セルフコーチングとは、自分で問いを立て、間を置いてから自分で答える手順である。 気持ちを前向きにする作業ではなく、1人で考えると飛ばしてしまう工程(問いを書き出す、答える前に待つ)を、形式として外に出す作業にあたる。人のコーチが担う役割のうち、問いを出す部分を自分の手で再現する。
この記事で扱うのは、「現状→望む状態→障害→次の1歩」の4ステップを30分で回す手順である。質問の一覧ではなく、一覧を使う前の工程を扱う。
考えているつもりで、30分後に同じところに戻っている
転職するか迷っている。カフェに座ってノートを開く。「どうしたいんだろう」と書いて、しばらく考える。今の職場の不満が浮かぶ。別の会社のことを考える。でも今の会社にも悪くない面がある。そしてまた「どうしたいんだろう」に戻る。
30分たって、ノートには3行しか書かれていない。考えた量に対して、残ったものが少ない。翌週もう一度やると、同じ3行をまた書いている。
これは考える力の問題ではなく、問いと答えを同時にやっていることから起きやすい。問いを立てた瞬間に答えようとすると、最初に浮かんだ答えで思考が止まり、そこから先へ進まない。
1人だと、問いが1つしか立たない
人のコーチと話すと進むのは、相手が自分では立てない問いを出すからである。自分で考えるときは、気になっていることが1つあるとその周りだけを回る。「転職するか」という問いの周りを30分回っても、材料は増えない。
材料が増えるのは、問いの種類が変わったときである。「いつからそう思っているか」「それが解決したら、何が変わるか」「同じことを3年前にも考えたか」。こうした問いは、答えを探しているときには浮かばない。
だから、問いを書く時間と答える時間を分ける。分けるだけで、1人でも問いの数が増える。価値観を抽出する手順は自分の価値観の見つけ方にあり、本記事はその前段にあたる「問いの立て方」を扱う。
手順: 4ステップを30分で回す
1. 現状を、事実だけで10行書く(8分)
テーマを1つ決め(仕事、健康、人間関係のどれか1つ)、評価を含まない文で10行書く。「残業が多い」ではなく「先月の残業は32時間だった」。「上司と合わない」ではなく「週1回の面談で、提案が2回差し戻された」。
数字が分からない行は「だいたい週3回」でよい。重要なのは、形容詞と評価語を抜くことである。評価語が入ると、ステップ3で障害を探すときに、評価そのものが障害に見えてしまう。
2. 望む状態を、期限つきで3行書く(5分)
「3か月後に、〜になっている」の形で3行。手段を書かない。 「転職している」は手段で、「平日に2時間、自分の時間が取れている」が状態である。手段を先に書くと、ステップ3で検討できる選択肢がその手段だけになる。
3行書けないときは1行でよい。ただし1行の場合、その1行が本当に望む状態かを確かめるため、ステップ4のあとにもう一度戻る。
3. 問いだけを10個書く(10分・答えない)
ここが中心の工程である。ステップ1と2を見ながら、問いだけを10個書く。答えが浮かんでも書かない。浮かんだ答えは、次の問いの材料になるので、その場で消費しない。
問いが止まったときに使える出し方が3つある。
- 時間をずらす: 1年前は/3年後は/先月は
- 主語を変える: 同じ状況の同僚なら/10年後の自分なら
- 逆を聞く: 何が変わらなければ困るか/今のままでよい点は何か
10個に届かなくても、7個を超えたら次へ進んでよい。質問の例が必要な場合は自己理解を深める質問30から借りてもよいが、借りた問いは半分までにする。全部を借りると、自分の状況に合わない問いに答える時間が増える。
4. 間を空けてから、3つだけ答える(5分+翌日)
10個の問いを書いたら、その日は答えない。 翌日、問いのリストを読み、答えたいものを3つ選んで答える。選ぶ基準は「書きながら少し気が重くなるもの」でよい。
答えたら、最後に「来週やること」を1つだけ決める。1つに絞るのは、複数決めると翌週の振り返りでどれが効いたか分からなくなるためである。週1回のサイクルに乗せる形は週1回の振り返りのやり方にある。
実際にやると、ここでつまずく
ステップ1で、事実だけを書くのが難しい。「残業が多い」と書いてしまったら、横に数字を足す形で直せばよい。書き直すより追記するほうが速い。
ステップ3でいちばん多いのは、問いを書きながら答えてしまうことである。問いの下に1行空けて次の問いを書くと、答えを書く余白ができてしまうので、問いを詰めて書く(行間を空けない)と物理的に答えにくくなる。
ステップ4の「翌日まで待つ」も崩れやすい。その日のうちに答えたくなるのは、問いを書いた直後がいちばん気持ちが動いているからである。ただ、動いているときの答えは、翌日に読むと別の答えになることが多い。待てない場合でも、最低2時間は空けると差が出る。
もう1つは、4ステップを回したあとで「結論が出ていない」と感じることである。この手順の出力は結論ではなく、来週やること1つである。結論を求めて1回で終わらせようとすると、30分では足りず、途中で止まる。
この手順の続けにくい点と、LifeOSがそこをどう扱うか
続けにくいのは、問いを毎回自分で用意するところである。2回目までは出るが、3回目から同じ問いが並びはじめる。同じ問いには同じ答えが出るので、やる意味を感じにくくなる。
もう1つは、翌日まで待つ工程が飛ばされることである。1人でやる以上、待つかどうかを決めるのも自分なので、気持ちが動いている日ほど飛ばしやすい。そして飛ばした回は、前回と同じ答えになりやすい。
LifeOSは、週1回の振り返りを前提にしていて、前の週に出た言葉を踏まえた問いが出る。問いを自分で用意する部分と、前回との差分を見る部分がここに当たるため、「3回目から同じ問いになる」種類の行き詰まりは起きにくい。人のコーチの代わりをするものではなく、問いが出てくる間隔を週1回に固定する形になる。
30分の4ステップを1人で回すのが重い場合は、週1回ぶんから試す形もある。LifeOSを3分だけ試すと、問いが出てくる形がどういうものかは分かる。
よくある質問
セルフコーチングと自己分析は何が違いますか
扱う時間の向きが違う。自己分析は過去の経験を材料にして傾向を取り出す作業で、セルフコーチングはこれからの3か月について問いを立てる作業にあたる。材料が足りないと感じたときは自己分析の手順に戻る、という往復になることが多い。この記事の手順は後者だけを扱っている。
1回あたり30分も取れないときはどうしますか
ステップを日に分ける形でできる。1日目にステップ1と2(13分)、2日目にステップ3(10分)、3日目にステップ4(5分)。むしろステップ3と4のあいだに間が入るため、分けたほうが手順の意図には合う。1回で終わらせようとして着手しないより、分けて始めるほうが進む。
問いに答えが出ないときはどうすればよいですか
答えが出ない問いは、そのまま残して次回に回してよい。3回残った問いは、問いの粒度が大きすぎることが多いので、時間を区切って(「今月に限ると」)小さくすると答えが出ることがある。すべての問いに答える必要はなく、ステップ4で3つ選ぶのはそのためである。
