人からの評価をAIで整理するとは、もらった言葉を評価語のまま読まず、「誰がいつどの動作について言ったか」の行へ直したうえで、自分の見方と突き合わせて一致・ズレ・初耳の3つに仕分ける作業である。 AIに任せるのは仕分けだけで、どれを受け取るかは本人が決める。
評価シートを開いたまま、いいことも悪いことも他人事に見える
人事評価のコメント欄、1on1のメモ、同僚から言われたひとこと。手元にはそれなりの量の言葉がある。開いてみると、「丁寧」「視野が広い」「もう少しスピードを」といった短い評価語が並んでいる。
読むと、褒め言葉のところは自分のことに思えず、指摘のところだけが妙に長く残る。翌週にはどちらも忘れている。半年後にまた同じコメントをもらって、そういえば前も言われたなと思う。こうなっている人もいる。
扱いにくいのは、評価語が「結論だけ」の形で届くから
「丁寧」も「視野が広い」も、相手の中では何かの場面を見て出てきた結論である。ところが届く時点では場面が落ちていて、結論だけが残っている。結論だけを渡されると、受け取る側にできるのは同意するか否定するかの二択になる。二択になれば、気分のいいほうは流し、痛いほうだけが刺さる。
ここでAIに「この評価をまとめて」と貼ると、評価語をさらに要約した文が返る。結論を結論のまま畳むので、二択の構造は変わらない。
先にやるのは要約ではなく、結論を動作の行へ戻すことである。 動作の行に戻せば、同意するかどうかではなく、自分の記録と照らせるものになる。強みの候補語を自分で絞る作業については自分の強みの見つけ方で扱っているが、ここで扱うのはすでに他人から渡されている言葉のほうである。
手順: もらった言葉を8行に直し、仕分けだけAIにさせる(45分・1回)
1. 出どころつきで、もらった言葉を8つ書き写す(10分)
評価シート、1on1のメモ、チャットの褒め言葉、異動や引き継ぎのときの言葉。手元から8つ選んで、1行1件で書く。書き方は3点を入れる。
誰が・いつ・何と言ったか(言葉は変えずにそのまま)
例:
上司 / 6月の評価面談 / 「資料が丁寧」
同僚A / 4月のプロジェクト後 / 「先に全体を見てくれる」
他部署B / 先週の打合せ後 / 「決めるのが早い」
言い換えない。 「丁寧=几帳面」のように自分の言葉へ直すと、この後で相手の見た場面へたどり着けなくなる。8つに足りなければ4つでも始められる。多すぎる場合は、直近1年に絞る。
2. 各行に「相手が見たであろう場面」を1つ書き足す(15分)
1行ずつ、その言葉が出た前後で相手が居合わせた場面を、思い出せる範囲で1つだけ書く。思い出せない行は「不明」と書いて残す。
上司 / 6月の評価面談 / 「資料が丁寧」 / 5月の稟議資料、差し戻しが0回だった
同僚A / 4月のプロジェクト後 / 「先に全体を見てくれる」 / 不明
ここで「不明」が半分を超えても問題はない。不明の行は、後で相手に聞く候補になるというだけである。
3. AIに見せる前に、自分の見方を1行ずつ書く(10分)
8行それぞれに、自分ならその動作をどう説明するかを1行書く。評価はせず、動作で書く。
「資料が丁寧」→ 自分の見方: 差し戻されるのが嫌で、提出前に2回読み返している
この工程を飛ばさない。 自分の見方を書く前にAIへ渡すと、返ってきた整理文を読んだ後で「まあそういうことかもしれない」と寄っていく。先に書いておくと、寄ったかどうかが自分で分かる。
4. AIには「仕分け」だけを頼む(5分)
8行(相手の言葉+場面+自分の見方)を1通に貼り、依頼はこう書く。
以下は他人からもらった評価と、同じ動作についての私自身の説明です。
各行を「一致」「ズレ」「初耳」の3つに分類し、ズレと判定した行については、
どの語が食い違っているかだけを指摘してください。
解釈・アドバイス・性格の推測は書かないでください。
「どう改善すべきか」を同時に聞かない。 聞くと、仕分けの結果より改善案のほうが長く返り、読む対象がそちらへ移る。改善の話は、ズレを1つ選んだ後でよい。
5. ズレの行を1つだけ選ぶ(3分)
ズレと分類された行のうち、同じ内容を2人以上から言われているものを優先して1つ選ぶ。2人以上が無ければ、自分の見方と一番離れている行を選ぶ。
複数を同時に扱わない。ズレは1つでも、後の観察が2週間ぶん要る。
6. 選んだ1件を、来週の予定へ結びつける(2分)
選んだズレについて、来週すでに入っている予定を1つ指定し、その場で自分の動作を1行残すと決める。
ズレ: 「決めるのが早い」/ 自分の見方: 迷っている時間が長い
確かめる場面: 9/29の定例(議題2つ)
残す1行: 各議題で、口に出すまでに何分かかったか
終わった直後に1行だけ書く。判定はせず、記録だけ残す。2回ぶん溜まってから読み返す。
実際にやると、ここでつまずく
手順1で、褒め言葉ばかり集めてしまう。 痛い指摘のほうは書き写す手が止まりやすい。8行のうち2行は指摘から取ると決めておくと機械的に進む。それでも書けない行は飛ばしてよく、無理に全部を並べる必要はない。
手順3で、自分の見方が「特にない」になる。 動作を思い出せないときは、その行を「不明」にして次へ行く。8行のうち3〜4行埋まれば、仕分けは機能する。
手順4で、AIが頼んでいない解釈を書いてくる。 依頼文に禁止事項を書いても混ざることがある。そのときは分類の表だけを読み、解釈の段落は読まずに飛ばす。読んでから取捨するより、表だけ抜き出して別のメモへ貼るほうが早い。
「初耳」の行が多くて落ち着かない。 初耳は、その相手の前でだけ出ている動作という可能性もあるし、相手の見間違いという可能性もある。この段階でどちらかに決めなくてよい。初耳は保留の箱に入れて、同じことを別の人からも言われたときに初めて扱う。
この手順の続けにくい点と、LifeOSがそこをどう扱うか
1回やると、ズレが1つ手元に残る。続けにくいのは手順6の1行を、2週間ぶん残し切るところである。予定の直後に書くと決めていても、次の予定が始まれば飛ぶ。1週目で途切れると、手順5で選んだズレが宙に浮き、次の評価面談でまた同じ言葉をもらうところへ戻る。
もうひとつは、評価をもらう間隔のほうである。人からの言葉は半年に1回まとめて届くのに、照らす側の記録は毎週の粒度でしか残らない。 手元に記録が無ければ、届いた言葉は結論のまま流れていく。AIに候補語を出させて採否を決める作業はAIに強みの候補を出させて、自分で採否を決める手順で扱っているが、そちらも照らす材料が手元にある前提になっている。
LifeOSは、対話を通じて自分の価値観を言葉にし、週1回の振り返りで更新していく日本語のサービスである。上の手順との関係でいうと、照らす側の記録を毎週の振り返りの中に置いておけるため、半年後に評価が届いたときに探し直さずに済む。一方で、AIが人からの評価を代わりに受け取って結論を出すサービスではない。どの言葉を採るかは項目ごとに本人が決めるし、手順そのものは紙とメモ帳でも実行できる。まず1回試して、2回目に記録を探すのが面倒になったときに置き場所を考えれば十分である。
AIを振り返りに使うときの全体像はAIジャーナリングとはにまとめてある。
よくある質問
評価が厳しくて、読み返すのがつらいときはどうすればいいですか
この手順は全部を読み直す作業ではない。手順1で8行を選ぶ時点で、扱える範囲だけを取り出してよい。扱いたくない行は書き写さずに残しておける。なお、これは気持ちの整理を目的とした手順ではなく、言葉を照らせる形に直すための作業である。気持ちのほうが重いときは、無理に材料として扱わず時間を空けるほうが進みやすいこともある。
AIに評価コメントをそのまま貼っても大丈夫ですか
相手の実名や、社内でしか共有していない情報が入っている場合は、貼る前に伏せるか削る。手順1で「上司」「同僚A」のように役割で書いているのはそのためである。評価の中身より、誰の発言かが特定できる部分を先に落とすと扱いやすい。
一致ばかりで、ズレが1つも出ないときは
自分の見方を書くときに、相手の言葉に引っ張られて似た表現になっている可能性がある。手順3を、相手の言葉を隠した状態で書き直してみると変わりやすい。それでも一致ばかりなら、材料の出どころが1人に偏っていることが多いので、別の立場の人からの言葉を2行足す。
