かるが、1週間後に読むと何を指していたか分からない。手順4で反転しようとして、質問文にならないことで気づく。気づいたら手順2まで戻る必要があり、ここで作業が止まりやすい。

もう1つは、手順3で印が4つ以上になることである。 20行に対して印を4つ付けると、どの束も「代表する1行」が選べなくなる。3種類に収めるには、迷った行を印なしで残すことになるが、残した行を捨てたように感じて手が止まる。印なしの行は捨てたのではなく、次回の材料として紙に残っている、と決めておくと進みやすい。

3つ目は、紙が行方不明になることである。50分かけて書いた紙は1週間後に見返す前提で作っているため、手順5が飛ぶと3つの順番が決まらないまま求人サイトに戻ることになる。

この手順だけでは足りない点

この手順で出るのは、その1回に思い出せた範囲の避けたい条件である。繁忙期に書いた紙は時間の条件に偏り、異動の直後に書いた紙は決まり方の条件に偏ることがある。

だから、1回書いて終わりにすると偏りが残る。本来は何週間かおいて書き足し、毎回出てくる行だけを残したい。ところが、書き足すきっかけは自動では来ない。 迷いが薄れた週には紙を開かず、迷いが強い週には求人サイトを先に開くことが多い。

週に1回、同じ形式で見返す枠を作る方法は週次振り返りの完全ガイドに書いた。

LifeOSがこの部分をどう扱うか

LifeOSは、AIとの対話で自分の価値観を言葉にして、週1回の振り返りでそれを更新していくサービスである。

上の手順で落ちやすいのは、手順5の「1週間後に見返す」ところと、何週間かにわたって条件を書き足すところである。LifeOSでは週1回の振り返りが同じ形式で積み上がるため、その週に気になった条件を1行だけ残しておけば、次に見返すときに探し直す作業が要らない。同じ行が何回出てきたかも、記録を並べれば数えられる。

反転した3つの条件のうち、どれが譲れないのかを決める材料になるのは、結局「自分が何を優先したいか」である。LifeOSはそこを対話で言葉にして、週ごとに更新していく形をとる。転職するべきかどうかを判定したり、求人を選んだり、応募書類を作ったりはしない。扱えるのは、自分の記録と基準を並べるところまでである。まずは3分の体験から試せる: https://app.lifeos.jp/

優先したいことを先に言葉にしたい場合は自分の価値観の見つけ方にまとめている。

よくある質問

避けたい条件ばかり書くと、後ろ向きな転職になりませんか?

この手順で書くのは、応募先に伝える文ではなく、自分が見比べるための基準である。実際には、避けたい条件を3つに絞ってから欲しい条件に反転させたほうが、面談で質問する項目が具体的になったという進め方をしている人もいる。後ろ向きに見えることが気になる場合は、手順4で作った質問文のほうを手元の基準として使い、避けたい側の20行は紙の上段に残しておくとよい。

今の職場の不満をそのまま書いてよいですか?

条件の粒度まで下げれば書いてよい。下げる目安は、求人票や面談で確認できるかどうかである。「評価されない」は確認できないが、「評価の基準がいつ決まるか」は確認できる。人名・部署名が入った行だけは、手順2の制約どおり条件に書き換える。

1回やったあと、どれくらいの間隔で見直せばよいですか?

まず1週間後に手順5だけをやり、そのあとは月1回を目安にしている。毎週見直すと、その週の出来事で3つの順番が入れ替わり続けることがある。なお、仕事のことで体調や睡眠に影響が出ていると感じる場合は、この手順で扱える範囲を超えていることもあるため、職場の相談窓口や医療機関などの専門の窓口に相談することも検討してほしい。